賃貸住宅の建築を行うナビック(兵庫県西宮市)は、戸建て賃貸住宅を主力商品に、売上高約19億円にまで成長した。3代目である森川晴一朗社長の下、業績拡大と組織の再構築に取り組んでいる。
新体制下で組織再構築
年10棟超を受注
ナビックは3代目社長の森川社長体制下で戸建て賃貸「Navicube(ナビキューブ)」の建築を大きく伸ばす。地主に土地活用で提案し、建築後は管理の受託まで行う。
2024年8月期で18億9200万円。前期比1億6600万円伸ばした。
売上高のうち、戸建て賃貸の建築請負事業は9億円。商圏は阪神間としている。
戸建て賃貸の年間の平均建築棟数は10棟前後〜30棟。25年2月末時点で管理戸数は約500戸だ。
森川社長は「『自分たちの建築物は最後まで責任をとる』ことを重視している。そのため、建築後、当社で管理を受託しなかった場合でもオーナーから物件の不具合に関する連絡があれば修繕を行う。それにより、オーナーからの評価を得られリピート受注に至っている」と話す。建築後のリノベーションや建て替えの依頼にもつながっている。
Navicubeでは、建物面積80㎡以上の戸建てを企画する。間取りは2LDK〜3LDKで、家賃は15万円ほどだ。
入居者ターゲットは、30〜40代のファミリー世帯。特に、大手企業の勤務者で、家賃補助が支給されることを想定している。
実際の入居者も、ターゲットと同じ層が多い。社宅として法人が借り上げる法人契約が85%、個人契約が15%だ。管理物件の入居率は98%。
受注しやすいポイントは二つあるという。一つ目は、手狭な土地でも建築が可能な点だ。Navicubeは、敷地面積が約100㎡以上であれば建築できる。集合住宅は複数戸であることで、必要な建築面積が戸建て賃貸よりも大きくなる。戸建て賃貸は、集合住宅を建てるには小さい土地を持つ地主が収益不動産を所有できる手段となる。
二つ目は、建築費が少額で済む点。阪神間エリアの賃貸マンションやアパートの場合は、RC造の1LDKの場合で1戸あたり1500万円の建築費がかかる。2LDK〜3LDKであれば1戸あたり2000万円。
それに対し、同社の戸建て賃貸の建築費は1棟あたり1600万円前後。平均表面利回りは、土地代を除き10%を確保する。
建築費を抑制できるだけでなく、壁越しの騒音トラブルを防げるなどの利点から、集合住宅より家賃を高めに設定しても入居者を獲得できるという。特に、育児における騒音で近隣住民に迷惑をかけたくない子育て世代と相性が良い。
こうしたメリットにより地主からの受注を獲得。25年8月期に入ってから、一度に4棟や6棟、10棟といった、複数棟を受注することもあった。
同社は木造の注文住宅建築を祖業とするが、大型物件を扱えるよう2代目社長がロードサイド店舗建築を手がけていた。その時の地主からマンションの建築を依頼されたことから賃貸物件の建築に参入した。その後、より小さい土地でも建築が可能な戸建て賃貸事業を07年に開始した。
オーナーからの需要に応える形で、柔軟に建築する幅を広げ、顧客の信頼を獲得していった。
事業ごとの利益重視
23年に森川社長がトップに就任してから着手したのが組織の再編だ。
森川社長は11年にナビックに入社。現場監督として職人や従業員たちと積極的にコミュニケーションを取り、円滑な進行管理に注力した。社内でも常に従業員たちの中心にいる存在だったという。実績が認められ、16年には常務に就任。19年に専務となり、23年に3代目社長に就いた。
取締役を執行役員として、各事業部の責任者に任命。各事業の利益の伸長に努めている。
それぞれの事業で経営の目線を大事にしてもらえるように、各責任者が売り上げなどの事業計画を立てるようにした。「1%でも利益率が落ちれば、売上高19億円からいえば1900万円の損失が出たということ。金銭の問題ではなく、その結果に至るまでに甘さはなかったのかなどを責任者と議論し合う」
社内体制の強化を図り、今後は安定的に売上高30億円を確保できるように成長していきたいという。25年8月期の売上高は、28億円となる予定だ。
ナビック
兵庫県西宮市
森川 晴一朗 社長(36)
(國吉)
(2025年4月14日20面に掲載)