住宅設備や家電をインターネットにつなげ、生活の利便性を向上させるスマートホームサービスの導入が、賃貸住宅でも進んでいる。入居者満足度を高めて物件の差別化を図るほか、管理業務の効率化に役立つ機能も登場。スマートホームの概況と賃貸住宅向けのサービス・商品を紹介する。
家電の操作性向上管理業務効率化も
スマートホームは、IoTやAI(人工知能)の技術を活用して生活の利便性を高めた住まいのことだ。住宅設備や家電をインターネット回線につなげ、スマートフォンやタブレットなどでの操作を可能にする。
スマートホーム化によるメリットは大きく分けて三つある。
一つ目は、住宅設備や家電の操作性の向上だ。家電を起動・停止するタイミングをあらかじめ設定したり、遠隔で操作したりすることができる。帰宅のタイミングに合わせて照明やエアコンの電源を入れる、スマホを使って外出先から玄関を施解錠する、などだ。
二つ目は、簡易な見守り・ホームセキュリティーの機能を自宅に実装できることだ。室内カメラや窓の開閉センサーを設置すれば、外出先でも自室の様子を把握することができる。
三つ目は、エネルギーマネジメントができることだ。スマートメーターと連携する機器を設置することで、タブレットやスマホで電力の使用量をチェックすることができるようになる。
入居者の生活利便性が高まることから、賃貸住宅の付加価値を向上させるサービスの一つとして導入の動きが出ている。
また、スマートホームは、管理会社にとって業務効率化のメリットもある。スマートロック導入による鍵管理や入退去時の鍵交換作業の廃止、住宅設備や家電の操作に使う入居者用アプリに管理会社からの通知を送ることで、物件への掲示物の貼り付け作業を削減する、といった例がある。
物件への導入進む44%が取り組み
スマートホームは、住宅の付加価値として事業者の注目を集める。スマートホームサービスを提供するアクセルラボ(東京都新宿区)の2023年4月の調査「スマートホーム調査レポート」では、不動産事業者の44.6%が、IoT機器の物件への取り付けやスマートホーム物件の売買・賃貸などの「スマートホームへの取り組み」を行っていると回答した。
不動産運用大手のケネディクス(東京都千代田区)の戸建て賃貸「Kolet(コレット)」のように、賃貸住宅市場でもスマートホームサービスを標準で装備する商品が登場している。
スマートホームサービスを導入する際には、複数のIoT機器の設置や、それらを一括で操作できるプラットフォームが必要になる。新築物件への導入はもちろん、既築物件でも1室の導入から支援するサービス事業者も多い。スマートホームサービスの特長や導入実績を取材した。