築古公営住宅、民間が再生

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管理・仲介業|2025年01月31日

子育て世帯狙い、1カ月で成約

 国土交通省の調査によると2021年末に公営住宅の72%が築30年を過ぎ、物件の老朽化や空室が課題となっている。地方自治体によっては、売却や民間へ経営を委託する動きが出てきた。民間企業の手で再生されることにより内覧会で満室になるといった効果も出ている。

人口流出へ一手 内覧会で申し込み

 京都市を中心に約7500戸を管理するフラットエージェンシー(京都市)は、公営住宅を借り上げたうえで再生する実績を増やす。

 京都市が保有する市営住宅3棟のうち計9戸をリノベーション。橋本浩和執行役員は「家具付き居室1戸を除き、内覧会でほぼ申し込みが入り、1カ月以内に成約した」と話す。

フラットエージェンシーが再生した物件のビフォーアフター

フラットエージェンシーが再生した物件のビフォー(下)アフター。
古い設備を残し、コストを抑えつつも子育て世帯を意識したデザインでまとめ、1カ月以内に成約した

 京都市が進める「若者・子育て応援住宅」として、公募により選ばれた同社が12年の契約期間でサブリースをしている。築22~40年でRC造、間取りは2LDK、専有面積約60㎡だ。

 再生にあたっては、家具や雑貨を扱うイノブン(同)と協業。水回りの設備を交換するほか、コーキングのやり直しや清掃を徹底。アクセントクロスを用い、古い設備を残しつつ子育て世帯を意識して、ヴィンテージ調や北欧調にデザインした。工事費はフラットエージェンシーが負担して借り上げる形で、費用は12年で回収する計画だ。

 京都市では、家賃の高騰で子育て世帯の流出が課題になっている。そのため、相場より安価な住宅提供を目指し、家賃は6万4000~6万7000円で提供する。

 現在は京都市営の単身者向け住宅1棟80戸の再生を手がけている。

移住者獲得狙い 共用部で交流促す

 山梨県の旧職員住宅を取得し、子育て世帯の移住促進物件に生まれ変わらせたのが、建築資材販売・建築事業を行う七保(山梨県甲府市)と不動産事業者リ・スタイル(同)だ。

 再生した物件は4棟45戸で、築27~31年のRC造3~4階建て。人口減少対策として子育て世帯の移住を促進するための公募に、七保とリノベーションを手がけるリノベる(東京都港区)が協業して提案した企画案が採用された。

 3Kの間取りを2LDKに変更。水回りを交換し、床とクロスも貼り替えた。白基調のデザインで統一して、古びた印象を一掃。名称も「OTOWA BASE(オトワベース)」に改名した。

OTOWA BASEのコミュニティースペース

OTOWA BASEのコミュニティースペース

 45戸のうち1戸をコミュニティースペースに改装。広場やコミュニティーラウンジも設ける。シェアハウスの運営を行う絆家(千葉県流山市)がコミュニティマネージャーを常駐させ、イベントや共有スペースを通じて入居者間同士の交流を促進させる。

 家賃は7万円、共益費は1万円で、入居時に18歳未満の子供がいる家庭や、夫婦いずれかが39歳未満の世帯は共益費が無料となる。24年11月から募集を始め、4戸の申し込みと12件の問い合わせがあった(25年1月18日時点)。

 物件取得価格は4500万円。

 七保事業企画本部の中澤栄一氏は、「今回を機に山梨県と子育て世帯への住環境の整備の促進に関する協定を締結した」と述べている。

入居者がDIY 家賃1万円で募集

 吉浦ビル(福岡市)は解体前提の物件を購入し、入居者の力を借りて活用を進める。今まで平均築年数50年の物件27棟210戸で再生を行ってきた。

 再生したのは福岡県住宅供給公社(福岡市)が福岡県北九州市門司区で所有していた公営住宅だ。築73年のRC造の4階建て24戸、間取りは2Kで専有面積は約40㎡。築73年のコンクリートブロック造全10戸の物件と合わせて最低入札価格の90万円で購入。24年7月から再生を始めた。

 再生の特徴は、入居者自身にDIYで再生をしてもらうところにある。家賃1万円で3年間の定期借家契約を締結。物件の改修を入居者が行う。20代前半から70代までの県内在住者から申し込みが集まり、3カ月で1棟24戸が満室となった。

 工事の材料費は吉浦ビルから支給。月に1回はDIYワークショップを行うほか、希望者には個別でサポートする。

入居者とDIYの打ち合わせをする様子

入居者とDIYの打ち合わせをする様子

 材料費として1戸あたり50万~100万円、大規模修繕に400万~500万円がかかる見込み。現時点では同社がほかに所有する物件からの収益をあてるが、3年後には家賃を3万円に上げて、かかった費用を回収していく計画だ。

 吉浦隆紀社長は「投資が難しい人口減少エリアなので、築100年を目指して30年間保有し、最終的に利益が出ればいいと考えている」と話す。

 公営住宅の再生事例は増えつつあるようだが、地域への貢献といった意味合いが強く、大きな利益を望んでの再生ではない事例が多かった。人口減少エリアにおいて既存のストックを活用し、住まいを整備することで、顧客の流出抑制につなげることができる可能性もあるだろう。

(野中)
(2025年2月3日1面に掲載)

おすすめ記事▶『フラットエージェンシー、市営住宅5戸をリノベ』

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