建築費を抑えたローコストマンションの建築を主力とする進和建設工業(大阪府堺市)は、6月21日付で3代目社長に西田泰久氏が就任した。社長就任後には建設会社としての強みを生かし、建築を基盤とした事業の多角化を図る。西田社長のこれまでの経歴と、就任までの間に父である前社長と行ったという「合宿」や、今後の展開の詳細について取材した。
既存事業基盤に多角化推進
土地活提案に従事 企画物件で受賞も
西田社長はオーナーへの土地活用の提案に従事した経験を基に、不動産事業への展開を推進する。
同社は、建築費を抑えた賃貸住宅「ローコストマンション」を主力商品とし、年間18〜20棟を受注している。商圏は大阪府で2023年度の売上高は33億円。
進和建設工業の主力商品であるローコストマンション
21日に社長に就いた西田社長は、大学を卒業後、新卒で分譲住宅や分譲マンションの販売会社に入社。飛び込み営業を5年間行っていた。元々進和建設工業を継ぐつもりで、不動産事業の経験を積むべく他社に入社したという。28歳で進和建設工業に転職し、以降オーナーへの建築提案に従事した。西田社長は「少しでも早く戦力になるため、入社してすぐにファイナンシャルプランナー(FP)など資格の勉強に励んだ」と振り返る。
建築の提案に必要な知識を習得する一方で、並行して新たな取り組みにも挑戦。14年にはそれまで同社になかった、入居者コミュニティーの形成を重視したリノベーション賃貸住宅を企画した。
地域貢献を意識した「K's apartment(ケーズアパートメント)」という名称のリノベ案でコンペティションに参加。8〜9社から西田社長の提案が選ばれ、大阪市ハウジングデザイン賞の特別賞を受賞した。
西田社長が企画を手がけ、受賞もしたK's apartment
同物件以外にも、それまで建築費を抑えた物件を主力商品としてきた同社の中で、デザイン性を重視したデザイナーズアパートを企画し、新たな商品の展開を行った。
119項目の経営理念 1年半かけて承継
事業承継にあたり、前社長の西田芳明氏は経営における価値観や方針などの思考の共有を重視していた。前社長の考え方が正確に受け継がれるように、西田社長と前社長、社員数名に加え外部講師を交え、「合宿」を行った。旅館に寝泊まりしマインドの共有を図ったという。
合宿は1泊2日の旅程を計7回、22年から1年半かけて実施した。経営に関する前社長の考え方が119項目にわたり記された資料をテキストとして活用する、研修のような内容だった。
西田社長は「項目ごとに独立しているのではなく、突き詰めて考えていくとつながりが見えてくる。どの項目同士がつながっているのか合宿以外の日々で考え、合宿の中で答え合わせをする、というフローだった」と話す。
すぐに正答することはできなかったというが、資料を何度も読み込み、ホワイトボードや付箋を使って内容を整理。答えを得るための過程で理解を深めていったという。
「時間をかけたことで、会社を受け継ぐのに必要な考え方はしっかりと承継したと感じている」(西田社長)
不動産事業を強化 売上高の3割目標
新しい事業の柱を作るため、西田社長は経営の多角化に乗り出す。具体的に展開していくのは大きく三つ。一つ目は土地と建物を投資家に提供するランドセット販売の開始だ。
同社のローコストマンションシリーズは建築費を抑え、提供価格を安価にしていることから、周辺相場よりも利回りを高くして提供することができるとみる。
二つ目は不動産小口化事業への参入だ。不動産特定共同事業法(不特法)に基づき、同社が建築した賃貸住宅を対象に、任意組合型で展開していく予定。相続税対策にもなる商品であるため、地主オーナーからのニーズをねらう。
三つ目は、オーナーへのコンサルティング事業の強化だ。建築後のアフターフォローとして、オーナーの資産運用について助言するコンサルティングを行ってきた。それを、今後は「プライベート資産適正化サービス」というサービス名でパッケージ化し、より内容を深めた事業計画を提案していく。オーナーの一人一人と面談し、そのオーナーの個性に合わせた課題解決を提言するという。
「既存事業を応用し、不動産事業を強化することで経営の盤石化を目指す。足元で24年度の売り上げは39億円を見込んでいる。26年度までに、不動産事業で売上高のうち3割を占めるような比率にしていくことが目標」(西田社長)
(國吉)
(2024年6月24日24面に掲載)