賃料上昇継続、各地で物件不足に【2026繁忙期総括】
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ピーク早期化、オンライン接客需要増
2026年1~3月の今繁忙期は、全国の都市部で、賃料の上昇と物件不足が目立った。特に新築物件の賃料高騰は著しく、部屋探しの顧客がついてこられなくなっているという声も聞かれる。顧客が「希望の賃料で条件の良い物件を契約するためにはスピードが重要」と認識。問い合わせのピークが早まる、オンライン接客の需要が高まるといった例が見られた。
大手
タウンハウジング(東京都千代田区)
都内中心に家賃高
年間約7万件を仲介するタウンハウジングでは、今繁忙期の成約賃料は東京都内を中心に上昇傾向だった。東京23区の場合は8〜10%、1都3県でも6%ほど上がっている印象だという。法人仲介では、入居者が希望する物件の家賃が社宅の規定を超えても、柔軟に対応する企業が増えつつあるようだ。
同社の成約件数は好調で、前年の繁忙期に比べ成約件数が4%増加した。仲介スタッフの増員により、営業力が増したことが要因の一つだ。新卒採用に加え、年間を通して中途採用活動を行ってきた。この1年間で、1店舗あたり1・2人程度、会社全体で約140人の仲介営業スタッフが増加。高畑順常務は「人員構成に合わせ、ウェブ集客や法人営業を強化した結果、成約件数の伸長につながった」と話す。一方で、自社管理物件で退去が少なく、仲介事業で紹介できる空室が少なかったため、物件情報の確保が課題となった。
北海道・東北
ビッグ(北海道札幌市)
学生、設備を重視
北海道札幌市を拠点に年間2万7000件超の賃貸仲介を行うビッグでは、今繁忙期の成約件数は、前年比で2〜3%程度の「微増」で着地した。営業本部の加藤大貴課長は「現状維持したぐらいの手応えだ」と語る。
札幌市の賃貸市況では家賃高騰が継続。3月末時点の成約単価は、前年同月比で3000〜4000円程度上昇した。この単価上昇は、ファミリー物件に限らず単身者向け物件も含め全体的な傾向だ。顧客側も相場感の上昇を理解しているため、予算よりやや高い賃料でも契約する動きが見られた。
特に学生層の部屋探しでは、付帯設備へのニーズが家賃帯の上昇に影響している。具体的には、プロパンガスと比較してランニングコストを抑えられる都市ガスや無料インターネット設備が重視されていた。それぞれの設備がない物件と比較すると、最大5000円程度家賃が上がっても成約する顧客が増えた。学生の平均成約賃料は5万円前後となり「4万円後半から5万円台に乗り出した感触だ」(加藤課長)
一般社会人の成約件数も微増したが、これは北海道千歳市に誘致された半導体メーカーRapidus(ラピダス)の影響が考えられるという。加藤課長は「ラピダスバブル状態で、千歳市内は住まいが不足している。札幌市から千歳市に通勤する層が部屋探しをしている可能性が増加の一因として考えられている」とした。
ハウジングエステート(宮城県仙台市)
新築高騰、中古に人気
年間4000件超の賃貸仲介を行うハウジングエステート(宮城県仙台市)の商圏である仙台市の賃貸市況は、建築費の高騰により家賃が上昇傾向にある。ただ、借り手は予算を維持するため、同社の成約賃料平均は前年と変わらない13万円前後で推移している。借り手は家賃上昇が顕著な新築ではなく、予算感に合わせた中古物件を選ぶ傾向が目立つ。そのため、フリーレントや初期費用削減といったオーナーとの条件交渉を積極的に進めているとした。
同社の今繁忙期の成約件数は、新店舗の拡大が奏功し、前年比8%の「やや増」で着地した。反響数が前年比15〜20%減少した一方で、1件あたりの丁寧な対応が可能となり、来店率は例年の20%台から30〜35%にまで上昇。石川祐介執行役員は「新店舗の本格的な効果は、人材育成も含め2026年よりも27年に焦点を合わせた。既存店舗の成長も含め来年の業績拡大に期待している」と語る。
ハウジングエステート長町駅前店の外観
甲信越・北陸
信濃土地(新潟市)
節約志向高まる
新潟市を中心に、新潟県上越市、長岡市を商圏として年間2245件の賃貸仲介を行う信濃土地では、顧客の節約志向が高まっているという。賃貸営業部の阿久津正太部長は「一般客のなんとか費用を押さえたいという気持ちを感じた。新築物件は家賃が高いことを理解しているため、築古であってもリノベーションしているのであればいいという声が増えている」と話す。
初期費用の相見積もりを取る顧客も増加傾向にある。代理店手数料を惜しみ、自身で火災保険の契約を希望する顧客も24年ごろから増えてきた。一方で、賃貸借契約時までに保険証券の提出が間に合わず、最終的に管理会社が提供する火災保険を希望する事例も多いという。
「火災保険を顧客自身で契約するのは、初期費用を抑えるテクニックとしてSNSなどで紹介されていて、その影響を受けているようだ。借家人賠償と個人賠償がいくら以上ならば問題ないかなど、管理会社に確認する手間が増えている」(阿久津部長)
東京
アップスタイル(東京都千代田区)
初期費用を抑制
東京都の城東・城北エリアを中心に年間1800件の仲介を行うアップスタイルは、1〜3月の成約件数が600件弱となった。件数は25年と同程度だが、成約賃料は平均2万円上昇したという。
佐藤幸司取締役は「東京都の空室不足により、仲介できる物件数自体が減少している。だからこそ、件数増加よりも単価向上の施策を行った」と話す。同社は主に単身者をターゲットに賃貸仲介を行う。その中でも26年繁忙期は一般顧客から「初期費用を抑えられるなら、家賃や共益費などのランニングコストを上げても良い」という声があったという。
例えば、月額予算10万円の一般顧客に対して、礼金や仲介手数料がなく、フリーレント2カ月のついた12万円の物件を紹介。これを24カ月の入居期間で割れば、月々の実質的な負担増は相殺される。「東京都内は特に家賃の上昇率が高いからこそ、初期費用は下がっている印象がある」(佐藤取締役)
アーバン企画開発(神奈川県川崎市)
礼金値上げも
神奈川県川崎市と横浜市北部を商圏に約7300戸を管理するアーバン企画開発は、26年繁忙期の成約件数が前年同期比で約2割増加。特に法人契約が約1割伸長した。賃貸営業部の新倉正久部長は「特に製造業・金融業・IT関連などの企業で新入社員からの需要が多く、企業の採用拡大の影響が推測される」と分析する。
一方で、上昇を続ける家賃相場が成約の壁となるケースも出ている。新倉部長の肌感覚では、この1年で単身者向け物件で5000円前後、ファミリー向けでは1万円ほど高くなったという。転勤者社宅については企業側の予算基準と実勢賃料との乖離(かいり)が顕著となり、条件に合う物件自体が減少。結果として「紹介するが決まらない」のではなく、紹介可能な物件が構造的に絞られている状況だったという。同社の商圏では礼金も上昇傾向にある。特に築浅やペット共生型などの需要が高い物件では1万〜2万円ほどアップした事例も見られた。
新型コロナウイルス禍以降、市場が回復し始めた22年ごろからは、供給物件の減少から物件を確保するため、申し込み決定までのスピードが年々早まっている。それに伴い、スピードを重視する一般顧客を中心に、オンライン内見やIT重説、電子申し込みなどの非対面サービスの利用を希望する声が増加しているという。
オカムラメイト(千葉県八千代市)
家賃が二極化
千葉県八千代市を中心に賃貸管理や仲介を行うオカムラメイトでは、26年繁忙期に入居募集をかけた物件の賃料が前年比で約5%上昇した。
業務推進課の春日肇課長は「特に築浅や駅近の物件では値上げが常態化している。築古や駅から遠い物件は賃料が上がらず、物件条件による二極化が目立った」とコメントした。
千葉県八千代市にある本社の外観
3月単体の売上高は前年比1.7倍に伸長した。1月から3月の成約件数は前年同期比約14%増となった。
学生の成約が好調に推移。学生客は成田国際空港に勤務する空港関係者の需要で逼迫(ひっぱく)する成田エリアから、物件を求めて同社の商圏へ流入する動きが活発化した。家賃高騰が続く都心部からの一般顧客による住み替え需要も、成約件数の押し上げに寄与したという。
成約に寄与したのは、管理物件や新築物件の受託による物件仕入れだ。15戸規模の新築物件が完成前に14戸決まるなど、市場全体の物件不足に対応した。一方で商圏内での物件解約数は少なく、案内できる物件自体は限定的だった。
渡辺住研(埼玉県富士見市)
外国人、紹介で好調
埼玉県富士見市を中心に賃貸管理・仲介を手がける渡辺住研は、1〜3月の成約件数が前年比6%と増加した。仲介店舗数を3店に減らしたが、各店舗での営業効率を高めた。反響数・来店数ともに前年同期と比較して減ったが、申し込み率の向上により成約数は38件増加した。
渡辺住研ふじみ野店の店内写真
属性別では外国人と法人の成約が増加した。外国籍の顧客は、3月の反響数全体の11%を占め、語学学校に通うアジア圏の学生や医療従事者として勤務する外国人の需要を取り込んだ。
法人は、25年9月〜26年3月末の成約件数が前年比で46件増加。特に1月と2月に成約が集中した。賃貸営業部部長代理(兼サテライトリーシンググループ立ち上げ責任者)の高橋正和氏は「従来は法人からの依頼があれば、各店舗に振り分けていたが、反響対応チームで反響から申し込みまで一貫して対応する体制に変更した」とコメントした。
一方で一般顧客は、家賃高騰や退去者の減少から、住み替えが必須な層に限定された印象だったという。
中部
洞口(ROOMSELECT)(愛知県名古屋市)
法人仲介が好調
愛知県名古屋市を中心に、年間1880件の賃貸仲介を手がける洞口。「ROOMSELECT」の屋号で不動産事業を展開し、市内に仲介店舗を6店舗構える。仲介件数は25年と比べて微増にとどまったものの、法人仲介が好調だ。
竹川和希執行役員は「大手企業だけでなく、中小企業の社宅のニーズが増えている。その結果、成約単価も上がっている」と話す。平均成約単価は、23年の12万5000円から26年には14万6000円と、2万1000円アップした。付帯設備の商品項目を増やしたことや、24年12月から社内勉強会を強化したことも、単価上昇の要因とみられる。
ROOMSELECT藤が丘店外観
社宅代行事業者からの送客による成約率は、1月31日時点で67%に達した。提携する社宅代行事業者からの送客数が増加した。背景には、製造業が多い愛知県において、人材確保を目的に社宅を用意する法人が増えていることがあるとみられる。大手企業の従業員向け社宅の相談を受けることもあったという。
洞口
竹川和希執行役員





