売買など案件獲得に結実
沖縄県内で1万6000戸を管理する中部興産(沖縄市)は、相続支援事業を強化している。オーナー向けに開催する相続支援セミナーへの動員数が、2019年から24年12月末までで累計1000人を突破。24年単年では320人が参加した。
新垣貴雪社長は「セミナー参加者1000人のうち、売買や買い取り再販、保険契約などの案件につながったのは69件。特に、相続支援の強化を開始した22年からの2年間で見ると、案件獲得率は14%に上った」と話す。
22年は、新垣社長がトップに就任したタイミングだった。以前から実施していた相続支援セミナーをリニューアルし、オーナーとの関係構築に注力した。
新垣社長は「これまでは、通常の市場の案件を追う売買が多かった。水ものと言われる売買を水ものにしない。そのためには、案件を受託する前に存在するオーナーの困りごとを解決する必要があった。手段の一つとして、相続支援セミナーの開催を強化している」と振り返る。
年13回のオーナー向けセミナーを実施している。遺言書の基礎知識から相続発生後の対策までなどを全6回のシリーズで提供。そのほか、相続対策に有効な税務・保険、空き家管理などを含めた個別テーマのセミナーを対面やオンラインで開催する。
ホームページや新聞広告、地元局のラジオ放送などで告知。管理を受託しているオーナー以外にも周知を図った。累計の参加オーナーのうち、新規オーナーが約半数を占めるという。
講師は、上級相続支援コンサルタントの資格を有する社員2人のほか、同社の顧問税理士といった外部講師が担う。オーナーからの相談対応は、売買斡旋部の6人のほか、相続支援コンサルタントの資格を保有する社員3人が行う。
「獲得した案件の中でも、遺言書作成のサポートに入ることができたのはここ数年の成果。25年以降は、受託した相談への対応の質を高めるフェーズに入る」(新垣社長)
そのために必要な人材育成を目的に、資格を取得した社員への手当の増額も実施。同手当は、拡充を継続していく計画だ。新垣社長は「相続支援の先に目指すのは、全社的にオーナーの困り事を解決できる参謀のような存在」と語った。
(2025年2月24日2面に掲載)