LIFULL新社長インタビュー 伊東祐司氏、「挑む」第二創業期

LIFULL,リクルート

インタビュー|2024年01月02日

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LIFULL 東京都千代田区 伊東祐司社長(41)

LIFULL HOME'Sの再拡大目指す

 不動産ポータルサイト(以下、ポータル)「LIFULL HOME'S(ライフルホームズ、以下、ホームズ)」を運営するLIFULL(東京都千代田区)は、伊東祐司氏が2023年12月に代表取締役社長に就任した。創業者の井上高志会長から託され、「第二創業期」として、ホームズ事業の再拡大、海外事業の高収益化、新規事業の創出を目指す。

2023年9月期の売り上げは364億円 国内ポータルが屋台骨

 「社是の『利他主義』や経営理念は会社のアイデンティティーとして変えず、ここから100年続く会社になるために新しい事業の柱をつくっていく。大胆に挑戦する会社づくりを進めていきたい」

 12月21日にトップに就いた41歳の伊東社長は前を向く。

 LIFULLは、1997年に井上高志会長が設立。ホームズの不動産ポータル事業を中心に伸長。海外の不動産情報サイトなどのM&Aにより、商圏を世界へと拡大。設立から26年でグループ売上高364億500万円、営業利益19億5900万円に成長した(2023年9月期)。

 セグメント別売上比率は、ホームズ関連事業が63.6%、海外事業が22.9%、地方創生を目指した不動産活用などのその他事業が13.5%。国内のホームズ事業が同社の屋台骨といえる。

 伊東社長は、そのホームズ事業を伸ばした立役者の一人だ。大学卒業後、新卒でLIFULL(当時ネクスト)に入社。「会社説明会での井上社長(当時)のスピーチが印象的だった。『大企業に入社したら、5~10年の経験値は例えるならジャンボジェット機の歯車の一部。しかし、ネクストなら規模は小さいかもしれないが、3~5年でコックピットに乗れる』。その言葉が入社の後押しになった」と伊東社長は振り返る。

 入社後、ホームズの加盟店開拓をする営業部門に配属された。いきなり1人で任されたエリアは「西日本」だった。

 自分だけで1社1社を回っていたのでは開拓が進まないと考えた伊東社長は、まず大阪市でホームズを導入し成功した企業の事例を作った。その成功事例についての話が周辺の不動産会社に広がることで、オフィスにいても問い合わせが来るようになり、クライアントを一気に増やした。約10年間、担当エリアを変えながら全国各地に足を運びホームズの導入企業拡大に貢献した。

 10年にポータルの売買事業の営業マネジャーを任された。クライアントが3000社いたのが、1000社減り、苦境に陥っていた部門だった。「3年で立て直す」。自らにプレッシャーを与えるために期限を定め、不動産会社へのヒアリングなどを基に新たな料金プランを立案。離れた不動産会社を呼び戻すことに成功し、当初の言葉通り3年でポータルの売買事業をV字回復させた。

 15年には会社として最年少の32歳で執行役員に就いた。その後、新規事業としてポータルサイトでありながら家探しのコンシェルジュサービスを行う「LIFULL HOME'S 住まいの窓口」事業をスタートし、軌道に乗せた。20年12月に取締役執行役員に就任。23年12月に井上会長から社長を託された。

強い2番手必要 営業支援踏み込む

 伊東社長は「第二創業期として、会社の進化が必要。大きく三つの柱を掲げる。一つ目はホームズ事業の再成長。二つ目は海外事業の収益性向上。三つ目は当社の核となる事業として、不動産と金融に関わる新規市場向けの事業を創ること」と語る。

 一つ目のホームズ事業の再成長については、現在のリクルート(同)のポータル「SUUMO」(スーモ)一強ともいえる状態に食い込む、「強い2番手」になることだ。

 23年9月期には、費用対効果を踏まえた広告戦略により、ホームズ事業の売り上げ自体は前期比11.2%の減少だったもののセグメント利益は同6.5倍の26億4400万円をたたき出した。

 まだ、成長の余地があるとするホームズ事業においては、①加盟店舗数拡大のための営業強化②不動産会社の営業サポート、の2点に目を向ける。

 加盟店舗数拡大のために、営業の人材を採用し、地方での顧客獲得を進める。特に営業所のない仙台市、広島市、岡山市といったエリアが網羅できておらず、伸び代があるとみる。

 不動産会社の営業サポートについて、伊東社長は「不動産会社を回っていると、一番の課題は人材不足だと感じる。反響が来ても対応する人材がいないという声もある。当社が今、進めているのは、質の高い反響を不動産会社の営業担当に提供すること。テクノロジーを活用した新たなソリューションの提供を進める」と話す。

 ホームズのユーザーの閲覧履歴や属性などを踏まえ、緊急性があるのか、部屋探しへの関心が高いのか、どう接客するのがいいのかといった情報を、営業担当者に提供できるような取り組みを実験的に始めている。

 「不動産会社からのフィードバックを踏まえて、ユーザーのプロファイリングをブラッシュアップする。それにユーザーの情報がすべて入っているということになれば、その情報を基に生成AI(人工知能)の「Chat(チャット) GPT」で対応することでそのやりとりに人が介入する必要がなくなる。不動産会社の営業の効率化を支援できる」(伊東社長)

 2万7655の加盟店舗(9月末時点)を、短期的にはまず3万店舗まで増やし、その先も見据えていきたいとする。店舗あたりの単価は既存商品・サービスだけではなく、新しいテクノロジーの活用・支援を行うことで、引き上げていく狙いだ。

LIFULL HOME'S

LIFULL HOME'Sの再拡大を目指す

NFTの活用視野 投資家に体験提供

 これからの事業の核を生み出すにあたって、伊東社長が期待を寄せるのが、不動産と金融の融合した不動産投資の領域だ。23年11月には不動産NFT(非代替性トークン)事業やグループの金融事業を統括するLIFULL Financial(ライフルフィナンシャル)を設立した。NFTとは、ブロックチェーン技術を活用したデジタルの所有権証明書のこと。

 投資家が小口で投資した金額に応じて、リゾート会員権のように、シェアハウスの利用権、不動産の利用権などをNFTで発行。それを投資家同士で取引できるプラットフォームを同社が提供していく。投資家が投資した物件に実際に泊まりに行く、滞在するといった体験を行うことで、地方への投資を促し、経済の活性化につなげることもできるとみる。NFTについてはユーザーの反応や二次流通につながるかなどを半年ほどテストし、実現に向けて動き出していく。

LIFULLの本社オフィス外観

LIFULLの本社オフィス外観

(2024年1月1・8日48面に掲載予定)

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