大阪府守口市は、敷地面積が約1500㎡ある旧家の活用に取り組む。市民が誇れるまちを目指し、長く空き家だった旧家を地域コミュニティーを育む拠点にする計画だ。建物の企画・運営を受託したのは、不動産会社のアールプレイ。同社は大阪市で手がけた古民家活用やテナント誘致によるまち再生の実績を、守口市でも生かしている。
〝がもよん〞のノウハウ横展開
駅徒歩5分の好立地
守口市にある旧徳永家住宅は、アールプレイによって「燈森(ともり)」と愛称が付けられた。旧徳永家住宅は、21年11月に守口市が土地を購入し、所有者と建物の寄贈に関する契約を締結した。建物の所有者から「地域資源として建物を残せないか」という相談を受けたことがきっかけだった。
場所は、大阪メトロ谷町線守口駅から徒歩5分程度に位置する。江戸時代に京都と大坂を結んだ京街道(東海道五十七次)の守口宿があったところだ。敷地の間口は35m、むくりをもつ切妻造りなど、近世大坂の町家に見られる建築を残す。1992〜93年度に実施された大阪府教育委員会の有形文化財・無形文化財等総合調査において、上層商家の伝統的な家屋配置が維持されているため貴重という報告もあった。
文化財行政を担当する守口市生涯学習・スポーツ振興課の岡田光央氏は「外観や建築意匠を残しながら地域で活用し、今後は国の登録有形文化財を目指す」と話す。
もとの所有者によると、河内木綿などを取り扱う問屋だったという旧徳永家住宅。主屋は改修によってデッキを設置し、中庭から出入りがしやすくなった
保存から、集える場へ
守口市は、旧徳永家住宅を「守口市駅北側エリアリノベーション戦略」の一つに位置付け、建物の保存だけでなく、市民が誇りに思うまちづくりや、地域コミュニティー醸成のために活用する方針を定めた。守口市が公募型プロポーザルで選定した事業者は、大阪市城東区蒲生四丁目エリアで類似実績を持つアールプレイだ。同社が手がけた「がもよんにぎわいプロジェクト」は、空き家になっていた古民家を再生後、飲食店などを誘致し、同エリアのにぎわいを取り戻した。
25年3月、守口市とアールプレイは、旧徳永家住宅について10年間の定期建物賃貸借契約を締結。守口市は建物の外観、耐震補強、防水工事など躯体性能に関わる改修工事を開始した。
燈森活用のイメージ図
複合施設を企画
ガレージ部分は3月に完成、それ以外の主屋、蔵等部分を含む全体は6月に完成。引き渡し後に、アールプレイが内装整備や運営を開始した。燈森は、飲食や物販などの店舗や、オフィスなどが入る複合施設として活用が進む。三つのゾーンで構成され、テナントが入る主屋と土蔵、庭園跡に設けた貸し農園、そして、西側の道路に面したガレージショップだ。
アールプレイは、建物に入居するテナントを集め、転貸し運用を進める。25年夏からリーシングを開始。主屋の2階に守口市で幼稚園や美容院などを営む企業のオフィス、ガレージショップの1区画に地元の花屋が入居した。土蔵にクラフトビールのブルワリーが入居予定だ。テナントは現在も募集中で、独立開業を目指す人からの問い合わせも多い。燈森の運営やリーシングを担当するアールプレイの宇田知令氏は、「主屋の1階にはレストランを誘致しているところだ。ガレージショップには、カフェやバー、物販などを想定。これから一緒に燈森を盛り上げてくれる事業者を希望する」と話す。
アールプレイは、「文禄ファーム」と名付けた貸し農園36区画も整備した。月額5500円(税込み)で利用者を募集すると、9割が地域住民の応募で埋まった。25年10月に「畑開き」のイベントを開催すると、1日に160人が訪れた。このイベントの来場をきっかけに、燈森の魅力に触れた事業者などから、店舗の賃借に関する問い合わせがあった。
敷地内に整備された貸し農園、文禄ファーム
さらに、燈森での第二弾イベントを25年12月に開催。ファミリー向けのクリスマスイベントだ。主催したのは、マルシェなどのイベント事業を営む「ma&my market(マミーマーケット)」で、畑開きのイベントで燈森を知ったという。イベントには、手作りの雑貨やスイーツなどを販売する30店が出店。近隣のファミリーが子どもを連れて訪れた。「多くの親子に来場してもらい、手応えを感じた。イベントを通して、テナント誘致や施設運営の方向性も見えてきた」(宇田氏)
文化的価値のある建物は資料館などに活用されることが多い。だが、建物の維持保存だけでなく、魅力ある地域づくりに活用することもできる。地域住民が訪れて交流し、コミュニティーを育んでいくには、施設のにぎわいを継続していくことが鍵になる。その土台となるのは、来場者と各テナントの売り上げを伸ばすことだろう。これは、アールプレイが、がもよんにぎわいプロジェクトで取り組んできたことでもある。
「アールプレイには、その知見とパワーで旧徳永家住宅の活用事業に取り組んでもらっている。地域への愛着を育み、新たな市内の回遊拠点になることも期待している」(岡田氏)
アールプレイ
宇田知令氏
(2026年3月9日9面に掲載)





