原状回復工事の手間や住人同士のトラブルのリスクを恐れ、ペット飼育を不可とする賃貸物件は多い。そのため、ペットを飼えるというだけで競合物件との差別化につながり、付加価値アップの手段となり得る。ここでは、ペット飼育可賃貸で活用できる住宅設備やサービスを紹介する。
留守中もスマホで見守り
IoT設備と連携 外出先から確認
スマートフォンで住宅設備を操作できるIoTサービス「SpaceCore(スペースコア)」を提供するアクセルラボ(東京都渋谷区)は1日、新たにペット関連サービスとの機能連携を開始した。大手電機メーカーのNEC(東京都港区)が手がけるペット見守りサービス「waneco talk(ワネコトーク)」との連携である。
waneco talkは、動物病院である日本動物高度医療センターが開発した、ペットの体に取り付ける活動量計「PLUS CYCLE(プラスサイクル)」と併せて利用する。PLUS CYCLEから得た心拍数などのデータを基に、AI(人工知能)がペットの体調や状態を「LINE」上でメッセージに変換するサービスだ。今回の連携で、waneco talkのLINE画面からSpaceCoreのアプリ画面にアクセス可能になる。
SpaceCoreの活用で外出先から、住戸内に設置したIoTカメラの映像の閲覧や、エアコンや床暖房を操作して部屋の温度調整ができる。waneco talkのメッセージだけではわからない詳細なペットの状況を遠隔から確認し、快適な部屋環境を整えることが可能だ。
アクセルラボの髙橋貢ダイレクターは「留守中にペットの状態を確認し、健康管理をしたいというニーズは多い。ペット共生型住宅のソフト面を担う設備として認知を広めたい」と話す。
小型の空気清浄機 光触媒技術を応用
ワイヤハーネス(組み電線)製品の商社であるウシヤマ電機(東京都世田谷区)は、6月より光触媒技術を使った空気清浄機「fuie(フイエ)」を販売している。
ディスポーザー(台所用生ごみ粉砕機)製造大手のフロム工業(福岡県中間市)が手がけるfuieは、九州工業大学の研究チームが開発した光触媒技術を応用。フィルター部分に光触媒のコーティングを施すことで、抗菌や消臭などの効果が期待される。特徴として、一般的な空気清浄機に比べ小さく製造が可能なことから、意匠にこだわった商品ラインアップをそろえている。料金は8800円(税込み)からで、電気代は1カ月あたり3円程度で使用できる。
ウシヤマ電機は、6月に京王電鉄京王線下高井戸駅から徒歩4分の立地に、東京での販売拠点となる専門店をオープンした。同店舗で不動産会社による製品購入の実績もあり、空室物件の消臭対策として設置している事例がある。
ウシヤマ電機の牛山修取締役相談役は「消臭効果があるため、ペット飼育可賃貸に内見時から設置し、入居者に購入・利用してもらうことができると考えている。意匠性も高いことから、入居特典のプレゼントにするなど空室対策にも役立つのではないか」と賃貸市場での展開について語る。
猫が遊べる壁面棚 設置・撤去が容易
自動車部品や住宅用製品の製造を手がける中西金属工業(大阪市)は、部屋の壁に取り付ける猫用ステップのシリーズ「Catroad+(キャットロードプラス)」を製造・販売している。2018年9月から電子商取引(EC)サイトで販売を開始しており、22年11月1日時点での累計販売数は4000世帯を超える。
猫が乗れるサイズのアクリル板やハンモックを、金具で石こうボードの壁に取り付けて使用する。金具の固定はピンで行うため、工具なしで簡単に取り付けられる。ピンは細く、壁に残る穴も小さいので、ビスを使う場合に比べて取り外し後の補修も容易だ。壁に傷をつけづらい賃貸住宅でも、気兼ねなく取り付けることができる。
耐荷重は15kg以上となる。自社工場で1万回の耐久試験を行い、安全性を担保している。価格は8800円(税込み)から。
主なターゲットは1人暮らしの30代以上の女性で、購入者の約85%が女性だ。猫飼育可の新築賃貸マンションの全戸に導入した事例もある。
「大型犬」「猫」設定し物件検索
ウェブソリューションの企画・運営を行うPassage(パッセージ:神奈川県横浜市)は、2003年に開設した、ペット飼育可物件のみを掲載する不動産ポータルサイト「ペットホームウェブ」を運営している。
不動産情報サービスを提供するアットホーム(東京都大田区)やLIFULL(ライフル:東京都千代田区)のポータルサイトから、ペット飼育可物件を自動で抽出し掲載。特徴は、検索項目の一部に入居者が飼育するペットの条件を設けていることだ。大型犬、中型犬、小型犬、猫、多頭飼いの五つの項目を設定し、それぞれの飼育に適した物件を検索できる。
22年10月1日時点の掲載物件数は95万件ほど。1カ月あたりのPV(ページビュー)数は約180万PVだ。03年から提携しているアットホームのほか、21年5月からLIFULLが加わった。掲載物件数の増加に伴い、PV数も伸長した。特に新型コロナウイルスの流行以降は、猫の飼育数が増加したこともあり、猫を飼育できる物件が増えている。
今後は繁忙期に向け、サイト上のSEO(検索エンジン最適化)対策を強化し、サイトへのより多くのアクセスを狙っていく。
(2022年11月28日9面に掲載)