収益不動産の開発・建築・再生・管理を行うアーキテクト・ディベロッパー(以下、ADI:東京都中央区)は、木本啓紀CEOの下、「利益」重視の経営体制を構築してきた。経常利益は2年で3倍の35億円超をたたき出す。付加価値を生み出すために、自ら考える人材の育成とデータ活用を推進する。
経常35億円超、2年で3倍 管理 戸あたり収益性に焦点
売上619億円に拡大 4万6000戸を受託
ADIは、いたずらな成長路線ではなく、事業に価値を付け利益を生み出す経営を実践。2024年6月期の売り上げは618億9600万円。期を変更する前の23年3月期比で29%の増収。経常利益は、35億2900万円で同310%。3倍超の増益とした。管理戸数は4万6173戸。3年強で5249戸の純増だ(24年6月末時点)。
木本CEOは「CEOに就任して3年経ち、一つの区切りだと考えている。この3年はプロパティマネジメント(以下、PM)の収益性を磨いていくことにフォーカスしてやってきた」と話す。
「イールドマネジメント」、賃貸管理でいうところの1戸あたりの収益最大化を大事にしてきた。
「空室が埋まっているか、いないかだけでなく、もっと細かく見ていく必要があると考えた。稼働率100%という上限がある中、在庫を短期間で増減できないのが不動産業の大きな特徴。空室は嫌だが、現在よりも高単価で借りたい顧客を逃すのも機会損失になる。そのバランスをとるためには、データを見ていくしかない」。マーケットのデータと同社で持っているデータを分析。ギリギリで100%稼働する家賃の設定をしてきた。併せて提携する賃貸仲介会社に、申し込みから入居開始までの期間を短縮できるよう、協力してもらってきたという。
値付け設定で1戸あたりの単価を高め、入居率も平均98%を維持することで、PMの収益力が高まってきた。PM事業の粗利益率は、木本CEOがトップに就任する前の21年3月期に14%だったのが、24年6月期には19%へ向上した。
管理戸数は3年で13%ほど増えたが、事業に従事する人員数はほぼ同じだという。オペレーションの改善、DX(デジタルトランスフォーメ―ション)化により、従業員の給料を増やしながら、利益を生み出す。