管理戸数6000戸のアドミニ(大阪市)は、大阪府をメインに関西圏で管理を行う地場不動産会社だ。高入居率の維持がオーナーの満足度を高めることにつながると考え、入居者満足度の向上に注力する。入居率97%を維持。信頼を得た家主からの受託を積み重ね、2023年には1年間で管理戸数624戸を伸ばした。影山真由美社長に取材した。
大阪中心に売上15億円 370人の家主から受託
―売上高や、事業ごとの売上比率について教えてください。
22年9月期の売上高はグループ会社を除く当社単体で15億円でした。そのうち7割が賃貸管理の売り上げです。管理の売り上げには管理手数料や、工事、メンテナンス時の売り上げなどを含みます。そのほかはコインパーキング事業や売買、大規模修繕工事などを行っています。グループ会社で不動産事業以外に訪問介護や訪問調剤を手がけています。オーナーは370人おり、大手法人などを含む投資家系が50%、相続対策で相談に来る医師らが30%、地主系が20%程度です。管理する物件は1K、ワンルーム、1DKなどの単身者向けが7割、カップルやファミリー向けの1LDK以上の物件が3割です。
―大阪で歴史のある管理会社ですね。
1988年に設立してから35年が経ちました。設立当初から管理を続け、大阪府をメインに関西圏内で事業を行ってきました。これまでに社長が2回代替わりし、私は3代目の社長として、17年に就任しました。
直近1年間で624戸増加 ソフト面の付加価値重視
―主軸の管理事業はどのような点が特徴でしょうか。
オーナーの満足度をいかに高めるかを軸に、事業に取り組んでいる点です。オーナーからの信頼を獲得することで、新たな案件の依頼につながっています。当社の新規受託で多いのはリピート受託や、既存オーナーからの新規顧客の紹介があります。管理受託のルートはほかにも会計事務所からのオーナー紹介があります。提携する会計事務所は40社ほどです。直近の管理戸数は約6000戸(10月5日時点)で、22年から23年の1年間にかけては624戸を増やしました。
―オーナーの満足度を高めるために行っていることは何ですか。
高入居率の維持です。オーナーの円滑な資産運用のためにも、管理を任された物件の高稼働は欠かせません。10月5日時点の入居率は97.29%でした。入居率を高めるために、入居者の満足度向上に注力してきました。当社は、物件のソフト面で付加価値を提供することに重きを置いています。この方針を基に、マンションの企画や管理に注力しています。
―直近で取り組んでいることは何ですか。
10月オープン予定の「hatt(ハット)緑地公園」という大阪府豊中市にある子育て支援住宅に、管理という形で関わっています。同物件に併設する施設には、託児所や小児科が入居しており、物件の入居者は気軽に利用できます。今回の管理に伴い、併設施設の1階に当社の豊中事務所を立ち上げました。管理を受託するオーナーは、豊中市内で福祉施設の運営など社会貢献的な活動をしていることが多いです。当社も豊中市での管理に注力していく予定です。また、グループ会社と連携し、訪問介護や訪問調剤が気軽に利用できる賃貸住宅を展開して、高齢者や子育て世帯の需要に応えていきたいです。
―それ以外に入居者満足度向上のための施策はありますか。
入居者が困った時に、自社スタッフが迅速に対応できる体制づくりを進めてきました。そのために、日本エイジェント(愛媛県松山市)が展開する入居者対応業務支援フランチャイズチェーン(FC)の「レスQセンターネットワーク(以下、レスQ)」に加盟しています。レスQでは、物件の設備トラブルが起こった際に活用できる対応方法のノウハウが共有されています。
―なぜソフト面での付加価値を選んだのですか。
物件の建物自体は築年数が経過するごとに劣化が進みます。ソフト面でのサービスは築年数に関わらず、安定して提供することができます。築古の管理物件が増えることが想定できる中で、ソフトサービスが有効だと考えました。オーナー向け通信の名称は「アドミニ村」とつけています。その名の通り、入居者のことは村民として捉え、当社は村役場のような立場というスタンスです。先述の訪問介護、訪問調剤が利用できる環境や、レスQの活用だけでなく、入居者に困りごとがあった時は、気軽に相談してもらえるような存在でありたいと思っています。
不動産系資格の取得促進 社員の成功体験機会に
―会社づくりにおいて重視していることは何でしょうか。
社員が自発的に動けるような職場環境づくりです。その一環として、不動産や建築に関する資格取得を促進しています。例えば、宅地建物取引士(宅建士)や建築士、施工管理技士などの資格です。毎年、試験日が近づけば業務時間中に勉強することも容認し、合格時には手当を支給しています。宅建士資格を持っていることでオーナーの信頼を獲得できることに加え、社員の成功体験のきっかけとしています。成功体験を経てこそ自信がつき、それが社員の主体性につながります。
―社員のモチベーション向上を大切にしているのですね。
そうです。先ほどのレスQも社員の自信につながりやすいですね。レスQで入居者の問い合わせに対応した際、入居者からお礼のはがきが届くことがあり、もらった社員はやはりうれしそうにしています。
―そのほか、社員の主体性を促すために行っていることはありますか。
各部署で立てた目標を複数枚の紙に印刷し、社内に大きく張り出しています。例えば入居率や管理受託数、利益率などの目標数値です。目標は定期的に会議を行い、それぞれの部署が自分たちで設定したものなので、達成してもらわねばなりません。達成することで、宅建士資格と同じようにモチベーションにもつながります。目標を達成した際には、決算賞与に評価を反映することも明言していますので、やる気を高めることにもなっていると考えています。
―紙に張り出すのは、社員にとってはなかなかプレッシャーですね。なぜそのスタイルを選んだのでしょうか。
人は忘れる生き物です。自分たちで設定した目標も、日々意識していないと記憶が薄れていってしまいます。常に視界に入るように工夫しようと考えた結果、今のスタイルになりました。目標数値の張り出しは、私が社長に就任した17年から始めました。
戸数伸長への注力継続 賃貸仲介も本格始動
―今後強化していく事業はありますか。
管理戸数の伸長に加えて、賃貸仲介も本格化していきます。当社には賃貸仲介の経験者が5人おり、管理物件へのリーシングや、他社から入居付けを依頼された物件へのリーシングは始めています。22年は300件ほど入居を決めました。今後は一般媒介で他社管理の物件へのリーシングも強化していきます。
爪先まで身だしなみ欠かさず
影山社長の爪先にはネイルが輝く。3週間に1度はネイルサロンに行き、ネイルのデザインを変えつつ、爪の形を整えてもらう。
影山社長がネイルをするのはおしゃれのためではなく、身だしなみのためだ。爪の手入れをすることで清潔感を与えることができるという。「お客さんに書類を渡す時に、派手すぎて嫌悪感を与えないように気を付けなければいけない」と話す。
ネイルの色も、目立つ色は避け、ピンクなど肌になじむ色を選んでいる。
会社概要
社名:アドミニ
住所:大阪市中央区本町2-2-5 本町第2ビル4階
設立:1988年9月
資本金:2000万円
事業内容:賃貸管理、売買、駐車場管理、訪問調剤、訪問介護、エネルギー管理事業
会社メモ
1988年9月に設立。大阪府や兵庫県など関西圏を足場に、メイン事業である賃貸管理を展開する。グループ会社で訪問調剤や訪問介護、エネルギーマネージメントを行うなど、不動産事業以外での展開も見せる。
社長メモ
1月30日生まれ。アドミニの社長に就任する前は大手会計事務所に7年間在籍し、顧問先への営業および会計監査に従事していた。アドミニの社長就任後は社長としての業務の傍ら、自身もプレーヤーとして営業を続けている。好きな言葉は「自分は満ち足りているということだけを知っている」という意味の「吾唯足知」だ。
(2023年10月16日19面に掲載)