印紙代、年2000万円以上を削減

FJネクスト,ベルテックス,ジャパンリアルター,GA technologies(ジーエーテクノロジーズ)

企業|2022年09月13日

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 収益不動産の売買仲介を行う不動産会社にとって、電子契約を推進する大きなメリットはコスト削減だ。特に取引額の大きい契約であれば印紙代の削減効果が期待でき、実際、年間2000万円以上のコストカットを実現している企業もある。先進的に電子契約を取り入れている企業の事例を紹介していく。

「月1件の契約でもメリット」

電子契約を積極的に進める収益不動産売買各社の取り組み概要

FJネクスト、フロー変わらず変更合意も手軽に

 従来の業務フローを大きく変えずに販売時の電子契約を導入したのは、投資用マンションデベロッパーのFJネクスト(東京都新宿区)だ。導入の主な目的はコスト削減。今では新築分譲マンションと、中古区分マンション販売の9割以上で電子契約を利用する。

 2022年3月期の同社決算によると、新築・中古を合わせた収益不動産販売戸数は2226戸。1戸あたりの平均販売価格は3000万円ほどで、顧客は30代がメインだ。

 5000万円以下の契約の印紙代は1万円のため、印紙代のみで年間約2000万円超を削減している。一方、電子契約にかかわるコストは、固定費と従量課金分を合わせて年間で140万円ほどだ。

 同社では、商談の最終タイミングで購入物件を決めることもある。その場合、営業担当者は候補物件に合致する契約書のひな形を複数持参し、購入物件を確定した直後に契約に進む。この従来通りのフローをほぼ変えずに電子化できることを重要視し、「CLOUD SIGN(クラウドサイン)」を導入した。

 電子契約ではクラウド上に保存している複数のひな形を、営業担当者が選択して契約時にダウンロード。テキストボックス内のみを編集する。スマートフォンでは契約書類が見にくくなってしまうため、顧客にもPCかタブレット端末を用意してもらう。書面はメールアドレス認証のため、顧客側で端末が用意できない場合は、紙での契約締結としている。

契約書サンプル

契約書サンプル。指定されたテキストボックスに記入する

 記入ミスはゼロではない。ただ、その場合の変更合意書も、紙の契約書の際は確認の電話と再度の郵送などで時間を要していたが、電子であればその場で締結できる。「変更合意書作成の手軽さは電子契約のメリットの一つといえる」と経営戦略室須之内健太主任は話す。

 電子契約にあたって新たに整備したものは課ごとのタブレットPCの支給だ。導入費用として全社で1500万円ほどの費用を計上した。

ベルテックス、助成金で機器整備 コロナ下機に導入

 「新型コロナウイルス下で正式導入を決意した」と語るのは、収益不動産の開発分譲を手がけるベルテックス(同)の澤田統吉取締役だ。同社では新規契約の5割を電子化している。

 元々、オンライン化に興味があり、社会実験にも参加していた。だが、「19年当時はオンラインはまだ珍しく、すぐに導入する意思はなかった」(澤田取締役)

 しかし、コロナ下で大きく事態が動いた。県境をまたいだ営業がはばかられ、事業継続のためにオンライン化を急いだ。

 20年2月に「SMBCクラウドサイン」を導入。すでに社内で利用していたオンライン会議ツール「Teams(チームズ)」に加え、「Zoom」も導入し、オンラインで説明をしながら契約締結できる環境を整えた。

電子契約のイメージ

電子契約のイメージ

 設備投資には助成金を活用。公益財団法人東京しごと財団(東京都千代田区)から2種類、総額253万円の助成金交付を受け、デバイス購入費用に充当した。

 実際に運用する中で感じているメリットは業務効率化とコスト削減だ。

 オンラインで契約できるため、スタッフ1人あたりの契約件数を大幅に増やすことが可能になった。従来は遠方の場合、1日1件程度だったが、現在は、多い時で1日5件対応できるようになった。コストについては、印紙代と営業交通費含め、年間約1300万円超を削減できている。

 一方で、法人が買主の場合、電子契約を採用しづらい背景もある。

 窓口の担当者と、実際の決裁権者が異なることは多い。その場合電子契約で登録するメールアドレスや、二段階認証のための電話番号を決裁者で登録しなければならない。そのため、法人が買主の場合の電子契約が進まないのではないかとみている。

 システムだからこそのデメリットもある。澤田取締役は「今までの承認フロー通りに権限設定ができないこともある」と話す。そのため同社では、承認者が別のシステムで決済内容を確認するなどのチェック体制を敷いている。

 同社の年間販売戸数は612戸で、平均販売価格は3000万円。

ジャパンリアルター、「デメリットなし」月3件以上で採算

 「電子契約のデメリットはない」と言い切るのは、ジャパンリアルター(東京都新宿区)の堤誠之社長だ。

 同社は1都3県で築古空き家や中古マンションなど年間70件弱の売買仲介を手がける。

 同社は7月に「電子印鑑GMO(ジーエムオー)サイン」を導入し、今では新規の売買契約の4割ほどを電子化している。

 同社では、基本的に電子契約は非対面で行う。車移動の交通費や印紙代を含め、1件あたり2万円以上はコスト削減になる。月5万円のシステム利用料を支払っており、コストだけを見ても月3件の契約があれば採算が取れる計算だ。

 さらに電子契約を非対面で行うことで、移動にかかる時間が削減できている。業務効率化にも貢献しているため「大企業でなくても、たとえ月1件の売買契約でも、導入メリットがある」と堤社長は言う。

 電子契約を導入する各社とも、コスト削減や業務効率化のメリットを感じている。スムーズに導入するためには、できるだけ営業現場のフローを従来と変えず、自社にマッチするシステムを比較検討するとよいだろう。

ジャパンリアルター 堤誠之社長の写真

ジャパンリアルター
東京都新宿区
堤誠之社長(37)

 

 

GA technologies、サイトから遷移、電子化98%

 新規売買契約のうち98%で電子契約を行うのはGA technologies(ジーエーテクノロジーズ:以下、GA:東京都港区)だ。

 契約の電子化により、年間794万枚の紙を削減。これにより、郵送費や印紙代を除く紙代のみでも、概算で年間360万円の削減を実現した。

 同社は中古区分マンションの買い取り再販事業を手がけ、2000万円台の物件が多くを占める。オーナー層は20代後半から30代のサラリーマン投資家が多い。

 自社ポータルサイト「RENOSY(リノシー)」では一部物件の検索だけでなく、マイページ機能を活用した契約締結、専用アプリで購入後の収支確認も可能だ。売買契約の際には、マイページ内のボタンをクリックすることで、電子契約システム「Docu Sign(ドキュサイン)」に遷移する仕組みになっている。重要事項説明書・契約書共に、捺印・書面交付は電子上で行うが、対面で説明しながら実施するケースもある。

RENOSY のマイページ

RENOSYのマイページ。「契約同意へ進む」をクリックするとDocu Signに飛ぶ仕組み

 すべての不動産取引業務のデジタル化を目指す同社にとって、電子契約の導入は当然の流れ。デバイスやインターネットなどの環境は整備済みだった。

(2022年9月12日4面に掲載)

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