M&A以外の方法の見落とし
前回は、「不動産M&A(合併・買収)」の活用事例と買主側のメリットについて解説した。一方で、M&Aに関わるトラブルは、昨今メディアで取り上げられる機会も多く、不動産M&Aも同様に注意が必要だ。売主、仲介会社、買主の注意点を解説する。
■売主が注意すべきこと M&A以外の選択肢もある
老舗の食品工場を経営するAさんは、事業を引き継ぐ後継者がいないことが悩みの種でした。M&A仲介会社に相談すると、事業を継続し従業員の雇用も維持することを約束する買主を見つけることができました。
M&A仲介会社の試算を基に、株式の売却価格は2億5000万円に決まりました。Aさんとしては、従業員の雇用が守られるのであれば、十分な金額だと考えました。ただ、大きな決断を前に、ほかの人の意見も聞いてみたいと思い、当社に相談にいらっしゃいました。
われわれが注目したのは工場敷地の不動産評価額です。都市部の好立地にあるため、不動産単体で見ると7億円で十分に買い手がつくのです。ただし、食品工場の継続を前提にすると、事業が生み出す収益性から不動産価格を算出するため、株価の前提となる不動産の価格は3億円となっていました。