不動産DX「推進すべきだと思う」が98.4%に【6社合同DX推進状況調査】

イタンジ,WealthPark(ウェルスパーク),スペースリー,スマサテ,リブセンス,全国賃貸住宅新聞社

統計データ|2022年08月26日

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 全国賃貸住宅新聞社、不動産テック事業者4社、業界専門メディア1社は2日、6社合同による「不動産業界のDX推進状況調査」の結果を発表した。全国の不動産会社を中心としたウェブアンケートで766人から回答を得た。「不動産DX(デジタルトランスフォーメーション)を推進すべき」は98.4%に上り、不動産DXへの意識の高さがうかがえる。また、業界のDX(デジタルトランスフォーメーション)において、導入を検討しているもので最も多かったのが「電子契約」だった。5月18日に全面解禁となったことで、関心の高まりを感じさせる結果となった。

導入検討「電子契約」が最多

 今回の6社合同調査では、業界のDXに対する考え方から導入状況、課題までの実態を探った。

 導入検討中のシステムのうち、電子契約が18.7%と最多の回答数を獲得。導入済み・導入進行中のDXサービスでは、13種のシステムのうち8位に電子契約システムがランクイン。回答の23.5%で導入済み・進行中であることがわかった。

 導入済み・進行中と導入検討中を含めると回答の4割以上を占めることになり、不動産業界において、電子契約の普及が進んでいきそうだ。

◎本調査における 「 DX 」は不動産テックサービスなどを活用して業務改善を行うことと定義。

◎構成比の合計は、四捨五入の関係で100%とならない場合がある。

不動産業界のDX推進状況調査概況

  • DXについて、「推進すべきだと思う」は98.4%、「実際に取り組んでいる(いた)・取り組む予定」は
  • DXに「取り組んでいる(いた)」と回答した企業のうち、DXへの取り組み期間が「1年未満」は44.1%、DXの効果を「実感している」は70.7%
  • DX年間予算は従業員10名以下では「100万円以下」が最多、従業員501名以上では「1,001万円以上」が最多
  • DX推進の上での苦労は「予算の確保」「DX推進人材の確保」「導入プロセスがわからない」
  • 改正宅地建物取引業法(宅建業法)施行により、書面電子化が可能になったことを知っているのは98.2%
  • 今、最も導入を検討しているのは「電子契約システム」
  • すべてのDXサービスにおいて導入に「満足している」は50%以上、特に「ウェブ会議システム」「内見予約システム」「AI査定システム」「IT重説のためのシステム」「電子申込システム」の満足度が高い
  • 2022年に導入される割合が最も高いのは「電子契約システム」。20年~21年に導入された割合が高いのは「ウェブ会議システム」「IT重説のためのシステム」「VR / オンライン内見システム」

DXについて、「推進すべきだと思う」は98.4%、「取り組んでいる(いた)・取り組む予定」は71.0%

 「DX推進についての意見をお教えください」という質問に対し、強く推進すべきだと思う・推進すべきだと思う・状況に合わせて推進すべきだと思う、を合わせると「推進すべき」という意見は98.4%に上った。また、「社内においてDXに取り組まれていますか?」という質問に対し、71.0%が「取り組んでいる(いた)・取り組む予定」と回答。さらに、DX推進の目的について質問したところ「業務効率化・生産性向上」が最も多く93.4%で、次いで53.3%が「顧客満足度アップ」、35.7%が「集客力アップ」と回答した。

 本アンケート回答者の半数近くは従業員数が10名以下の企業(※1)だ。大企業だけでなく、多くの中小企業でも「DXを推進すべき」と考え、また「DXに取り組んでいる(いた)・取り組む予定」ということがわかる。

DX推進についての意見・社内におけるDXへの取り組み

DX推進の目的

今、最も導入を検討しているのは「電子契約システム」

 各DXサービスの利用状況について質問したところ、「導入済 / 導入進行中」の回答が最も多かったのは「ウェブ会議システム」で70.0%、次いで「賃貸管理(不動産基幹ソフト)システム」が52.3%、「電子申込システム」39.1%、「CRM(顧客管理)システム」31.8%。

導入している/導入進行中のDXサービス

 また「導入検討中」が最も多かったのは「電子契約システム」で18.7%、次いで「IT重説のためのシステム」15.8%、「電子申込システム」14.0%、「オーナーアプリ / ポータル」が11.5%だった。前述の「書面電子化の実現」の影響がうかがえる。

導入検討中のDXサービス

DXへの取り組み期間が「1年未満」は44.1%、DXの効果を「実感している」は70.7%

 「DXに取り組んでいる(いた)」と回答した企業に対し、「DXに取り組んでいる(いた)期間をお教えください」という質問を行った。これに対し、44.1%が「1年未満」と回答した。一方、既にDXへの取り組みが完了した企業はわずか0.7%に留まるため、直近1年でDXの取り組みを開始した企業が増加したことがわかる。DXに取り組んでいる(いた)期間が「2年未満」を合計すると70.6%となる。

 DX推進の効果について質問したところ、「とても実感している・まあまあ実感している」を合わせ「効果を実感している」という意見が70.7%となった。

 DX推進の具体的な効果について質問したところ、「業務効率化・生産性向上」が最も多く93.2%で、次いで29.0%が「顧客満足度アップ」、25.6%が「商談成約率アップ」と回答した。DXに取り組んでいる、または取り組んでいた期間

DX推進の効果

DX推進における具体的な効果

DX推進における年間予算は従業員10名以下では「100万円以下」が最多、従業員501名以上では「1,001万円以上」が最多

 「DXに取り組んでいる(いた)」企業に対し、DX推進における年間予算を質問したところ、従業員数1~4名の企業では93.1%が、5~10名の企業では85.4%が「100万円以下」と回答。また、従業員数101~500名の企業では約70%が「100万円以上」と回答、従業員数501名以上の企業では「1,001万円以上」が回答の最多を占めた。DX推進における年間予算は企業規模に比例し増大する傾向にあることがわかる。

 DX推進の担当部署について質問したところ、「役員直轄」が最も多く21.3%で、次いで20.6%が「営業企画・営業部」、16.7%が「経営企画・事業企画・社長室」と回答した。また「DX推進部」という専門部署があり、そこが担当しているというケースも9.7%見受けられた。

DX推進における年間予算

社内でDXを推進している部署

DX推進の苦労は「予算の確保」「DX人材の確保」「導入プロセスのわかりにくさ」

 一方、業界におけるDX化のハードルも調査から見えてきた。

 DX化が必要であると理解はしているが、「費用が高い、予算がない」「人材不足」「取り組み方がわからない」という現場の声も明らかとなった。

 DX推進に「苦労している、苦労した」の回答の中で挙がった課題は、上述の予算に次いで「DX推進人材を確保できない」が40.2%。「導入プロセスがわからない」「何から取り組むべきか、導入ツールがわからない」が計68.3%を占めた。

 また、DX推進に「取り組む予定がない」と回答した事業者も、「取り組み方がわからない」が25.7%。「社内に人材がいない」が22.5%という結果となった。

 不動産業界でDXが進むためには、人材の確保や育成がカギになっていくといえよう。

 「DXに取り組む予定がない」と回答した企業に「取り組む予定がない理由」を確認した質問でも、ほぼ同じ課題を抱えていることがわかった。

DXを推進するうえで苦労していること、苦労したこと

DX推進に取り組む予定がない理由

改正宅建業法施行により、書面電子化が可能になったことを知っているのは98.2%

 「5月18日の改正宅建業法施行により、不動産業において契約書面等の電子化が可能になったことをご存知ですか?」との質問をしたところ、「よく知っている」が57.7%、「聞いたことがある」が40.5%、「知らなかった」は1.8%だった。書面電子化はほぼすべての回答者が知っていることがわかった。

契約書面等の電子化が可能になったことをご存じですか?の回答

すべてのDXサービスにおいて導入に「満足している」が50%以上

 各DXサービスの満足度について質問したところ、すべてのサービスにおいて「とても満足している / まあまあ満足している」の回答が50%を超えた。特に「ウェブ会議システム」「内見予約システム」「AI査定システム」「IT重説のためのシステム」「電子申込システム」の満足度が高い結果となった。

各DXサービスの満足度

22年に導入される割合が最も高いのは「電子契約システム」

 各DXサービスの導入時期について質問したところ、「ウェブ会議システム」「IT重説のためのシステム」の導入は20~21年が70%超、「VR / オンライン内見システム」の導入は20~21年が61.0%と、コロナ禍を機に導入が加速したことがわかる。

 22年に導入される割合が最も高いサービスは「電子契約システム」で31.7%、次いで「AI査定システム」24.3%、「内見予約システム」20.9%、「電子申込システム」20.5%。

 また、19年以前に導入された割合が高いのは、「賃貸管理(不動産基幹ソフト)システム」「更新退去システム」「CRM(顧客管理)システム」だった。

各DXサービスの導入時期

総括

 デジタル改革関連法の推進や、ウィズコロナの生活様式の定着、そして改正宅建業法施行による書面電子化などの影響で、不動産業界のDXに大きな変化の波が訪れている。直近1~2年以内にDXの取り組みを開始した企業が約7割を占めることからも、急速なDXの浸透をうかがうことができた。

アンケート概要

  • 実施期間:2022年6月16日(木)~7月7日(木)
  • 回答数 :766名
  • 調査対象:不動産管理会社、不動産仲介会社を中心とした不動産関連事業者
  • 実施方法:インターネットによるアンケート調査
  • 共同企画:イタンジ(東京都港区)、WealthPark(ウェルスパーク:東京都渋谷区)、スペースリー(東京都渋谷区)、スマサテ(東京都品川区)、リブセンス(東京都港区)、全国賃貸住宅新聞社
  • 回答企業属性:以下詳細

回答企業属性

(※1)上記、回答企業属性参照
(※2)2021年7月「不動産テック7社・1団体 共同企画 不動産業界のDX推進状況調査」

おすすめ記事▶『【不動産DXのシステム特集】~賃貸管理システム編~』

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