分譲マンション開発などを行うグローベルス(東京都品川区)はTOKYO PRO Market(トウキョウプロマーケット以下、TPM)に上場。総合不動産会社としての成長を目指す。
知名度向上で成長へ地歩固め
再編で業容拡大
「上場の理由の一つは総合不動産会社としてのブランディング。強みであり、市場で差別化ができるコンパクトマンションでステークホルダーに訴求していきたい」。グローベルスの藤田賢一社長はこう語る。
6月20日にTPMへの上場を果たした同社は、企業再編を経て、事業の幅を広げてきた。2005年8月に不動産事業に参入。中古住宅の販売を手がけるようになった中、10年にはM&A(合併・買収)で新築の一戸建て分譲へと事業を拡大。その後、土地の分譲や収益ビルの販売なども手がけるようになった。
13年には、アミューズメント施設運営会社の子会社となり、商業施設の建築のノウハウも培った。20年に分譲マンションを行うプロスペクトの子会社になった後、21年4月にはプロスペクトの分譲マンション事業の移管を受け、開発事業を本格化した。23年には親会社ミライノベート(旧プロスペクト)の吸収合併に伴い、Jトラストの完全子会社となった。
藤田社長は「東京証券取引所への上場を見据えたとき、当社の弱点は『知られていないこと』。そのためのワンステップがTPM上場だった。20年10月にグローベルスへ社名を変えたが、当社が何をしている会社なのか、いま一度、社会に認知されていくことが重要だと考えた」と話す。
6棟、完工前に完売
直近の3年で業績は順調に伸びている。24年3月期の売上高は71億9673万円と前期比19.1%の増収。経常利益は同88.6%増の6億3782万円となった。25年3月期は売上75億6600万円を計画する。
業績伸長の要因で、特に大きかったのは人員の充実とそれに伴う業容の拡大だ。21年4月からプロスペクトのマンション担当の25人と従来の従業員が合流し、約50人体制になった。用地情報がマンション、戸建てそれぞれで幅広く拾えるようになったことで、売り上げ、利益共に伸びてきた。
売り上げの5割を占めるマンション開発事業においては、駅近のコンパクトマンションに力を入れる。1棟20〜30戸規模で駅から徒歩5分圏内に物件を企画。専有面積30〜50㎡のマンションの売れ行きが好調だという。直近の3年間で、6棟連続完工前に完売。特に、専有面積30㎡台で販売価格4000万円台のマンションに伸びしろを見いだす。単身女性やシニア層など、幅広い需要を感じている。
借地で取得額抑制
開発事業の課題は、建築費の高騰だ。そうした中でも、同社は土地の仕入れ値を抑制し、利益を確保できる物件企画を行っていく。
「借地権や地権者が複数人いるような土地を取得し、時間をかけて権利を一本化する。土地の広さが足りなかったり、整形地でなければ、周囲の土地権利者から一部取得するなどし、マンション用地に仕立てていく。手間がかかる分、競合も手を出しにくく、取得額を抑えることができる」(藤田社長)
販売のコストコントロールにも目を向ける。「マンションのモデルルームをそれぞれの完成予定地の近くに毎回設営していると費用がかさむ。アクセスのいいターミナル駅の近くに、常設のモデルルームを造り、どの物件でも見てもらえるようにしていきたい」と藤田社長は話す。
若手採用を強化
上場を機に、採用も並行して強化していく。交渉力のある人材がいるかどうかは仕入れを大きく左右する。この2年で20代の若手が10人入社した。40〜50代のベテランと若手がペアを組んで、実務の経験を積むことで、交渉ができる力をつけていく。入社後はジョブローテーションなどもし、自分のやりたい仕事を担当してもらえるようにしている。
同社の新規事業である不動産クラファンも推進。これまでは中古物件を取得し、不動産特定共同事業法に基づき、小口化して提供してきた。今後は、開発の資金を投資家から募る開発型の案件も検討する。
26年3月期に売り上げ100億円を目指す。「分譲マンション開発、一棟収益不動産販売、戸建て販売、不動産クラファンの4本柱で進めていく」(藤田社長)
(河内)
(2024年9月30日24面に掲載)