賃貸住宅市場とは ~データで読み解く市場構造と課題~

統計データ|2023年04月24日

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市場の主役は、家主と賃貸管理会社

 賃貸住宅市場とは、賃貸住宅を所有する不動産オーナー(家主)と、彼らから賃貸住宅の管理や仲介を任される不動産会社、さらに、その実務を支えるサービス提供会社や建築・リフォーム会社などによって形成された市場を指します。

 賃貸住宅は、土地所有者が負担する土地の固定資産税や、所有者が死亡した時に発生する相続税の、節税手段として建てられるケースが多いのが実態です。賃貸住宅を建てた場合、その土地と建物の固定資産税や相続税の評価額が低くなるため、地域の需要に関係なく、節税目的で多くの賃貸住宅が建築されてきました。その結果として、国内人口が減少傾向にあるにも関わらず、賃貸住宅は建ち続けており、入居率の低下や空き家が業界の課題、さらには社会的な課題になっています。

2021年度の貸家着工数は33万752戸

 国土交通省発表の「建築着工統計」によれば、2021年度に着工した住宅の総数は2020年度に比べ6.6%増の86万5909戸で、20年度の81万2164戸より5万3745戸多い結果となった。内訳は、分譲住宅が24万8384戸で構成比28.7%、持ち家が28万1279戸で32.5%、貸家は33万752戸で同38.2%、給与住宅は5494戸で同0.6%となった。貸家は20年度から2万7734戸と最も増加した。一方、20年度比減となったのは給与住宅のみで、1414戸減少した。

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新築着工数は相続税制の改正に影響受けやすい

賃貸住宅の着工数は、相続税制度の改正にも大きく影響を受けます。景気の影響が色濃く反映される持家や分譲住宅と大きく異なる部分です。2015年4月の相続税改正では、基礎控除が4割引き下げられ増税となりました。この時期、ハウスメーカーによる「相続税対策」セミナーが多数行われることになりました。

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経営実務の所在が異なる、自主管理と管理委託

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 このような不動産オーナーは、新しい入居者の獲得、家賃の回収、入居者からの陳情対応、建物の清掃・点検といった賃貸経営の実務を、有償で引き受ける不動産会社に任せます。上記の業務を賃貸管理と言い、賃貸管理を専門とする不動産会社のことを賃貸管理会社と言います。賃貸住宅市場の中心にいるのは、不動産オーナーと賃貸管理会社だということができます。

 民間の賃貸住宅市場を管理形態で分類すると、不動産オーナーが自ら賃貸管理業務にあたる自主管理のものと、賃貸管理会社に委託されたものとに二分できます。全国賃貸住宅新聞が30年以上続ける調査によると、2020年3月時点の民間賃貸住宅の数は1925万2400戸あり、そのうち47.6%に当たる815万戸がオーナーによる自主管理、52.4%に当たる1010万戸が賃貸管理会社によって有償管理されています。

※賃貸管理会社の顔ぶれ、勢力図がわかる「管理戸数ランキング」最新の結果はコチラ

賃貸住宅管理業法の成立とサブリース契約への規制

 管理委託された賃貸住宅の数は、今も増加傾向にあり、市場における賃貸管理会社の役割も拡大しています。それを象徴するのが、20年6月に成立した「賃貸住宅の管理業務等の適正化に関する法律」、いわゆる賃貸住宅管理業法です。これにより、21年6月、賃貸管理会社を所管する国土交通省に登録制度が創設されました。登録される管理会社の対象には、有償だけでなく無償で管理を行ってきた管理会社も含まれました。  

 不動産オーナーと賃貸管理会社が交わす有償管理契約の中には、「サブリース契約」という、管理会社に経営の権限を多く移管する形態のものがあります。全国賃貸住宅新聞の調査では、サブリース契約のもと管理された賃貸住宅の数は441万5000戸(推計)で、管理委託された民間賃貸住宅の43.7%を占めています。民間賃貸住宅市場全体に占める割合も、28.2%に達しています。

 サブリース契約を巡る不動産オーナーと賃貸管理会社のトラブルは、近年社会問題としてマスコミで取り上げられる機会が増えています。賃貸住宅管理業法には、サブリース契約に関する項目についても記述がされました。この内容はサブリースする不動産会社を規制するもので、1戸のサブリース契約から適用の対象となりました。違反者に対しては業務停止命令や罰金などの措置がとられます。

木造アパートの新築供給、2014年以降鉄筋造を超える

 次に、建物構造から賃貸住宅を分類してみましょう。

 2014年度から、木造の着工数が鉄筋コンクリート造を上回っています。木造の比率が高いということは、1棟当たりの賃貸住宅の大きさが、縮小していることを意味します。理由として考えられるのは、日本銀行の金融緩和政策により、融資が受けやすくなり、サラリーマン向けに販売される投資用アパートが増えたと考えられます。長年、賃貸住宅を供給するのは、相続対策で建てる土地所有者によるものが大半でしたが、近年は、土地を持たない事業経営者やサラリーマン向けに、投資目的で賃貸住宅を販売する不動産会社によるものが増加し、市場全体のバランスに影響を与えるようになっています。

※「かぼちゃの馬車、スルガ問題」が時系列でわかる、特集記事はコチラ

賃貸住宅の空き家432万戸、全体の51%

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 人口は減少しているのに、住まいの供給が増え続けた結果、日本では空き家が増加し続け、新たな社会問題として扱われるようになりました。2019年の「住宅・土地統計調査」では、すべての住居における空き家の数は848万9000戸でした。14年に比べ29万3000戸増加しましたが、5年前の調査時に、62万8000戸増加していたため、増加ペースは鈍化したことがわかりました。

 このうち、賃貸住宅の空き家戸数は432万7000戸で、3万5000戸の増加にとどまりました。最も増加幅が大きかった個人住宅の空き家(30万4000戸増)に比べると、歯止めがかかったと言えます。

2015年以降、増加スピードは鈍化

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 空き家について、世間が注目するようになっ14年の「住宅・土地統計調査」では、空き家数が800万戸を超え、空き家率も13.5%となりました。これを受け、政府は15年に「空き家措置法」を施行し、老朽化した空き家を放置し自治体の要請に応じず措置しなかった場合、自治体の判断で強制的に空き家を解体できるようにしました。

 空き家というと戸建てのイメージもありますが、半数以上を賃貸住宅が占めます。賃貸住宅の場合、経営管理者がいるため放置されにくいはずですが、対策が必要な状況です。

空き家がもっとも多いのは東京都

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 都道府県別で空き家数が多いのは、東京都です。住居全体で81万戸、そのうち、賃貸住宅は67万1100戸で、8割を超えています。人口が多いため、空き家が少ないイメージもありますが、実態は賃貸住宅の供給が多いために、増え続けています。

(公開日2021-11-24 最新更新日 2023-04-24)

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