建築事業をメインとする岡庭建設(東京都西東京市)は高い省エネルギー性能と耐震性能を備えた賃貸住宅を建築。98%という高い入居率からオーナーに支持されている。今後は、既存住宅においても断熱性を高めるリフォームを行うことで、家賃や入居率の向上につなげていく計画だ。
建築メイン、補助金も活用
高い断熱・耐震性能 10年の長期入居も
岡庭建設は実需向け住宅建築で培ってきたノウハウを活用。断熱性能が高い賃貸住宅を建築してきた。
商圏は西東京市を中心に同社から車で90分圏内。年間に実需向け住宅を20棟、賃貸住宅を2棟建築する。
賃貸住宅は木造で2〜4階建て、1棟10戸以内の集合住宅が多く、専有面積40㎡前後の物件が半数以上を占める。
同社が建築する賃貸住宅は、断熱・耐震性能が高い点が特徴だ。建築物省エネルギー性能表示制度「BELS(ベルス)」を取得するほか、断熱等級6や耐震等級3を満たす。ZEH(ゼロ・エネルギー・ハウス)よりもさらに厳しい省エネ性能と断熱性が求められる東京ゼロエミ住宅の建築でも累計6棟の実績を持つ。
東京ゼロエミ住宅においては補助金を活用する。中位水準である省エネ標準を35%以上削減した「水準B」(24年10月以降)をクリアすることで1戸あたり130万円の補助金を利用できるという。池田浩和専務は「補助金の利用で建築費用を抑えつつ高性能な賃貸住宅を建築することが可能」とコメントする。
高性能賃貸住宅の建築は2000年ごろ開始。累計約60棟300戸を建築してきた。
大工の社員化推進 建築技術が強み
同社の強みは社員大工を多く抱える建築技術の品質にある。
08年から大工の社員化を進め、社員の4分の1を占める10人が大工だ。そのため、職人の技術が必要な施工を賃貸住宅にも施すことができる。
例えば、同社の賃貸住宅の外観には注文住宅で需要が高いガルバリウム鋼板を採用することが多い。この建材は断熱・耐震性能が高く、耐用年数が長いため住宅性能を上げることができる。一方で寸法に合わせて成形する必要がある。こうした建材を賃貸住宅で使用することができるのも、社員大工が多いためだ。
「木製の塀や国産材を利用した内装など、大工がいるからこそ注文住宅仕様のデザインが賃貸住宅でも応用可能」と池田専務は話す。
建築費用は1棟で8000万〜1億円。周辺相場から数千円高く家賃を設定しても、デザインと住宅性能の高さが支持され、入居者を獲得。入居率は約98%を維持する。
賃貸住宅の入居率の高さや、実際の入居者からの評判が口コミとして広がり、地主から建築を受注する。
同物件の内観。木材が豊富に使われている(岡庭建設提供)
リノベ事業に注力 部分的に断熱工事
賃貸住宅のリノベーション事業にも力を入れる。24年から開始し、3月21日時点で2戸で実施した。
物件の空室に困っているオーナーからの相談が同社に多く寄せられていたのがきっかけだ。リノベ事業への参入を考え、自社で所有する半年ほど空室だった賃貸物件の内装リノベを実施した。
築37年ほどのワンルームで、クロスを貼り替えたり、メンテナンス性を考え、クッションフロアだった床を無垢材に似たフローリングに張り替えたりした。費用は1戸あたり100万円弱で、このリノベ後に成約した。
現在のニーズを測るべく3点ユニットバスを風呂トイレ別にするなどのリノベのほか、賃貸断熱改修を見据えた検討を始めている。窓や天井、一部居室に部分的に断熱などの性能向上工事を実施する計画だ。
物件の規模にもよるが、樹脂サッシの内窓を2カ所程度で施工するのであれば1戸あたり50万円以下で可能。ワンルームの壁や天井への断熱工事であれば解体費などは別で1戸あたり50万円超で施工できると見込む。
「省エネ断熱住宅自体が社会に浸透してきている。入居者ニーズが変わりつつある」(池田専務)
岡庭不動産
東京都西東京市
池田浩和専務(57)
(野中)
(2025年4月7日20面に掲載)