新型コロナウイルス下において、稼働が低迷していたシェアハウス市場が回復傾向にある。3月からの入国制限緩和を受け、特に外国人からの問い合わせが増加傾向にある。
月間反響21年8月比500件増も
シェアハウスの運営会社ら66社が加盟する、一般社団法人日本シェアハウス連盟(東京都渋谷区)は9月7日に「シェアハウス市場調査2022」の速報値を公表し、市場全体における5月以降の問い合わせが増加傾向にあると分析した。特に、入国制限が緩和された外国人入居希望者からの反響が大きいという。高橋圭一副理事長は「シェアハウス市場が最悪の状態から脱した感覚」とコメントした。
10月入学の留学生獲得
首都圏を中心に200棟4600室のシェアハウスを運営するオークハウス(東京都豊島区)の運営物件の入居率は82%(8月末時点)。コロナ下で下がった時期よりも約10%以上高まり、回復軌道にある。最高値を記録した2019年8月の93%を目指し、入居者の確保を進める。
海老原大介取締役は「3月以降の入国制限緩和を受け、留学生需要を一気に獲得した。引き続き留学生の移動が見込める10月も期待している。23年3月にはコロナ下前の水準に回復する見通しだ」と意気込む。
入居に関わる問い合わせは8月の1カ月間で約1300件。このうち外国人と日本人の比率は半々だ。21年8月の問い合わせは800件弱だったため、21年同月比で約500件増加した。高稼働期だった19年8月の2000件超えに近づいてきている。
問い合わせ1.3倍
問い合わせが微増傾向にあるとするのは、52棟966室のシェアハウスを運営するシェア180(ワンエイティ:愛知県名古屋市)だ。
同社が運営する、一部他社物件を含む集客用のウェブサイト「SHARE HOUSE 180(シェアハウスワンエイティ)」における、22年8月の反響数は、21年同月比で1.3培となった。
伊藤正樹社長は「反響数は伸びている傾向にあるが、コロナ下前の水準にまで需要が回復しているとは言えない。ウェブサイトへの掲載物件棟数は21年8月比で1.5倍になっているため、物件あたりの反響数は増えていない」と冷静に分析する。
同社の入居者属性は8割が日本人であったことから、コロナ下における外国人需要の変動について、比較的大きな影響は受けていないとした。
水回りのシェア懸念か
シェアハウスの入居者ニーズの変化をくみ取り、退去を減らそうとする動きも継続する。特に入居者の変化として、コロナ感染リスクを警戒した衛生意識の高まりをあげる運営会社が複数いた。
熊本県を中心とし一部関東エリアで計56棟377室のシェアハウスを運営するHidamari(ヒダマリ:熊本市)は、物件内の清掃管理について、コロナ下で運用ルールを変更した。
もともとは、入居者の当番制で清掃を行う運用ルールだったが、21年以降に清掃事業者を導入した。退去理由に、入居者ごとの清掃の質が一定でない点に不安を募らせる声が増えたためだ。
清掃事業者の導入は物件の規模により、毎週1回か隔週1回となる。林田直大社長は「コロナ下で、入居者の在宅時間も増えている。把握している範囲で2~3割の入居者が少なくとも週1回は在宅勤務をしている。居室内の衛生面に、より関心を持ち始めたように思う」と話す。
9月7日には、有効なワクチン接種証明書を保持しているすべての帰国者・入国者についての水際対策措置が見直され、入国制限がさらに緩和された。外国人を受け入れるシェアハウスへの好影響にも期待できるだろう。
(齋藤)
(2022年10月3日1面に掲載)