約200戸を管理するすまいるコンシェル(岐阜県多治見市)は、不動産投資家向けのオンラインスクール事業に注力する。生徒数は500人を突破。ユーチューブでは約9000回再生の動画もある。同社のオンライン戦略について、話を聞いた。
約9000回再生の動画も
スクールを主宰累計500人が受講
すまいるコンシェルは、業務ノウハウを生かしたオンラインスクール事業で売り上げを伸ばす。
同社は校條友紀子社長が2012年に創業し、管理・仲介・賃貸事業を手がけている。管理戸数は約200戸で、管理物件の約6割が事業用、4割が居住用となっている。自社保有は3棟で、居住用の賃貸だけでなく、店舗・事業用のビルも保有する。
不動産投資家向けに22年からオンラインスクールを主宰する。累計の生徒数は、24年10月で500人に上る。コースは初級と上級の2種類で、内訳はおおむね半分ずつ。価格は初級が9万7500円、上級が22万円(いずれも税込み)となっている。
初級コースは内容別に5章立てで計49本の動画、15点のテキストを公開。例えば、オーナーの節約術について詳しくこつを紹介する。退去後の室内で実況しながら、クリーニングすべき箇所や節約できる箇所、設備のグレードアップをすべき箇所などを一つ一つ説明している。
オンラインスクールで視聴できる動画の一部
上級コースではより専門的な内容を学ぶことが可能だ。全6章立てで計136本の動画、20点のテキストから成る。例えば、普通賃貸借契約書や、定期借家契約書の条項・契約内容の見直しについて、知識がない人でもわかりやすいように詳しく説明。校條社長が作成した契約書のひな型を例に挙げて解説を行う。
ユーチューブ活用 登録者1500人超
オンラインスクール事業のきっかけは「ユーチューブ」だった。校條社長は20年からユーチューブのチャンネルを運営している。
定期借家契約についての解説動画や、管理物件の排水管清掃の実況動画などを公開してきた。チャンネル登録者数は1月10日時点で1595人を超え、8800回以上再生されている動画もある。
「もともと自分の持っている経験や知識を伝えることが好きで、20年以上前からブログで自分の物件の運営や賃貸管理に関するノウハウを公開してきた。ユーチューブは著名人と同じ土俵でチャレンジできると感じ開始した」(校條社長)
校條社長が運営するユーチューブチャンネル
対面でのセミナー講師も務める中で受講者から「家主業について体系的に順序よく学びたい」という声も聞こえ始めた。ユーチューブも徐々に再生回数が伸び、登録者数が増えていったことで、ビジネスへの展開の可能性を模索。オンラインスクール事業を始めるに至ったという。実際に生徒のほとんどがユーチューブからの流入だ。そのほかメールマガジンも月2回送付。オンライン動画学習サイト「Udemy(ユーデミー)」にも一部の動画を無料で公開し、ファンづくりにつなげる。「いかに共感してもらえるかが重要。さらに信頼関係を築くことがオンラインスクールの加入につながる」(校條社長)
定期借家契約を推進
校條社長は定期借家契約の普及に長年取り組む。
同社の管理物件、所有物件に定期借家契約を採用する。
同社が初めて定期借家契約を導入したのは09年ごろのこと。「もともと、賃貸借契約に疑問を持っていた。迷惑行為をされても入居者を退去させるのに莫大(ばくだい)な時間がかかり、どうすればオーナーを守れるのか考えていた」という。
定期借家契約は問題のある入居者の再契約は拒むことができる。再契約型にすることで、借主の不安を防ぐことも可能だ。ユーチューブやオンラインスクールでも定期借家契約の内容について、解説を行っている。そのほか、スクールを受講するオーナーらから相談を受けた際は、エリア内で定期借家契約を採用する不動産会社を紹介することもあった。
「当社はオーナー、借主、仲介会社、管理会社の四つの立場を持っている。できるだけ公平な目線で今後も情報発信を行っていきたい」(校條社長)
(2025年1月20日20面に掲載)