賃貸仲介を年間5599件行い、1万7000戸超を賃貸管理する日本エイジェント(愛媛県松山市)は、外国人向けのポータルサイト(以下、ポータル)の運営や管理・仲介事業など、外国人関連事業に力を入れる。3月には同事業部を「wagaya Japan(ワガヤジャパン)」として法人化。さらなる事業成長を目指す。
2年で成約2倍、提携企業3倍
提携会社100社
日本エイジェントは外国人向けの不動産事業に注力してきた。商圏は松山市をはじめとした愛媛県および東名阪といった都市部だ。2025年6月期の売上高のうち、外国人関連事業が占める割合は約1割だが、昨対比で50%超伸ばす。
外国人関連事業においては、外国人の部屋探しに特化したポータルwagaya Japanを運営。外国人向けの賃貸仲介・管理、売買仲介も行う。wagaya Japanでは外国人に需要が高い東京都や大阪府、愛知県名古屋市などを中心に、賃貸住宅のみで17万3073件を掲載(7月23日時点)する。月間PV(ページビュー)数は152万、UU(ユニークユーザー)数は21万だ。
同ポータルには同社が管理する外国人入居可能な管理物件だけでなく、賃貸管理会社や、売買仲介会社、建築会社といった全国のパートナー企業が取り扱う物件も掲載する。パートナー企業数は100社弱(7月18日時点)。管理戸数1万〜3万戸程度の管理会社が多く、築古や、リーシングに苦労している空室物件が一定数ある点が特徴だという。
乃万春樹社長は「地域の1番手、2番手あたりの管理会社で、外国人入居者が増えたため、トラブル対応に困っているという相談からパートナーになることが多い」と話す。
ポータルは日本語、英語、中国語(簡体字、繁体字)、ベトナム語の5カ国語に対応する。ポータルから外国語で問い合わせが届いた際は、自動で日本語に翻訳して表示。問い合わせに対する返答も、日本語で入力した文章を自動で外国語へ翻訳する。これに加えて、同社で作成した各種多言語書類の共有、三者間通訳サービスの紹介・取り次ぎもパートナー企業には行う。
反響対応から契約前後までサポートすることで、日本人スタッフしかいない会社でも外国人仲介を行うことができる。そのほかにも、外国人顧客の来店誘導率・成約率向上につなげる対応メールのテンプレートを共有。業界全体で外国人の部屋探しを支援できるサービスを提供する。
反響は英語ページからが最も多く7割超。次点が中国語で2割、残り1割弱がベトナム語と日本語となっている。来日前の国外滞在者と国内在住者の比率は6対4。就労者が8割を占めており、残り2割が学生だ。
同ポータル全体では賃貸仲介で年間2万件超、売買仲介で2000件の反響がある。その中から自社のみで年間1700件を成約しており、そのうち9割が賃貸仲介だ。
困難に商機見出す
同社は他社との差別化を狙い、外国人向け事業を始めた。
きっかけとなったのは東京都の外国人英語教師の募集プロジェクトだった。欧米から数百人規模で来日する英語教師の居住先のあっせんを委託された事業者経由で、同社に依頼が持ち込まれた。2日の期限内で14人ほどの部屋探しを担当することになったが、外国人を受け入れてくれる管理会社やオーナーを探すのに苦労したという。
「電話をしては断られ続けた。この体験から、外国人の部屋探しがどれほど困難かを実感すると同時に、ビジネスチャンスがあるのではと考えた」と乃万社長は話す。
そこで17年に国際事業部を設立。外国人向けの賃貸仲介事業を始めた。その後、19年には外国人の部屋探し専用のポータルサイトとしてwagaya Japanを開設。自社の外国人入居可能物件だけでなく、全国のパートナー企業が仲介可能な物件を掲載できるようにした。
ポータルの立ち上げに合わせて、外国人従業員の採用も始めた。
ポータルサイトwagaya Japanのトップページ
23年から需要急増
外国人向け事業はマーケティングとパートナー企業の獲得の2軸で成長してきた。
マーケティングでは、コンサルティング会社を入れ、外国人向けに特化したSEO(検索エンジン最適化)対策を実施。日本での部屋探しに関するキーワードで検索した際にwagaya Japanが上位に表示されるようにした。
海外では、部屋探しにSNSが活用されている点を踏まえて、SNS集客にも力を入れてきた。ベトナムであれば「フェイスブック」、中国であれば「WeChat(ウィーチャット)」など、各国でよく使われているSNSに広告を出稿している。
パートナー企業は、19年から募集を開始。管理会社やオーナーによる理解を促し、外国人の受け入れとポータルへの掲載を促進することを狙う。全国の不動産会社への営業やセミナーを通じて、徐々に増やしていった。セミナーは月に2回開催。日本エイジェントの外国人仲介や管理のノウハウ、外国人を受け入れることによるメリットを伝えるなど、啓蒙(けいもう)活動に力を入れてきた。
反響の取れるポータルにすることでメリットを感じてもらい、パートナー企業を増やした。パートナー企業による掲載物件を増やすことでさらなる反響につなげ、事業を拡大していった。19年には日本エイジェント単体で年間300件の賃貸仲介があったという。
しかし、新型コロナウイルス禍により事業が伸び悩んだ。「訪日外国人(インバウンド)も途絶えたことで、国内不動産事業者による外国人を受け入れていこうという空気が一気に冷えた」と乃万社長は当時を振り返る。同社は国内ですでに居住する外国人にターゲットを絞った。これにより、コロナ禍で仲介件数を減らすことなく、微増したという。
その後、22年から日本への入国制限が緩和されたことで、今まで入国が制限されていた外国人が一気に国内に流入。23年には仲介件数は年間800件にまで増加した。外国人の部屋探しが増えたことにより、不動産事業者とオーナーからの日本エイジェントへの問い合わせも急増。需要は継続して高まっており、この2年で仲介件数は約2倍、パートナー企業は約3倍にまで伸長した。
「空室に困った地方管理会社は、外国人や高齢者の受け入れを考えるようになってきた。今後も引き続きこのニーズは続くと思う」(乃万社長)
wagaya Japanのメンバー
人材紹介業開始
25年3月にはwagaya Japanを子会社として独立させ、加速度的に成長させることを狙う。
法人化の背景には三つの狙いがある。一つ目がブランディングだ。日本エイジェントは愛媛県の会社という印象が強く、全国で事業を展開するにあたって障壁となっていた。会社として独立させることで新たなブランドの構築を図る。
二つ目は組織の変化スピードの向上だ。日本エイジェントは従業員数が200人規模の会社にまで成長。関与する人数が増えることで、事業の柔軟性に欠ける点があった。そこで子会社として独立することで、ベンチャー企業のようにスピード感のある事業展開を目指す。
三つ目は不動産以外の事業展開だ。7月から人材紹介事業を開始。日本で働きたい外国人と、外国人を雇用したい会社のマッチングを行っていく。まずは介護や飲食会社にアプローチし、今後は不動産会社への就職あっせんも予定する。
「一事業部から会社になって、社員の士気は上がっている。自分たちが設立メンバーという責任感や帰属意識が向上する効果がすでに表れている」と乃万社長はコメントする。
今後は人材の強化も計画する。wagaya Japanではアメリカ、中国、台湾、ベトナム、フィリピン、インドネシア、イギリス、ウクライナの8カ国出身の社員を雇用(5月22日時点)。従業員24人中、約半数が外国人だ。新卒採用も始めており、インドネシア、ベトナム、フィリピンの東南アジア系を中心に、英語圏などから採用を予定する。
30年には日本エイジェントの売上高を50億円、そのうち外国人関連事業の構成比を20%に成長させることを目指す。
(野中)
(2025年8月11日7面に掲載)





