【賃貸仲介会社の経営分析~ポータルサイト編~】専門部署設立で反響13倍

アーバン企画開発,コスギ不動産

管理・仲介業|2022年11月03日

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 インターネットでの部屋探しが主流の時代、ポータルサイト(以下、ポータル)を活用した集客は、成約率に影響する重要な役割を果たす。全国の賃貸仲介会社に、ポータルの活用戦略や工夫を取材していくシリーズ企画の第1弾。今回は、神奈川県と熊本県の不動産会社2社に話を聞いた。

アーバン企画開発、上位表示枠確保を徹底

 年間賃貸仲介件数1790件のアーバン企画開発(神奈川県川崎市)では、集客業務の専門部署でポータル集客を強化する。同部署でポータルに掲載する物件の紹介文や写真などを充実させ、上位表示枠を確保することで反響件数を部署設立前と比較して13倍に高めている。

 同社の商圏は神奈川県川崎市と横浜市で、従業員数は151人。賃貸仲介部門に所属するのはパートを含めて33人だ。ウェブ集客業務は2014年から専任担当制をとり、部署名は「インターネット店」。同部署には9人が所属し、ポータルへの出稿作業は6人が担当している。

アーバン企画開発の会社情報まとめ

 ポータルは「SUUMO(スーモ)」、「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ)」、「at home(アットホーム)」の三つを利用しており、集客の8〜9割を占める。年間の出稿件数は1サイトにつき300件で、合計900件となる。出稿費用の合計は年2500万円だ。

 ポータルに出稿するうえで、同社が注力しているのは他社の掲載と比較して情報量に厚みを持たせることだ。

 掲載物件の紹介文は各ポータルの上限まで入力し、写真は必ず複数点掲載する。そうすることで、ポータル内で上位表示されるようになり、反響件数が高まるのだという。

 紹介文はSUUMOは130字、LIFULL HOME'Sは50字、at homeは100字が上限。

 掲載写真に関して、例えばSUUMOでは、挿入する写真の内容で点数が決められている。37点に到達することで上位表示されるようになるためそれを徹底する。

 物件全体の間取り図、建物外観、リビング、キッチン、浴室など、部屋の様子がわかるように写真をすべて掲載することでポータルから25点を獲得でき、これら以外の写真を追加するとさらに点数が上乗せされる。加えて動画やパノラマ写真の掲載枠を買い、載せることでそれぞれ5点ずつ加点される。

 出稿する全物件で上位表示の確保を徹底することで、繁忙期の物件への問い合わせ数は最高で1300件に増えた。同部署の発足前は同じ繁忙期でも100件未満だったという。1日あたりの出稿数は繁忙期で30件ほど。

アーバン企画開発の港北ニュータウン店外観

アーバン企画開発の港北ニュータウン店外観

 インターネット店の荒木悦子店長は「写真や紹介文以外にも住所や設備などの物件情報を入力する必要があり、1物件ずつ掲載内容にこだわると膨大な時間がかかる。だがRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を活用することで、手作業で入力する量を減らしている」と話す。

 同社では19年にRPAを導入。賃料や敷金、礼金などの募集条件や、住所、最寄り駅からの所要時間、設備などの物件情報の入力を自動化している。RPAの導入後、出稿にかかる時間は1人あたり1時間半程度に短縮された。

コスギ不動産、年間出稿1.5倍増の3775件

掲載件数と返信速度を重視

 年間賃貸仲介件数3200件のコスギ不動産(熊本市)は、2017年にポータル集客の専任チームを設置。出稿枠の活用や反響への返信速度に注力し、成約率の向上に効果を上げる。

 同社の商圏は熊本県が中心。賃貸仲介部門の担当者は34人。ポータル集客業務に携わるのはポータル専任チームの4人と、仲介営業担当者28人の合計32人だ。

コスギ不動産の会社情報まとめ

 同社の賃貸仲介の成約のうち、ポータルサイト経由が8割、自社サイト経由が1割、店舗への飛び込み相談が1割となっている。

 利用するポータルの出稿件数比率は、SUUMOが9割、LIFULL HOME'Sが1割。ポータルサイトの年間出稿費用は約2500万円だ。

 友野直寛執行役員は「大前提として、大事にしているのは物件の掲載数。常時約3800件の物件情報をポータル上に載せていることで、成約につなげている」と話す。

 同社ではポータル専任チームの担当者を置くことで、年間のポータル出稿件数は、設置前に年間2500件だったのが、設置後は年間で3775件と、約1.5倍増えた。

 ポータルからの成約率も、設置前の24%から、30%まで高まってきている。

 専任チームは物件広告枠に対する掲載物件広告の回転率の把握と、ポータルから来る反響への返信速度を高める業務を担当する。営業時間である午前9時から午後6時の間に来た反響には、10分以内に返信することをルールとしている。

賃貸仲介にも使われる接客スペース

賃貸仲介にも使われる接客スペース

 また、エリアを調査しニーズが高い間取りの物件を選定、掲載することで反響率の上昇を図っているという。

 「反響への返信担当として、在宅のパートスタッフを1人置いているが、今後は人員を増やしていきたい。また、DX(デジタルトランスフォーメーション)化を推進し、データ連動によって出稿の手間を省くなど効率化を図る」(友野執行役員)

(2022年11月7日7面に掲載)

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