2020年に売買仲介業を開始したベンチャー、I-House(アイハウス・東京都港区)。後発にもかかわらず、売買仲介と買取再販事業で2024年3月期には売上高5億6900万円を計上した成長企業だ。好立地物件に特化した商圏設定や、ハイグレード中古マンションを紹介する自社メディア「mitaina(ミタイナ)」の運営が特徴だ。
都心の高級中古マンションに特化
商圏で差別化
同社は不動産仲介事業のスタートからまだ4年と短く、社員数も10名ほどだが、2024年3月期の売上高は5億6900万円、営業利益で6200万円を計上する成長企業だ。なお、売り上げ、利益ともに買取再販事業を含む。
特徴は都心の高級中古マンションの売買や買取再販に特化していることだ。具体的な商圏は東京の港区、千代田区、渋谷区、中央区、新宿区、文京区がメイン。そのため、前期の売買仲介の平均成約単価は1億4800万円だった。なお、顧客の平均年収は2500万円から3000万円。
石黒雅規社長は「今期は8億円の物件の取引を筆頭に、2〜3億円台の仲介も順調です」と語る。なお、今期の仲介の平均成約単価は2億4500万円となっている。
驚くような高額物件の仲介に成功しているが、石黒社長は「当初は営業マンがいなかったので、会社がある港区にエリアに絞って、一人ひとりの顧客にしっかりと向き合うことを大切に考えてきたことでうまくいき始めた」と話す。
月10万訪れる不動産サイト「ミタイナ」で集客
社内に編集部員あり
高級物件を仲介するために3つの工夫がある。1つ目は売買仲介する物件を、一般的な不動産ポータルサイトよりも詳細に丁寧に紹介する自社メディア「mitaina(ミタイナ)」の運営だ。
特徴はハイグレードな中古マンションのみに特化したサイトで、多くはリノベーション済。それらの物件を厳選し、常時200件ほど紹介する。「雑誌のようなメディア」(石黒社長)というコンセプト通り、豊富な写真数と美しいレイアウトが目を惹く、月10万人が訪れる人気サイトだ。
掲載する物件は、レインズなどで同社が厳選したものに加え、売主直々に掲載を依頼されたものも多い。不動産会社としては極めてユニークだが、社内に「編集部員」が存在する。その3名は、売りたい物件を現地取材し、写真撮影、記事の執筆、インテリアコーディネートやリノベーションのモデルCG制作まで手掛ける。一般的なポータルサイトでは20枚弱しか写真を掲載できないように制限がかかっているものも多いが、ミタイナでは50枚もの写真を掲載するのが普通。
2つ目の工夫が、インスタグラムなどのSNSを活用した集客だ。なかでも、高級マンションの室内を短時間で紹介するショート動画「ルームツアー」が好評。1億8980万円の物件の動画は、再生回数が30万回を超え、問い合わせも20件近くきたという。インスタのフォロワーは4.6万で毎月増加している。「世界中に配信されるためルームツアーを見た海外の富裕層から、帰国した際に内見したいといった問い合わせが増えています」(石黒社長)