ウェブでの部屋探しが主流となっている現在、物件写真の重要度は増す。BoxBrownie.com(ボックスブラウニードットコム:東京都千代田区)は、世界120カ国で写真の補正や加工、CGパースの制作サービスを提供する。
補正や家具配置 利用登録20万社
「当社は『不動産のビジュアルマーケティング』の普及を掲げ、世界で20万社の利用登録者にサービスを提供しています。利用企業は賃貸管理会社やデベロッパー、ハウスメーカーなどが中心で、日本国内の利用登録者は約1000社です」(上野志帆社長)
顧客が同社のウェブサイト経由で写真を送ると、同社が加工・修整を施してデータを納品する。加工・修整のメニューは20種類以上。明るさ・コントラストの調整や被写体の角度の補正を行う「画像補正」、空室写真に家具画像を配置する「バーチャルステージング」などが人気のメニューだ。手書きの間取り図をデジタルデータにしたり、3D化したりする「間取り図の明瞭化」といったメニューもある。2024年からは、BoxBrownie.comが審査したフォトグラファーが現地に行って撮影を行い、48時間以内に20枚の写真を納品する「写真撮影サービス」も開始している。対応エリアは日本全国だ。
編集者2000人規模 大型案件にも対応
同社のサービスの特長は、素早い納品と安価な価格設定、1枚からでも注文できる仕組みにある。例えば画像補正であれば、納期は注文から24時間以内で、価格は写真1枚につき250円だ。バーチャルステージングも納期は48時間以内、価格は1枚3800円(いずれも税込み)となっている。
「当社と同様のサービスを提供している会社は、写真加工料のほかに月額利用料が必要だったり、ボリュームディスカウントを行ったりしている場合が多いです。それに対して当社は、注文が画像補正1枚でも250円で対応します。システム利用料や月額利用料も不要なので、必要なときに必要なだけサービスを利用していただくことができるのです」(上野社長)
納期や価格を抑えられる理由は、世界で事業を展開している点にある。同社は14年に、オーストラリアでシステムエンジニアのメル・マイヤーズ氏と写真家のブラッド・フィリッポーニ氏が共同で創業しており、オーストラリアにグローバル本部、アメリカ・日本に現地法人を持つ。25年1月時点で写真の修整・加工に携わる編集者は世界で約2000人、顧客の要望を編集者に伝えるサポートスタッフは200人ほど在籍している。
「世界中にいる編集者と受発注システムをグループで共有できるのが、当社の最大の強みです。もし日本だけで事業を展開していたら、この価格設定だとシステムの維持費用を賄うこともできないでしょう。編集者が多いため、大規模なオーダーにもスムーズに対応することができます」(上野社長)
画像補正の加工事例
体制整った6年目 大手の利用も拡大
上野社長は幼少期をアメリカで過ごした後、日本の大学に進学。大学では建築学を学んだ。卒業後は野村不動産(東京都新宿区)に入社し、投資家向けのアセットマネジメント業務を担当している。その後、BoxBrownie.comが日本事業を立ち上げようとしていることを知り、自ら本部に問い合わせて事業責任者に立候補。21年に同社の日本事業責任者に就任した。
22年には、日本の取引先への対応強化と信用度向上のために日本法人を設立。日本でのサービス開始当初は、画像加工事業者やポータルサイトからの注文に応える下請けの仕事が多かったが、23年ごろからは不動産会社やデベロッパーとの直の取引も拡大してきている。
25年は不動産会社向けの営業を強化していく。春からは、売買仲介や賃貸管理・仲介を手がける大手不動産会社が、BoxBrownie.comのサービスを全事業所で導入することが決まっているという。
「トライアル期間を経て当社のサービスを十分知ってから契約してもらえるケースが多くなってきました。日本で当社の知名度を高めて、オーストラリアのグローバル本部の売上高を抜くことが目標です」(上野社長)
BoxBrownie.com
東京都千代田区
上野志帆社長(39)
(2025年3月10日20面に掲載)