コロナ禍の影響は?エリアルポ~石川編~

アーバンホーム, クラスコ, のうか不動産, 志乃丘商事

企業|2021年08月13日

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 2015年3月に金沢駅へ新幹線開通して以降、ホテルや住宅の建築ラッシュが続いていた石川県だが、コロナ禍は県内の賃貸市場にどのような影響を与えたのか。金沢市、小松市、野々市市、白山市などで不動産業を展開する企業4社とオーナーに話を聞いた。

野々市、白山でアパート需要増加

 石川県の統計によると、2020年9月1日時点で県内の総人口は113万801人、総世帯数は47万1353世帯。05年には117万4026人と戦後初めて人口減となって以降、ゆるやかに減少している。人口44万9923人(7月1日時点)を抱える金沢市も例外ではない。

 一方で、近郊にある白山市(人口11万3291人・4万5238世帯:7月1日時点)野々市市(人口5万760人・2万4724世帯:7月1日時点)では、子育て支援策の充実などもあり、人口増が続いている。24年に新幹線開通を控えている小松市(人口10万7855人・4万4063世帯:7月1日時点)は、工場従事者のニーズを期待してアパートの建築ラッシュが続いたが、今では供給過剰の状態になっているという。

 東建コーポレーション(愛知県名古屋市)が運営する部屋探し情報サイト「ホームメイト」によると、石川県内の家賃相場は1R~1DKが金沢市3万2200円、白山市2万9000円、野々市市3万800円、小松市3万6800円だ。

 1LDK~2DKは、金沢市5万8700円、白山市4万5000円、野々市市4万4000円、小松市5万100円。2LDK~3DKは、金沢市6万4300円、白山市6万4000円、野々市市6万9000円、小松市5万1300円となっている。

 ここからは、県内の主要都市である金沢市、小松市、野々市市、白山市などで賃貸住宅の管理や仲介を展開する事業者の状況を紹介していく。

アーバンホーム、法人需要減少でも仲介全体は過去最高

 金沢市と近隣の野々市市、白山市、かほく市を中心に賃貸住宅1万8320戸を管理するアーバンホーム(石川県金沢市)の藤井佳代子社長は、「石川県は仲介専門の会社はほとんどなく、管理物件の数が仲介実績に直結する」と話す。

 コロナ下の20年には、法人需要が多くを占めるJR「金沢」駅周辺の賃貸マンションへの入居付けには苦戦したものの、全体では過去最高の仲介件数を記録した。例年は年間5000件程度だが、20年は約5200件だった。

 仲介全体の2~3割を占める法人は23.2%減、1割を占める学生は2.4%減となった。しかし、管理物件の多さを武器に一定の仲介件数を確保できたうえに、敷金・礼金を0円にしたり、フリーレント期間を付与したりしたパッケージプラン「初期費用キャンペーン」を用意したことが奏功し、一般ユーザーの仲介で法人と学生の減少分を補って余りある実績を上げた。

 同社の管理物件は、広さ40㎡ほどの1LDKがメーンで、平均賃料は5万4733円。築古物件が目立つ金沢市と異なり、子育て支援が充実し、20~30代前半の人口流入が続いている野々市市や白山市には新築の賃貸住宅が続々と建てられており、家賃相場も高めになっている。石川県では、30代後半になると郊外の戸建て住宅を購入する人が多いため、賃貸ユーザーのメーンは20代~30代前半になるという。

 「ニーズが高い野々市市や白山市の地主へのアパート建築提案を強化しつつ、最近増えている不動産業に力を入れ始めた法人への提案も積極的に行っていくことで、まずは管理戸数2万戸突破を目指す」と藤井社長は意気込みを語る。

アーバンホーム 藤井佳代子社長の写真

アーバンホーム
石川県金沢市
藤井佳代子社長(60)

 

 

クラスコ、オンライン対応が奏功 成長の原動力はリノベ

 金沢市を中心に賃貸住宅1万7134戸を管理し、賃貸仲介を年間5837件行っているクラスコ(石川県金沢市)は、リノベーション提案による管理物件のバリューアップとともに、オンライン対応を積極的に進めることで、コロナ禍の影響はあまり受けず、管理戸数と仲介件数を維持することに成功した。

 同社の管理部門のメーンターゲットは地主系オーナー。セミナーをリアルからオンラインに切り替えたが、1回あたり約60人の参加者を集め、約2割から個別相談を受け、そのうち7割から管理受託を獲得できたという。

 賃貸仲介部門では、オンライン接客を強化するとともに、敷金・礼金、初月家賃などを0円とする「ゼロ賃」を積極的に展開。加えて、プロモーション映像や物件写真の質の向上など、オンラインで確認できる物件情報が充実していたことが奏功して、反響来店数は19年の1.4倍に増加した。人材不足による取りこぼしはあったものの、コロナ禍前と同様の仲介件数を確保することができた。また、ブランディングを積極的に進めた結果、10年ごろは850万円ほどだった仲介営業スタッフ1人あたりの年間売り上げは、今では2000万円を超えるまでになっている。

 小村典弘社長は、「金沢は景気が良く、市場も魅力的で、まだまだ事業を成長させる余地がある。管理戸数2万戸は見えてきたので、次は3万戸を目指す。そのためにも、今後はデザインに加え、機能面でのバリューアップ提案を強化していく」と話す。

クラスコ 小村典弘社長の写真

クラスコ
石川県金沢市
小村典弘社長(46)

 

 

のうか不動産、野々市市に新規出店 空室対策強化で管理増

 金沢市を中心に1万200戸を管理する、のうか不動産(石川県金沢市)は、コロナ下でも管理戸数を1127戸増やした。学生向けの物件を主力とする同社では、金沢工業大学があるうえに人口増加が顕著な野々市市へ新店を出すとともに、コロナ下で空室を抱えるオーナーへの空室対策提案を積極的に行ったことが管理戸数増に功を奏した。

 賃貸仲介に関しては、コロナ下で大きな影響を受けた学生向けの物件の管理が主力ではあるものの同社の仲介実績の7割を占めるのは学生。さらに、その7割を約1万人が在籍する金沢大学の学生が占めている。そのほか、金沢市の店舗では北陸大学(学生数:約2400人)、金沢美術工芸大学(同:約600人)、金沢学院大学(同:約2900人)、野々市市の店舗では金沢工業大学(同:約6700人)、小松市の店舗では小松大学(同:約900人)などの学生の仲介を行っている。

 メーンターゲットの学生が通う金沢大学でオンライン授業が行われ、仲介実績は落ち込むかと思われたが、管理戸数の増加によって年間3062件とコロナ禍以前と同じ水準を維持することができた。大学への無料通学バスの運行や入居者専用カフェの運営、管理物件の9割に無料インターネットを導入済みである点など、大学生ユーザーのニーズにマッチした入居者サービスを提供していることが、退去を防ぎ、新たな入居者を獲得する要因となった。

 苗加充彦社長は、「他社との差別化のために今後も学生向けの物件を主軸に据える方針は変えず、スタッフに中国人3人、マレーシア人1人を加え、留学生への対応力を強化していく。さらに、新幹線開通による人口増と法人需要の増加が見込まれる小松市や野々市市でも営業を強化することでユーザーの多角化を図る」と話す。

のうか不動産 苗加充彦社長の写真

のうか不動産
石川県金沢市
苗加充彦社長(51)

 

 

志乃丘商事、供給過剰の小松市 住宅弱者の支援に注力

 小松市と加賀市を中心に賃貸住宅1600戸を管理し、賃貸仲介を年間659件行う志乃丘商事(石川県小松市)は、コロナ禍の影響で全体の2割を占めていた法人の賃貸仲介実績が半減した。管理戸数は横ばいだ。

 ただ、篠岡沁一郎社長は「コロナ禍よりも深刻なのは、小松市での賃貸住宅の過剰供給」と話す。小松市では、新幹線開通のための工事の従事者や工場や福祉関連の事業者で受け入れが増えた外国人の技能実習生をターゲットに、賃貸住宅の建築ラッシュがここ数年続いたという。

 具体的には5年ほど前から新幹線関連の特需が発生。同社でも管理戸数は100ほど増えるなどの恩恵を受けた。しかし、1年半ほど前から、新幹線関連の工事が激減するとともにコロナ禍が発生し、市内全域で賃貸住宅の入居率が落ちていったという。外国人実習生はコロナ禍が明ければ再び増える見込みはあるが、橋脚など多くの人員が必要な工事はすでに終了したため工事の従事者は減る一方だという。

 そうした状況に危機感を覚えた同社は、他社との差別化のために、20年2月から高齢者や障がい者、低所得者といった住宅弱者の居住支援に力を入れている。具体的には、石川県指定の「住宅確保要配慮者居住支援法人」として、賃貸住宅への円滑な入居にかかわる情報提供や相談、住まいの紹介、登録住宅の入居者への家賃債務保証、見守りなどの生活支援を行っている。

 「小松市は製造業の景気に左右される土地柄で、景気の波が大きい。10年ほど前にも入居率が急激に下がった時期があった。他社と違うことをやらないと中小企業は生き残れないので、住宅弱者の支援と並行して、既存商圏での深掘りにも力を入れていく」(篠岡社長)

志乃丘商事 篠岡沁一郎社長の写真

志乃丘商事
石川県小松市
篠岡沁一郎社長(58)

 

 

賃貸住宅の安定性実感

 金沢市に2棟40戸の賃貸住宅、商業ビルとオフィスビルを各1棟、小松市に商業ビル1棟を所有する河上伸之輔オーナー(石川県金沢市)は「コロナ禍で賃貸住宅の安定性の高さが改めて証明された」と話す。

 実際、賃貸住宅に関しては、所有物件で入居率9割をキープできている。河上オーナーが金沢市内に持つ賃貸住宅の1棟は、高級住宅街である泉本町に立地。1978年築の物件だが、室内はリノベーション済み。全24戸で、間取りは2LDKと3LDK。家賃は月額5万5000円となっている。もう1棟は学生が多く住む小立野に立地する、全6戸で月額家賃2万5000円のワンルーム物件。

 一方、金沢市の繁華街に所有する商業ビルでは、飲食関連の店舗の退去があり、月1200万円だった家賃収入は900万円まで減少した。

 河上オーナーは、「石川県内のアパートオーナーのレベルが年々上がり物件の質が高くなってきており、これまで以上にリノベーションなどの空室対策が重要になってきている。入居者にとってはいいことだが、オーナーは経営者としての手腕がより一層求められる時代になる」と話す。

河上伸之輔オーナーの写真

石川県金沢市
河上伸之輔オーナー(40)

 

(8月9日10面に掲載)

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