【賃貸市場エリア別分析】~水戸市編~

香陵住販,LIXIL(リクシル)リアルティ,一誠商事,グロービス,M-WORK(エムワーク)

管理・仲介業|2022年09月20日

  • twitter

 賃貸市場に関わるデータや地場不動産会社への取材を基に、全国の主要都市を分析する。今回は、工業団地件数全国2位の茨城県の県庁所在地、水戸市を特集する。

コロナ下でも法人需要安定 隣接市の企業関係者取り込む

 茨城県の県央地域に位置する水戸市は、県最大の人口を誇る中核都市だ。市内を東西に横断するようにJR常磐線が通っており、隣接する市への通勤が便利であることから、法人需要も底堅い。駅南側で再開発が活発だ。首都圏の収益物件と比較し利回りが高く、地主の代替わり後、オーナーチェンジで物件を取得する投資家が増えているようだ。

水戸市の人口データ

水戸市の賃貸住宅着工数

水戸市の総住宅戸数

水戸市の人口推移グラフ

水戸市の家賃相場

水戸市の賃貸仲介の商習慣

大手メーカーの通勤顧客が下支え

 水戸市内で1万1261戸を管理する香陵住販(茨城県水戸市)によると、市内での法人需要は底堅いという。同社が管理する賃貸住宅の契約の約3割を法人が占める。

 隣接するひたちなか市には、大企業の研究所や工場などが立ち並び、その従業員用の社宅として、新型コロナウイルス下においても安定した法人契約を確保している。同社の年間仲介件数は、コロナ禍前の2020年と比較し、21年は104%、22年は105%と堅調に推移している。

 JR常磐線水戸駅は、日立製作所(東京都千代田区)の日立事業所やグループ企業が所在するひたちなか市の同線勝田駅から1駅と近い。出張が頻繁な勤務者も多く、交通利便性の高い水戸駅周辺で賃貸住宅を探す法人が多いのだという。

 一方で、近年の傾向として、同社の管理物件では賃料が全体的に1000〜2000円、下落していると説明。営業推進室の鳥居孝男氏は、「コロナ前からじわじわと賃料は下落している。景気悪化が要因ではないか」とみている。

再開発で人気続く常盤線以南エリア

 「賃貸も分譲も、新市街地であるJR常磐線以南エリアの需要が底堅い」と説明するのは、LIXIL(リクシル)リアルティ(東京都台東区)北関東統轄事業部「LIXIL不動産ショップマイルーム館」の担当者だ。マイルーム館は茨城県内で賃貸仲介9店舗(売買仲介4店舗)を構える。

 南部エリアの中でも、特にDINKSやファミリーに人気が高いのは、大きな公園や湖のある千波町や茨城県庁のある笠原町、水戸市役所のある元吉田町など。千波町は人気の小学校の学区であることや住環境の良さから、笠原町、元吉田町は利便性の高さから人気で、3エリアとも平均入居率は90%程度。

 水戸の旧市街地は水戸駅から北部エリアだった。それが1990年代以降の再開発で様変わりしてきた。90年には、JR常磐線赤塚駅南口の製粉工場が撤退し、2005年にショッピングセンターに建て替えとなった。

 1999年には茨城県庁が水戸駅北口から現在の笠原町へ移転。これに伴い次第に道路も整備され、JR常磐線以南エリアの再開発が加速した。再開発により、南部エリアで住宅の建設が進んだ背景があるという。

首都圏比で高利回り 順次建て替え進む

 市内にあるLIXILリアルティの管理物件のオーナーは地元の地主がほとんどだが、近年、投資家層の割合が高まってきた。「肌感覚で、オーナー全体のうち約1割が投資家に変化している」と話す。相続後、水戸市から離れて住む相続人が手放した物件を、投資家層が購入していることが理由だという。

 オーナーの属性が変化していることを同様に感じているのが、県内大手管理会社の一誠商事(茨城県つくば市)だ。水戸駅南支店の殿岡弘章支店長は「中古の収益物件売買の動きが活況」と話す。

 中古の売買は軽量鉄骨やRC造の賃貸住宅がメインで、利回りは8〜10%程度だ。購入希望額は3000万〜5000万円程度が目立つ。軽量鉄骨造で15〜20戸程度、5000万〜8000万円の物件はニーズが高く、市場在庫が少なくなっているという。「東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の収益物件と比較すると利回りが高いため投資家が買いにきているのではないか」(殿岡支店長)

LIXIL不動産ショップマイルーム館勝田営業所

LIXIL不動産ショップマイルーム館勝田営業所

 前出の南部エリアでは賃貸住宅の開発も活況。水戸駅周辺では、築年数の経過した物件の建て替えも進む。直近では、水戸駅南口から徒歩20分の場所に総戸数64戸の賃貸マンションと、徒歩15分の場所で30〜35戸程度の物件が3棟ほど竣工している。「近年、特にワンルームの供給が多い。人口流入が増えているわけではないため供給過剰だ」と殿岡支店長は語る。

 同社は県南地域のつくば市を主戦場に、2017年に水戸市に進出。水戸駅南支店の管轄で管理する物件は現在1300戸ほど。

M-WORK、官民連携で駅前商店街活性化

 官民連携で水戸市内の中心部の活性化を進めるのが「水戸ど真ん中再生プロジェクト」だ。ベンチャーキャピタルなどを運営するグロービス(東京都千代田区)の堀義人社長が水戸市出身であることから、同社が先導している。事業ごとに運営会社を立ち上げ、現在九つの事業を同時並行で行う。プロバスケットボ―ルチームの再建や、30年間空き地だった駅前に体育館と広場を創設するなど、活動は多岐にわたる。

 その中でも、水戸駅前の商店街に立つ築古ビルを再生したのがM-WORK(エムワーク:茨城県水戸市)だ。

 地下1階は、ポップアップストアとイベントスペースとし、1階をカフェ、2・3階をコワーキングスペースにリノベーション。屋上にはテラスを設けた。周辺も空きテナントが目立っていたが、今では近隣に5店舗ほど若者向けのショップがオープン。にぎわいの起点となっている。

リノベ費用は約1億円。築古ビルを再生し、イベントスペースとしても活用

リノベ費用は約1億円。築古ビルを再生し、イベントスペースとしても活用

 「建て替えたほうが安いと言われたが、商店街の歴史を大事にすることが街の価値向上につながると考えた」(グロービス経営大学院茨城水戸キャンパス・川崎篤之ディレクター)

(2022年9月19日7面に掲載)

おすすめ記事▶『賃貸市場エリア分析~広島市編~』

検索

アクセスランキング

  1. 省エネ性能ラベル表示、開始

    国土交通省,リクルート,アットホーム,LIFULL(ライフル),大東建託グループ,積水ハウスグループ

  2. コロンビア・ワークス、「総資産1兆円へ」開発を加速【上場インタビュー】

    コロンビア・ワークス

  3. 明和地所、創業45年 浦安市で3000戸管理【新社長インタビュー】

    明和地所

  4. パナソニック、冷凍・冷蔵品用の宅配ボックス

    パナソニック

  5. 大手不動産会社で入社式

    レオパレス21,大東建託グループ,ハウスメイトパートナーズ,APAMAN(アパマン),常口アトム,武蔵コーポレーション,TAKUTO(タクト),三好不動産

電子版のコンテンツ

サービス

発行物&メディア

  • 賃貸不動産業界の専門紙&ニュースポータル

  • 不動産所有者の経営に役立つ月刊専門誌

  • 家主と賃貸不動産業界のためのセミナー&展示会

  • 賃貸経営に役立つ商材紹介とライブインタビュー

  • 賃貸管理会社が家主に配る、コミュニケーション月刊紙

  • 賃貸不動産市場を数字で読み解く、データ&解説集

  • RSS
  • twitter

ページトッップ