繁忙期に向けた準備を進める時期になってきた。施工期間を短縮しながら適切に原状回復工事を行うことは管理会社にとって課題の一つだ。本特集では、工期短縮や業務効率化につながる商品・サービスを紹介する。
部署間でスムーズな情報共有
一部だけ貼り替え 厚さ2mmの床材
内装材メーカーのクレスト(東京都中央区)が提供する賃貸住宅向けの床材「Reco(レコ)タイル」は、原状回復工事の工期短縮とコスト削減に寄与する商品だ。
一般的な床材の貼り替えでは、既存の床をすべて剝がしてから新しい床材を敷く必要がある。一方、Recoタイルの場合は、既存の床に重ね貼りをしてもドアなどに干渉しない2mmの厚さであるため、既存の床を取り外す必要がない。また、カッターで切断可能な塩化ビニールを採用しており、一度Recoタイルを敷いていれば、傷がついた部分のみを貼り替えることができる。
岸稔社長は「賃貸住宅では、定期的な原状回復工事の需要があることから、全6種類展開のカラーバリエーションを廃番にする予定はない。いつでも以前使用したRecoタイルと同じ色を用いて部分貼り替えができる生産体制を整えている」と語る。
Recoタイルに適した接着剤として開発したビニール床タイル用接着剤「現状回復F(フロアー)」についても、約6畳分の使い切りサイズとなる「エコパック」の提供を6月から開始。Recoタイルの販売から約3年がたち、部分貼り替えのニーズがより高まったことが背景にある。
売上や入金を管理 社内外で連携
不動産会社向け基幹システムの開発を行うワークデザイン(鳥取県米子市)が提供する「KAKUSHIN(カクシン)修繕パッケージ」は、原状回復などの修繕業務に特化したシステムだ。
修繕業務の進捗(しんちょく)状況や帳票作成、売り上げの管理を行うことができる。特徴は、施工案件の工事から請求、入金確認までの工程をリアルタイムで確認可能な点だ。これにより、管理部門や経理部門、仲介部門などの部署間での情報共有が容易になる。入金状況の確認など、属人化しやすい社内業務だけでなく、施工事業者との受発注などのやりとりも可視化する。
導入企業から特に引き合いが強いのが「レポート機能」だ。修繕業務は施工事業者とやりとりが多く発生し、複数社に分離して発注するケースも多い。そのため入金管理も複雑になる傾向がある。その点、レポート機能があれば、施工事業者ごとの入金の有無など、任意の検索条件を指定して案件のリスト化が可能だ。リストをCSVデータとして出力すれば、経理担当者はそのまま会計管理に活用でき、業務効率化につながる。
今後は導入企業からの要望を受け、オーナーへ提出する工事完了報告書の作成機能やPDFファイル出力機能を実装する予定だ。営業本部の木村真治部長は「今後もユーザーの声を基に、必要とされる機能を提供していく」と語る。
デジタルで完結 登録事業者500社
内装工事のクラウド型一元管理サービス「リモデラ」の開発・運営を手がけるREMODELA(大阪市)は、2023年9月にサービス名称や内容を変更。不動産会社には「リモデラ」、リフォーム会社などには「リモデラBIZ(ビズ)」とし、不動産会社からリフォーム業者に直接工事の依頼が可能になった。
リモデラは、2020年4月から提供されていたオンライン工事「リモデラ原状回復」をアップデートしたサービスだ。従来は同社が工事の元請けとなり、不動産会社から原状回復工事を受注。そして、スマートフォンアプリを活用して現地調査を行い、内装工職人向けのアプリ「リモデラPRO」に登録する職人とマッチングさせるサービスとして、500社以上の不動産会社で登録、利用されてきた。
リモデラには、①小規模な修繕や原状回復、リノベーション工事などの見積もりから発注、進捗状況管理、工事完了までの一元管理②工事事業者や職人とのマッチング③オンラインでの退去立ち会いの機能がある。
不動産会社は、リモデラBizに登録済みの工事事業者の検索や職種、工事料金、インボイス(適格請求書)対応の確認ができる。また、リモデラBizに登録していない取引相手の工事事業者にも利用してもらうことで、工事業務の効率化に寄与する。
12月には現地調査が不要な工事を、不動産会社からリモデラPROに登録する職人に直接発注することができるようになる予定だ。
リモデラの利用料金は、導入時が5万5000円(税込み)で、月額費用は原則無料。機能を追加するごとに利用料が発生する。
ジーク、FC事業を推進、7社加盟
立ち会いから施工まで対応
原状回復工事やリノベ事業を行うジーク(東京都中野区)は、原状回復工事のフランチャイズチェーン(FC)を展開している。10月末時点で7社が加盟しており、東京都を中心に埼玉県や神奈川県などの地域でサービスを提供する。
サービス名は「りの兵衛」。FC店は管理会社から依頼を受け、退去立ち会いや見積もり提出、原状回復工事などを行う。年間で約4000件の工事を行うジークのノウハウを加盟店に提供することで工事の質を担保し、最短で当日中の見積もり提出を可能にした。
ジークは累計で5万件以上の原状回復工事の実績がある。業界の人材不足や工事の品質のばらつきを解消するためFC事業を始めた。加盟店には開業前に研修を実施。経験者であればおよそ5日間の研修で、退去立ち会いから工事後の検査まで対応することが可能となる。未経験者の加盟も受け付ける。
りの兵衛への加盟金は280万円で、月々のロイヤリティは3万円(いずれも税別)および売り上げの9%だ。加盟店は1社ごとに毎月、原状回復工事の案件をジークからの紹介で受けることができるという。
宮下真社長は「研修制度の内容の充実化を検討している。FCの質を高めることを重視しながら、加盟店の数を増やしていきたい」と語る。
(2023年11月6日8面に掲載)