第一ハウジング、DXと対話文化の両立で

第一ハウジング

インタビュー|2026年05月22日

 神奈川県川崎市を中心に賃貸管理を行う第一ハウジングの2代目・加藤雄志社長は、温故知新の精神を重視し、さらなる成長に意欲を示す。加藤社長は、トップ就任前からDX化による業務生産性の向上を推進。先代から引き継ぐ対面コミュニケーションの文化と地域に密着した取り組みを継続しつつ、入居者、オーナー、社員の満足度を高め地域ナンバーワンを目指す。

神奈川・川崎で管理2234戸、入居率98%

先手経営で差別化 入居者と対面交流

 「DX化を推進しつつ、先代が作り上げた地域密着型の管理会社としての強みを保つため、対面コミュニケーションは残していきたい」と語る加藤社長は、2024年11月、設立30周年の節目で2代目代表取締役に就任した。第一ハウジングは川崎市を中心に管理事業を展開し、管理戸数は22年の1650戸から5年で2234戸に伸ばした。管理戸数は年々伸長している。

 売り上げに占める事業構成比は、管理事業が25%、リフォーム事業が25%、賃貸仲介事業が25%、売買・建築紹介が25%となる。従業員数は23人(パート含む)。そのうち管理には6人が携わる。

管理戸数推移

 同社の管理における最大の特徴は、高い入居率だ。19年以降、平均入居率が97%を下回ったことがないという。これを維持する取り組みの一つが、更新時に必ず入居者に来店してもらう対面コミュニケーションを残していることにある。昨今、多くの管理会社が非対面での更新手続きを行う中で、同社はあえて対面での体制を維持する。

 加藤社長は「今まで培ってきた地域住民との関係性と、会社の独自性を維持するため、顔の見えるコミュニケーションを大切にしている」と話す。

 対面にこだわる狙いは、コミュニケーションの確保以外にもある。入居者からの細かな不満や困りごと、設備の劣化を早期に吸い上げる場としても機能させている。

 「設備が壊れてから初めて入居者とコミュニケーションを取ると、管理会社に対してネガティブな状態であることが多い。更新時に困りごとがないかをヒアリングし、故障の電話がクレームに発展することを抑制している」(加藤社長)。

  クレームになる前にしっかりと先手のコミュニケーションを取ることにより、同社の管理物件における平均入居年数は、単身者で4〜5年、ファミリーでは6〜8年という期間を維持している。

 更新時に現場で吸い上げた入居者ニーズは、オーナーへの修繕提案にも生かす。テレビモニター付きインターホンや温水洗浄便座の設置など、数万円台から実施可能な設備交換を、オーナーの家賃収入が安定している状態で提案することができる。結果的に、オーナーの収益最大化にも直結していると同社はみる。

 「入居者からのリクエストにより設備を交換する際は、工事の日程調整がスムーズにできる。さらに設備がトレンドに追いついていないことを理由に成約が決まらない事態を防ぎ、家賃減額にならずに済むメリットもある。結果として退去も少なくなった」(加藤社長)入居率は、26年3月の繁忙期には最高で99.2%を記録。年間を通じても平均98.7%と高い水準を維持する。入居中の家賃減額リスクを回避し、計画的な修繕を提案する工夫が、入居者とオーナーの満足度向上につながっている。

営業視点で改革 人事制度を整備

 「管理戸数が増加傾向にある中、売上高に比例して人を増やしていっても生産性が高まらない。だからこそ、業務の効率化を進めてきた」

 同社は管理戸数が5年で約600戸増加した一方で、従業員数はほぼ横ばいを維持している。

 システム活用が進んでいた大手不動産会社出身の加藤社長。生産性を維持向上するために、社長就任以前から自身の経験を基に社内のDX化を推進してきた。家業に入った15年以来、現場の業務負荷軽減に取り組んできた。まずは賃貸仲介の営業フローを徹底的に整理することから始めたという。

 「私自身、不動産の営業経験が長いこともあり、まずは営業の視点から負担を軽くし、顧客も楽になる取り組みを進めた」と振り返る。

 具体的には、入社当時は手渡しで行われていた初期費用の支払いを口座振り込みに切り替え、電子申し込みやIT重要事項説明(重説)も導入。営業担当者が接客に割ける時間を増やすことを目的に、業務の効率化を進めていった。

 また複数存在していた自社のウェブサイトを一つに統一したうえで、社内の物件管理システムと連携。アナログで行っていた従業員のスケジュール管理や外部委託業務の進捗管理も、システムの導入により円滑に管理することが可能となった。

 社長就任以降は外部委託の活用も推進。物件写真の撮影や間取り図作成などの業務は社外サービスを活用する。24時間対応のコールセンターや、プロジェクト管理システム「ANDPAD」の導入により、少人数でも質の高い管理サービスを提供できる体制を整えた。

 システム導入と並行して、人事制度や福利厚生も整え、従業員の満足度向上にも取り組んでいる。

 半日休暇の導入や資格手当制度の再整備、社用車の貸し出しなど、社員の働きやすさを意識した改革を行う。

 「入社当時、私と同年代の30〜40代の社員が離職したことがあった。理由は、結婚や出産などライフステージの変化によるもの。社員が仕事とプライベートを両立できるような仕組みを取り入れていった」と語る。

 福利厚生については、東京都不動産業健康保険組合への切り替えにより、社員の手取り額向上と人間ドックの受診支援を実現。

 また以前は簡易的なシートにて行っていた人事評価制度も見直した。上司との相性が評価に直結する可能性があったことから、社長との面談に変更し、評価の公平性を改善した。

 「社員とコミュニケーションを取る意識をしている。日々川崎本店と新川崎鹿島田店に直接足を運び、社員と直接話す。常に仕事の状況を知ることが正確な評価につながる」

 社員の資格取得を応援するため、書籍購入費用の補助制度なども設け、社員が自主的にスキルを磨ける環境を構築した。

 「社員が『ここで働いて良かった』と思える環境にすることで、社員のモチベーションを高め、結果的にサービスの質が高まる。入居者やオーナーの満足度向上にもつながると思っている」

第一ハウジング川崎本店の外観

第一ハウジング川崎本店の外観

物件企画を強化 受託3000戸目指す

 加藤社長は新卒から不動産業に携わってきた。東急リバブル(東京都渋谷区)や大和不動産(さいたま市)で売買仲介・賃貸仲介営業を経験し、15年に家業である第一ハウジングへ入社。入社当時は鹿島田店の営業職として現場に立ち、その約1年後には店長を任された。10年に2代目のトップに就任した。

 今後、管理戸数3000戸への拡大を視野に入れつつ、地域に根ざした管理会社としてさらなる成長を目指す。

 「川崎市幸区と川崎区で一番になりたい。管理戸数や売り上げ規模だけでなく、入居者、オーナー、社員の満足度で一番を目指す。任せて良かった、働いて良かったと思ってもらえる状態を追求していきたい」

 管理事業を主軸としながら、既存オーナーへの適切なリフォーム提案や建築のコンサルティングは強化していく方針だ。コンサルティングでは、物件の企画から携わる。

 「オーナーが重視する項目が利回りか、安定経営かをヒアリングすることから始める。入居者ターゲットによって適切な間取りや設備が変わるため、現場のニーズを熟知する仲介の営業担当者が物件設計に対して情報提供を行っていく」と話す。建築後の管理を受託することで、管理戸数を増やしていく考えだ。継続して高い入居率を維持することで、紹介による受託も増やしていきたいという。

 今後もシステムの利便性と人の温もりを融合させ、同社はさらなる進化を続けていく。

会社データ

(下村)
(2026年5月18日20面に掲載)

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