【賃貸仲介会社の経営分析】愛知と福島、IT重説実施率に地域差

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管理・仲介業|2022年03月09日

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 賃貸住宅業界にもDX(デジタルトランスフォーメーション)の波が押し寄せてくる中、仲介各社はどのように賃貸仲介業務を行っているのか。DXの長短を踏まえつつ、入居申し込み以降の業務について、4社の取り組みを紹介する。

ワンダーライフ、重説は対面が7割

仲介業務DXの効果に疑問

 年間約6100件の賃貸仲介を行うワンダーライフ(愛知県名古屋市)では、契約関連業務は紙での対応が中心だが、取引先のDXに伴って、オンラインでの業務が増えてきているという。

 愛知県内に12店舗を展開し、全社員は70人。賃貸仲介の担当者は社員66人、パート・アルバイトが2人。

 賃貸仲介事業の年間売上高は約7億円。その内訳は、仲介手数料が36%、広告料が37%、家財保険の代理店手数料が4%、家賃債務保証の代理店手数料が1%、その他が22%。

ワンダーライフ 売上高の内訳

 入居申し込みの受け付けは、紙が7割で、電子が3割。東康貴社長は電子申し込みについて「以前は一部の大手管理会社が導入しているだけだったが、電子契約の解禁に向けて導入企業が増えてきている。今後は一層増加しそうだ」と話す。実際、1年前の時点では電子が2割に満たなかったという。

 家賃債務保証会社は、日本セーフティー(東京都港区)、フォーシーズ(同)、全保連(東京都新宿区)、エルズサポート(同)、Casa(カーサ:同)、ジェイリース(大分市)の6社を利用。審査の通過見込みなどを勘案して、入居希望者ごとに使い分けている。現在はファクスでのやり取りがほとんどだが、同社では今後はオンラインでのやり取りが増えるとみている。

 重要事項説明(重説)は対面が7割で、オンラインが3割。入居申し込みから契約日までの間で実施する。重説の実施が最も多いのは、入居申込日。基本的には部屋探しユーザーごとの営業担当者が店頭にて対面でそのまま重説を行う。

 東社長は「社員の6割が宅地建物取引士(宅建士)の資格を保有しているので重説のスケジュール調整は容易。そのため、IT重説に切り替えるメリットはあまり感じられない」という。一方、人員配置の際に宅建士の保有の有無を考慮せずに済むよう、取得者を少なくとも社員の7割まで増やす方針だ。

 家財保険は、全管協少額短期保険(東京都千代田区)とChubb(チャブ)損害保険(東京都品川区)の2社の代理店となっている。現在は2社ともファクスでやり取りを行っているが、全管協少額短期保険に関しては、今繁忙期が終わったのちにオンラインへ切り替えていく予定。

 鍵の受け渡しは、入居日に店頭で行うケースがほぼ100%だ。ごみ捨てマニュアルなどの配布物を対面で渡し、入居後のフォローなどについて説明する必要があるからだ。そのため、今後も対面で行っていく方針だ。

 東社長は「賃貸仲介会社にとっては、契約関連業務のDXのメリットはあまりないと考えている。それよりも、競合他社が増えてきている中でも業績を伸ばすために、外国人対応の部門を強化していきたい」と今後の戦略について語る。

ワンダーライフ 東康貴社長の写真

ワンダーライフ
愛知県名古屋市
東康貴社長(56)

 

 

リブシティ、電子化で契約トラブル予防

録画で認識違い回避

 年間仲介件数852件(2020年度)のリブシティ(福島県郡山市)では、20年4月ごろから導入しているIT重要事項説明(IT重説)の実施率が7割に到達している。メリットは、録画機能を利用することで退去の際に「重説時に言われていない」「そんな契約をしていない」などの論争を回避するための証拠としても機能していることだ。

 全従業員数は22人。このうち、賃貸仲介部門が13人で、営業担当が10人、事務担当が3人。

リブシティ 会社情報まとめ

 賃貸仲介店舗は3店舗を構え、商圏は福島県郡山市全域と須川町を網羅する。賃貸仲介のうち、一般媒介が6割、専任媒介が4割。来店成約率は46.7%となる。

 同社は、100%紙で申し込み対応を行う。代理店となる家賃債務保証会社はエポスカード(東京都中野区)と、全保連(東京都新宿区)の2社。どちらとも、やりとりはファクスだ。

 重説と契約は同日に実施する。IT対応が7割、対面が3割。基本的にIT重説を提案。スマートフォンやパソコンを持っていない年配の顧客が対面となるケースが多い。IT重説については、20年4月ごろから、加盟しているエイブルネットワーク(東京都港区)が提供するオンラインシステム「AOS(エイブルオンラインシステム)」を活用する。

リブシティ 売上高の内訳

 同社の宅建士保有率は5割の11人。オンラインでの対応が可能になったことで、通常はバックヤード業務に従事する宅建士有資格者も、顧客対応を行い、店舗スタッフの業務負担を分散できている。

 賃貸事業部の橋詰小百合次長は「IT重説は顧客との対話を録画できるのがメリット。退去時に契約内容について『言った、言わない』でクレームとなることが、録画内容を確認して納得してもらえるので大ごとになる前に鎮火できる」と話す。特に精算費用の認識の相違など、件数としては多くはないが、クレームの対応を行うスタッフの精神的負担が軽減されたという。

 代理店となる家財保険会社は、ユーミーLA(エルエー)少額短期保険(宮城県仙台市)の1社。やりとりは紙の送付で行う。

リブシティ郡山西店の外観

リブシティ郡山西店の外観

 申し込みから契約までの所要時間は約20日間。鍵の受け渡しはほぼ100%対面で、入居日当日に店舗に立ち寄ってもらう。

 橋詰次長は「課題として、オンライン申し込みのシステム導入も検討したが、管理物件や他社物件、物件ごとにシステムがバラバラで一元化できない」と語る。システム連携の問題で、現場のIT化が一部ストップしている現状がある。

(2022年3月7日6・7面に掲載)

おすすめ記事▶『賃貸仲介会社の経営分析】愛媛アート不動産、IT重説活用で分業化』

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