「賃貸住宅フェア2022」で27日に開催する座談会「『暮らしのサブスク』多拠点居住で空室活用」の登壇者3社の取り組みを紹介。新型コロナウイルス禍で新たな暮らし方の一つとして注目を集める「多拠点居住ビジネス」について、サービス内容や地方のオーナー・不動産会社にとって商機になるのかを伝えていく。
テレワークが利用後押し
新規会員数8倍に
3社の中で、最もスタンダードな多拠点居住サービスを展開しているのが、アドレス(東京都千代田区)だろう。
同社が提供する多拠点居住サービス「ADDress(アドレス)」では月額4万4000円で、全国の拠点に滞在できる。2019年に開始し、現在約240棟600室が利用可能。オーナーや不動産会社から借り上げた1棟4LDK以上の物件を改修し提供する。21年からは居住中の物件で使用していない部屋を貸し出すプランも開始した。
利用者の4割は20~40代の東京在住の会社員。3割が同年代のフリーランスだ。21年の新規会員数は20年比で8倍となった。
地方の空室物件の活用にもつながっており、全体の物件数のうち約4割は都市部以外の地方に所在する。オーナーからの問い合わせや地方自治体、地場不動産会社からの紹介で物件開拓を進める。
地方遊休施設を活用
LIFULL(ライフル:同)は19年から定額多拠点居住サービス「LivingAnywhere Commons(リビングエニウェアコモンズ)」を提供し、現在全国38拠点で展開する。ただし、提供するのは廃校や閉鎖した企業保養所など遊休施設を活用している点がアドレスとは異なる。
利用料金は月額2万7500円だ。利用増加率数は21年7月比で約200%増となっている。主な利用者層は20~30代のテレワーカー。
全体の物件数のうち約8割が首都圏外に所在し、すでにある拠点や利用者からの紹介で新規の拠点が決まることが多いという。
ホテルとオフィス提供
2社の多拠点居住サービスとは少し毛色の変わったサービスを提供するのがグッドルーム(東京都渋谷区)だ。
「hotelpass(ホテルパス)」では、その名の通り、全国のホテルに定額で宿泊することができる。20年6月からサービスを開始し、現在全国の約900箇所のホテルが利用可能。利用料金は月額6万9800円から。
フリーランス、会社勤めに関係なくエンジニアの利用が多い。出向やリモートワークが許可されているほか、もともとの持ち物が少ない人が多いため相性がいいのだという。
ホテルからの相談による加盟が半分を占めるほか、残り半分は既存ホテルのチェーン店といった横のつながりで加盟が増えている。
「『暮らしのサブスク』多拠点居住で空室活用」は、「賃貸住宅フェア2022」で7月27日(水)11時50分から開催する。
アドレス
東京都千代田区
佐別当隆志社長(45)
2018年多拠点居住サービスを提供するアドレスを設立。総務省、経済産業省のシェアリングエコノミーに関する委員を務める。
LIFULL
東京都千代田区
小池克典氏(38)
LIFULLの定額多拠点居住サービスの推進を通じ、地域活性、官民連携、テクノロジー開発、スタートアップ支援などを行う。
グッドルーム
東京都渋谷区
小倉弘之社長(42)
2009年にハプティック(現グッドルーム)を設立。お部屋探しサイト・アプリ「goodroom」を提供する。
(2022年7月25日24面に掲載)