地域金融機関と連携
一般財団法人民間都市開発推進機構(以下、民都機構:東京都江東区)と地域の金融機関が資金を出し合って組成する「マネジメント型まちづくりファンド」は、地域の建物を整備する民間のまちづくり事業に投資している。2017年の創設から8年、全国21都府県で36のファンド、総額33億5200万円が組成された。融資を受けにくい空き家のリノベーションに対する資金の出し手として、存在感を高めている。
同ファンドは、空き家などの不動産を活用する民間のまちづくり事業に投資する。対象は、地域金融機関の商圏内で、建物のリノベなど、施設の整備を通してまちづくりに取り組む事業法人に限定。同ファンドからの出資や社債取得を通じて投資が行われる。
民都機構と地域金融機関が50%ずつ出資してファンドを組成。民都機構が推進する七つの支援事業の一つで、毎年国の財源が割り当てられる。各ファンドの組成額は4000万円から3億円と幅がある。
対象事業は、指定エリアの活性化に貢献するもので、用途は物販や飲食店、宿泊施設など不動産関連の事業だ。事業者は、事業費の3分の2まで出資を受けることが可能で、公的な補助金を受けている場合は、その分が差し引かれる。投資を受けた事業者は、事業で成果を出し、地域経済に貢献しながら、返済することが求められる。
10年後、元本一括償還
ファンドの出資は、運用期間は最長10年をめどとし、10年後の元本一括償還で行われる。事業者の返済は、出資を受けてからの10年間は年に1度、利息分を支払うだけで済む。事業開始初期、キャッシュフローに少しでも余裕を持ちたい事業者にとって、使い勝手の良い仕組みとなっている。空き家・空き店舗などの築古物件は、土地を担保にしても融資が通りにくいのが現状だ。民都機構でファンドの組成に携わる、まちづくり支援部第三課の増田佳大次長は「一定のエリア内で集中的に投資することにより、エリア全体の価値を高めることを目的としている」と話す。
空き店舗の改修に
民都機構と共にファンドを組成する金融機関は、信用金庫が全体の8割を占める。支援対象となる事業は、古民家や空き家などの改修が大半だ(一部新築を含む)。地域金融機関が通常の融資で対応が難しい、例えば、担保の取得が困難な案件も検討することができるため、幅広い地域経済の活性化に取り組むきっかけとなる。
今までに組成された36のファンドのうち、35は投資先の選定やレポーティングなどを、民都機構と金融機関が合意の下で行う。金融機関は、ファンドの投資先に対して、通常の融資をセットで実行することも多い。そのため、投資後の事業にも責任を持って寄り添う。25年3月末までに全国で74件の案件に投資が行われている。
きのくに信用金庫(和歌山市)は民都機構との共同出資により「きのくにまちづくりファンド有限責任事業組合」を、20年に4000万円で組成した。きのくに信用金庫によれば、投資対象となったのは、リノベにより空き店舗を整備、運営する事業者で、25年3月末までに3案件、合計2700万円の投資が実行された。
(2025年7月28日24面に掲載)




