全国賃貸住宅新聞では毎年、「賃貸仲介件数ランキング」を企画しています。同ランキングでは年間の仲介件数が200件以上の会社404社を紹介しています。今回はランキングに掲載された404社の2021年の賃貸仲介の状況について詳しく解説。現場の実態が見えてきました。
部屋探しサポートから契約処理まで行う賃貸仲介
賃貸仲介と一口にいいますが、一般的には、家主から入居者募集を依頼された宅地建物取引事業者が、インターネットなどに物件情報を掲載して入居希望者を募集し、契約手続きの処理をはじめ、家賃の請求や鍵の引き渡しなど幅広く行っています。賃貸仲介の実態の話に入る前に、部屋探しから契約までの流れについて紹介しましょう。
1 部屋探しをする入居希望者
インターネットのサイトなどから物件を検索
2 希望物件を取り扱う不動産会社へ問い合わせ
3 内見の予約
4 不動産会社を訪問。物件を内見する
5 物件を気に入ったら入居申し込み
6 不動産会社が入居審査を実施
7 入居審査結果が出る
8 契約締結
以上のような流れになります。
基本的にはこの1~8のプロセスにすべて不動産会社(宅建事業者)が関わることになります。 21年の仲介件数は20と比べて増えたのでしょうか?
まず、404社の仲介状況を分析する前に、仲介件数の規模別の内訳を紹介します。最も多いのが、400~1000件未満で31%、次いで1000~3000件未満で27%、200~400件未満が23%です。
3000~1万件未満は13%、1万件以上が6%で、仲介件数が多くなると対象企業数が減ります。
さて、そのような規模別分布を踏まえたうえで、21年に扱った賃貸仲介件数の20年との比較による増減を見ていきましょう。前年と比較して「増加」したと答えた企業が41%と4割を超え最多となりました。「減少」した企業は35%、「変化なし」が24%という結果でした。
21年も20年に引き続き新型コロナウイルス感染症の影響下でしたが、2年目ということもあり、対応力がついたことが20年よりも「増加」した企業が多かった要因だと推測できます。
仲介件数が多い企業と少ない企業で真逆の結果
ただ、この傾向は仲介件数の規模によって違いがあります。
仲介件数が年間3000~1万件未満のクラスでは「増加」と回答した企業が60%を占め、「減少」と回答した23%の企業を大きく上回っています。年間仲介件数が1万件以上のクラスでも「増加」の回答が5割を超えたのに対して、「減少」の回答が2割ほどになっており、同様の傾向が見て取れます。
一方で、年間仲介件数が200~400件未満クラスでは「減少」と回答した企業が44%を占め、増加と回答した32%よりも上回りました。
つまり、21年の仲介件数は、規模が大きい企業に20年よりも「増加」した企業が多かったことがわかります。
では、仲介件数が増加した理由は何でしょうか。「外部環境の変化」(52件)、「店舗数・仲介担当スタッフ数の増加」(51件)、「自社サイトやSNSでの集客強化」(49件)、「ポータルサイトへの広告掲載数の増加」(48件)と、増加した理由トップ4は、1位と4位が4件という僅差の結果となりました。
注目したいのは、「店舗数・仲介担当スタッフ数の増加」と「自社サイトやSNSでの集客強化」です。この二つはコストがかかります。そのため、規模が大きい企業のほうが取り組みやすい部分であり、より効果的だったのだと思われます。それを証明するように、規模別で増加理由を集計したところ、年間仲介件数が3000~1万件未満、1万件以上の規模クラスで、この二つの理由がトップ2でした。
一方、仲介件数が減少した理由として、最も多かったのが、「外部環境の変化」でした。長引くコロナ禍の影響に対応できなかった点が大きな要因といえるでしょう。
1店舗あたりの平均仲介件数はどれくらい?
1店舗あたりの平均仲介件数を尋ねたところ、規模が大きいクラスほど1店舗ごとに扱う件数も多いという結果となりました。
最も多かったのは、1万件以上のクラスで698件、最も少なかったのは200~400件未満のクラスで239件でした。
社員1人あたりの仲介数が100件を超えている企業は来店者の成約割合も高い
社員1人あたりの平均仲介件数は全体の平均では92件ですが、規模別で見ると大きな隔たりがあります。最も多かったのは仲介件数が3000~1万件未満のクラスで115件、最も少なかったのは200~400件未満で72件でした。実に43件の差があります。
その理由として、来店者の成約割合の違いが挙げられます。
社員1人あたりの仲介件数が100件を超えた1万件以上、3000~1万件未満、1000~3000件未満の三つのクラスは、来店者の成約割合が「5割以上」という回答が85%以上を占めました。
一方、社員1人あたりの仲介件数が90件を下回った400~1000件未満、200~400件未満のクラスについては、来店者の成約割合が5割以上と回答した企業が、それぞれ72%、66%にとどまりました。社員1人あたりの仲介件数を増やすためには、来店者の成約割合を高めることが、大きな課題であることがこのデータからもわかります。
以上、「賃貸仲介件数ランキング」に掲載された404社の分析から、コロナ下における賃貸仲介の現状について紹介しました。
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