出資元は、信金と民都機構

【連載】空き家で稼ぐ 第10回

管理・仲介業|2025年06月11日

 和歌山県を主な営業エリアとする、きのくに信用金庫(和歌山市)は、一般財団法人民間都市開発推進機構(以下、民都機構:東京都江東区)と共同で出資し、マネジメント型まちづくりファンドを設立した。空き物件をリノベーションし、事業を始める地域の事業者に対し、新たな資金調達を提供している。

和歌山のまちづくりファンド

商店街の空き店舗 一棟貸しの宿に改修

 JR紀勢本線和歌山駅から徒歩2分のところにあるみその商店街は、記者が取材に入った平日の日中も、シャッターを下ろす店舗が目立っていた。その一角に、空き店舗を利用した一棟貸しの宿「美園のおやど(い)」が開業したのは、24年11月だ。2カ月後には「美園のおやど(ろ)」が続いた。2棟を運営するのは、ホテルマネジメントいとをかし(和歌山市)だ。

美園のおやど(い)の外観

和モダンなテイストの美園のおやど(い)の外観

 同社は、事業用不動産の市場やホテルの運営に知見を持つ、ユニスト・ホールディングス(大阪市)と、ホテル運営管理システムを手がけるドンケン・テクノロジーズ(台湾)が出資した合弁会社だ。ホテルマネジメントいとをかしの山口和泰社長は「和歌山駅は、関西国際空港からリムジンバスを使えば40分ほどでアクセスできる。熊野古道や高野山へ向かうインバウンド(訪日外国人)が利用しやすい好立地だ」と話す。和歌山駅周辺はビジネスホテルが多く、家族やグループで利用できる宿が少ないため、ニーズはあるという。

美園のおやど(ろ)の2階リビング

美園のおやど(ろ)の2階リビング

 24年、山口社長は商店街の空き店舗を借りて宿泊施設を運営する計画書を手に、みその商店街協同組合の代表に相談をした。紹介された中から選んだのは、大通りからアクセスしやすく、飲食店が近隣にある2店舗だ。宿は無人オペレーションで食事の提供はない。「宿泊客は商店街の飲食店を利用する。商店街という日本独特のスタイルは、特にインバウンドの関心が高い」(山口社長)

 2棟とも3階建てのビルで長屋造りだ。宿の一つはスケルトンの状態だったので、設備工事などのリノベが必要だった。資金調達のため地元の金融機関である、きのくに信用金庫へ相談に行くと、融資とあわせて、「きのくにまちづくりファンド」を案内された。審査の結果、ホテルマネジメントいとをかしは、ファンドから二つの宿に合計1400万円の出資を受けた。

 「このファンドは、10年間は元本の返済が不要で金利の返済だけで済む。開業後間もない時期は資金面で助かっている」(山口社長)

物件概要 美園のおやど(い),美園のおやど(ろ)

普通融資とセット クラファンとも併用

 一方、和歌山駅から徒歩20分、和歌山城の北側を流れる市堀川の川岸に、築およそ70年の空き店舗があった。元はうなぎ店が営まれていたが、十数年前に閉店していた。この物件を持ち主から購入してリノベし、発酵食をコンセプトにした飲食店と宿をオープンしたのが、和み(和歌山市)だ。同社は不動産コンサルティングや不動産鑑定業を行う事業者だ。きのくに信用金庫が、きのくにまちづくりファンドを組成したと聞き、23年12月、店舗の改修費用の資金として、融資と投資の両方で相談をした。

いづもやの外観

元うなぎ店の趣と店名を受け継ぎ、2024年5月にオープンした「いづもや」

 和みは、店舗の持ち主から約800万円で物件を購入し、リノベに約3000万円かかると見積もった。そこで、きのくにまちづくりファンド、同信金の融資、自己資金、そして不動産クラウドファンディング(以下、不動産クラファン)の四つから約1000万円ずつを集めた。不動産クラファンは県内初で、51人の投資家から3カ月間で1080万円を調達した。一口5万円からで、想定利回りは税引き前で3.0%、運用期間は5年だ。

 「和歌山の空き家率は高い。自らプレーヤーとして挑戦することで、まずは空き家を活用できることを多くの人に知ってもらいたい。地方の不動産クラファンは、東京や大阪のように大きなリターンは望めないが、地方で挑戦する人を増やすきっかけの一つになればと考えている」(古田高士代表取締役)

物件概要 いづもや

10年間は金利のみ 元本返済は一括

 きのくにまちづくりファンドは、きのくに信用金庫と民都機構との共同出資により、20年に設立された、きのくにまちづくりファンド有限責任事業組合が組成した。同ファンドの設立により、同信金は、地域の空き店舗を活用したまちづくり事業に対し、従来の融資に加えて新たな資金調達方法を提供できる。総額4000万円を信金と民都機構が2000万円ずつ出資した。新型コロナウイルス禍を経て、23年3月から25年3月まで、3企業に投資を実行。すべて普通融資と併せて進めた。

山下茂樹部長と西課長代理 写真

きのくに信用金庫地域支援部の(写真左から)山下茂樹部長と西課長代理

 同ファンドが投資対象とするのは、対象地域で空き店舗や古民家などをリノベにより整備運営する法人だ。出資された資金は、建物の整備に対して使用できる。事業者は、出資を受けてから10年間、金利のみを返済し、元本は10年後に一括返済する。同ファンドから出資を受ける最大のメリットは、事業が始まって間もない時期に、利子のみを返済する仕組みとなっていることだ。

 同ファンドを担当したきのくに信用金庫の地域支援部は、地域事業者への本業支援を行う。事業承継や、販路拡大に関わる相談も多い。

 「このファンドは和歌山市の都市再生計画の建て付けになっている。融資や本業支援と合わせて、投資という形で地域活性化に取り組む事業を応援できる」(地域支援部の西政也課長代理)

まちづくりファンド仕組み図

(2025年6月9日13面に掲載)

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