コロナ禍の賃貸市場の影響は?エリアルポ ~三重編~

アサヒグローバルホーム,リョーケン,丸亀産業,三重県宅建協会,味の素,本田技研工業

管理・仲介業|2022年03月23日

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 新型コロナウイルス下での賃貸市況の現状を探る本企画。今回は三重県に拠点を置く不動産会社3社とオーナーに取材した。三重県は工業地帯や観光スポットなど、さまざまな側面を持つ。工業地帯では退去が減少したり、観光スポット近辺の賃貸物件には関東からの流入があるなど、恩恵を受ける場面があったようだ。

工場関係者の解約減、入居率98%に向上

アサヒグローバルホーム、退去数5割超減 改修注力で訴求

 管理戸数1750戸のアサヒグローバルホーム(三重県四日市市)では、2021年12月ごろから例年よりも退去数が少ない傾向が続いたことで、一時期に管理物件の入居率が98%と、ほぼ満室状態となった。

 同社は三重県で建設をメーン事業に、建てた賃貸物件の管理を受託するビジネスモデルをとる。管理住宅のうち、三重県に所在する物件が9割を占め、残り1割は三重県と隣接する岐阜県や愛知県に所在する。

 三重県の中でも同社が事業の足場としている四日市市は、味の素(東京都中央区)など大手企業の工場が立ち並ぶ工業地帯を有する。そのため、入居者も工場への勤務者や帯同するファミリーが多いという。賃貸管理部の小菅由貴彦マネージャーは「全国に拠点を持つ大手企業に勤める人は、転勤のリスクがあるため賃貸を選ぶ人が多い」と話す。

 同社では21年12月から22年3月上旬現在で、退去は例年の51.4%減少し、入居率は21年の同時期と比べ2%増の98%だ。特に、社会人層は例年より退去が少なく、中でも同市内の工場関係者の解約が減った。

 退去が少なくなった理由について、小菅マネージャーは「企業の転勤控えが影響しているのでは」と推測する。コロナの感染拡大予防のため、大きな距離の移動を控える動きを取っていると考えられるという。

 同社が入居者を確保できた理由については、以前より注力してきたリフォームによる管理物件の差別化により、同社への問い合わせが増えているためと感じている。同社では14年より短時間服を掛けられたるフックを部屋の随所に設けるなど、大きな費用をかけないリフォームをオーナーに提案してきた。それにより物件の差別化ができ、集客につながったと感じている。

リョーケン、コロナ影響なし 新築1Rが好評

 管理戸数150戸のリョーケン(三重県四日市市)では、の感染拡大に伴う休業や営業時間の短縮などで20年上旬にコロナで収入が減少した入居者から住居確保給付金の申請があったが、給付が下り、コロナを理由にした退去は発生していないという。

 同社は商圏を四日市都市、建設業を軸に、自社建設物件の管理を受託するビジネスモデルをとる。

 コロナの影響は、20年4月から22年現在もほぼないという。加藤睦取締役は「コロナが理由の退去も発生しなかった。一部収入が減少したことで賃料が低い住居に引っ越すことを考えた入居者もいたかもしれないが、引っ越し時に発生する初期費用などを考え、入居を続けた方が良いと判断したのでは」と推測する。

 同市は工業地帯のほか、住宅街や飲食店なども点在する活気あるエリアだ。同社が22年1月に同市内で竣工した、全16戸のワンルームマンションは約1カ月で満室となった。同市内に勤務先がある工場スタッフや、飲食店社員などの入居が多かった。「今回初めて単身者向け物件を建て、単身社会人のニーズが高いと認識した」(加藤取締役)

【四日市市の賃貸住宅市場】
人口が30万人超と県内最大の人口を誇る。工業地帯があり、工場の勤務者による賃貸需要が柱となっている。

丸亀産業、関東圏から流入 家族で住み替え

 管理戸数846戸の丸亀産業(三重県松坂市)では、管理エリアの一つである鳥羽市で、コロナで普及したテレワークの影響を感じている。所有物件に関東圏から住み替える顧客の流入が続いているためだ。

 同社のメーンの管理エリアは鳥羽、伊勢、松坂、鈴鹿の四市だ。

 19年ごろより同社が所有する賃貸物件へ、関東圏から引っ越してくる顧客が見られるようになった。頻度は年1〜2件ほどだ。22年現在もその傾向が続いており、テレワークの普及により勤務先の近くに住む必要がなくなったことが関係しているとにらむ。

 実際、関東から住み替えるのはファミリーの割合が目立つという。村井康孝取締役は「鳥羽市は日本最大級の鳥羽水族館があり、隣接する伊勢市には伊勢神宮があるなど、観光スポットの多いエリア。そのため県外からの移住者の人気が高いのだろう」と話す。

 関東から入居があるのは「ルネスマンション」という同社が展開するマンションシリーズだ。所有する分譲マンションをリノベーションし、賃貸物件としての貸し出しを19年から行っている。間取りは3LDKが多く、3LDKの家賃は7万3000〜8万3000円だ。

ルネスマンションシリーズの一室

ルネスマンションシリーズの一室

 リノベは年3〜4件ほど行い、都度入居につながっているため、年3〜4回の入居があることになる。そのうちの1〜2回が関東からの流入だ。

 同家賃で都内23区内で賃貸物件を借りるとなると、30㎡以下の物件となる。住宅コストを維持したままより広い部屋に住むことができるようになることで、地方移住の顧客にも訴求できていると踏む。

【鳥羽市の賃貸住宅市場】
人口は17万274人。市内には大型水族館があるなど、居住区というよりも観光スポットという立ち位置にある。

三重県宅建協会、派遣切りの影響で成約減

 三重県宅地建物取引業協会(三重県津市)の菅尾悟会長は、「コロナの影響により、工業地帯にある工場の多くで派遣スタッフの雇い止めがあり、賃貸需要が低下している」と話す。県内の賃貸仲介会社全体で、仲介手数料や更新料などの売り上げが2〜3割低下しているという。

 三重県内のうち、鈴鹿市、四日市市、松坂市、伊賀市に工業地帯があり、工場へ勤務する派遣スタッフが各市内の賃貸物件へ入居していた。だが、コロナが感染拡大しだした20年4月ごろから派遣の雇い止めによる退去が増えた。

 特に影響が大きいのは鈴鹿市だ。賃貸仲介売り上げが3割強減少している。鈴鹿市は本田技研工業(東京都港区)の工場があるなど、車の組み立てや整備が盛んなエリア。それらの工場に勤務する派遣スタッフが雇用止めとなり、賃貸市況に影響を及ぼしている。

 菅尾会長は「22年現在も低調が続いている」と話す。

三重県宅地建物取引業協会 菅尾悟会長の写真

三重県宅地建物取引業協会
三重県津市
菅尾悟会長(66)

 

 

外国人再雇用で需要増か

 三重大家さんの会(三重県鈴鹿市)で代表を務める仲尾正人オーナー(愛知県名古屋市)は、戸建て賃貸へのニーズが高まっていると話す。特に外国人からのニーズが高く、現在、戸建て賃貸へ入居するのはほとんどが外国人だ。コロナ下を経て集合住宅を避ける傾向が高まったことと、各企業が外国人スタッフを再雇用し始めたためではないかと仲尾オーナーは推測する。

 仲尾オーナーは三重内に24戸を所有している。そのうち戸建て賃貸は3戸だ。いずれの戸建て賃貸もファミリー向けで専用部は60㎡ほどの広さ。家賃は6万円程度だ。

 戸建て賃貸のニーズが高まり始めたのは21年11月ごろからだ。外国人の中でも特に中国人のファミリー層からの反響が多いという。

 仲尾オーナーは、外国人からの賃貸ニーズが高まった理由について再雇用で呼び戻された外国人スタッフによる賃貸需要とにらむ。特に仲尾オーナーが戸建て賃貸を所有するエリアから通勤圏内である鈴鹿市は海沿いに車の組み立て工場などが集積する工業地帯が広がる。その工業地帯の工場などに勤める外国人の入居ではないかと考える。

仲尾正人オーナーの写真

愛知県名古屋市
仲尾正人オーナー(40)

 

 

【鈴鹿市の賃貸住宅市場】
人口が19万4547人と県内のトップ3に位置する。車の整備工場などがあり、工場スタッフの賃貸需要が高い。

(2022年3月21日10面に掲載)

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