売買仲介をきっかけに賃貸住宅の管理を受託し、管理戸数を5000戸まで増やしたのが朝日リビング(東京都町田市)だ。かつて日本住宅公団や住宅供給公社(以下、公団・公社)が開発・供給してきた住宅の売買仲介に始まり、管理、買い取り再販へと事業を広げ、いまや年商は23億円に上る。新型コロナウイルス下では郊外展開によって業績を伸ばしながら、さらなる成長のため都心への進出を狙う。創業50周年を迎えた同社の事業戦略や今後の展開について田代雅司社長に聞いた。
売買機に管理受託、5000戸に拡大
コロナ下の2年で売上高は10%増加
―首都圏を中心に不動産事業で成長されてきたと聞きました。
現在は1都3県で12営業所を展開しています。会社全体の年商は2021年11月期で約23億円。内訳は中古住宅の買い取り再販が45%、売買仲介が30%、賃貸住宅の管理と仲介が15%、リフォームなどその他の事業が10%となっています。売り上げはコロナ下の2年間で10%ほど増えています。
―2月で設立50周年を迎えたとのことですが、創業時はどういった事業を行っていたのですか。
高度経済成長期の住宅不足を解消するために公団・公社が開発・供給していた公営住宅の売買仲介から事業をスタートしました。複雑な決まりが多くあり、一般的な不動産会社はあまり取り扱っていなかった点に創業者の先代社長が商機を見いだしました。現在は民間マンション、土地・一戸建て、事業用などさまざまな物件の取引を行っています。
―賃貸住宅事業はどのようにスタートしたのですか。
弊社で自宅として物件を購入された一般のサラリーマンの方から、住み替えや転勤をきっかけに物件を賃貸に出したいという依頼があり、賃貸管理の受託を始めました。当初は事務スタッフが片手間で対応していましたが、次第に管理戸数が増え、こなせなくなったため、1992年ごろに専門スタッフを配置するに至りました。現在の管理戸数は約5000戸です
―売買仲介に専念するという手もあったかと思いますが、賃貸管理に本格参入を決めた理由は。
賃貸管理ビジネスは急激な拡大は難しいですが、売り上げが底堅く、経営の安定化につながると考えたからです。また、管理を続けていれば、将来的に売買仲介へつながるチャンスもあります。例えば、退去立ち会いの際にオーナーから「この物件を今売ったら、いくらになりますか」と聞かれるケースは多いです。さらに、修繕やリフォーム、保険などの付帯サービスからも収入を得ることができる点が魅力です。
―賃貸事業の人員体制を教えてください。
賃貸に関する業務を行っている10営業所に3人ずつ専任の社員を配置しています。営業エリアも拡大しており、これまでは東京都の町田市や多摩地区、神奈川県の湘南エリア、埼玉県の大宮エリア、千葉県の柏エリアなど郊外が中心でしたが、6月には東京都新宿区の拠点にも賃貸のスタッフを配置し、都心での賃貸仲介に参入する予定です。
新宿営業センターの内観
都心に拠点を新設家主業にも注力ですね。
―コロナ下で業績が好調なようですね
はい、2021年以降、業績が伸びています。東京都の町田や埼玉県の大宮、千葉県の柏、神奈川県の横浜・湘南エリアといった郊外に拠点を展開していたこともあって、コロナ下で急増した郊外移住のニーズをうまく取り込むことができました。コロナの感染が拡大した第1回目の緊急事態宣言が出た20年はさすがに落ち込みましたが、21年は20年と比べ営業利益ベースで3割増、コロナ前と比べても1割増となっています。ただ、「喉元過ぎれば熱さを忘れる」ということで、住宅ニーズはいずれ都心へ回帰するとみており、肥沃(ひよく)な都心市場へ挑戦していきたいと考えています。そのため、4月には東京都港区に新たな拠点を開設しました。
―現在力を入れている取り組みはありますか。
経営基盤を強化するために、安定した収入を得られる家主業に力を入れているところです。18年には多摩地区で全74戸のワンルーム賃貸マンションを、22年1月には湘南地区でワンルーム15戸に店舗2区画が併設された賃貸マンションを取得し、全2棟を運営しています。1年に1件のペースで物件を購入していく計画です。
―堅実な会社づくりを進めている御社ですが、課題はありますか。
地主や投資家ではなく、区分マンションのオーナーが多く、1人あたりから管理受託する戸数が少ないことが課題です。管理物件5000戸に対して、管理を受託しているオーナーは3000人。そのうち2500人が区分マンションのオーナーです。
―1オーナーからの管理受託が平均1.6戸だと営業効率が悪いですね。
営業部隊をつくって物件を多く所有する地主系オーナーの開拓を進めたいところですが、実現できていないのが現状です。
―今後はどのように事業を展開していく計画ですか。
新宿区や港区などの都心部でのビジネス強化です。現在、社内で最も売り上げが大きい買い取り再販事業の対象としても都心のマンションは魅力的。賃貸管理と家主業での賃料収入で経営基盤を固めつつ、郊外と都心でバランスよく収益を上げていくことで、安定した成長を目指します。まずは、25年に売上高28億円、管理戸数6000戸が目標です。
野球を通じたコミュニケーション
同社には創部30年以上の野球部がある。部員の年齢層は22~55歳と幅広く、未経験者も所属。事業所同士はエリアが離れており、普段の交流が少ない中、野球部の活動で社員の横のつながりが生まれている。コロナ下では自粛しているが、以前は月に2回ほど練習。東京不動産業健康保険組合の大会で3位となるなど実力も折り紙付きだ。「会社の誇りであるだけでなく、事業所や年齢が離れたスタッフ同士のコミュニケーションの場になっている」(田代社長)
年代や店舗を超えて交流
会社概要
社名:朝日リビング株式会社
住所:東京都町田市森野1丁目8-3 丸昌町田ビル3階
設立:1972年2月
資本金:1000万円
従業員数:120人
事業内容:不動産売買仲介および賃貸仲介および管理、中古住宅の買い取り再販、リフォーム・耐震事業、ビル・テナント事業
会社メモ
公団・公社の売買仲介から事業をスタートし、賃貸仲介および管理を展開。一時は建売住宅や分譲マンションなどの開発事業も手がけたが、現在は不動産売買・賃貸の仲介を中心に中古住宅の買い取り再販やリフォーム・耐震事業を行っている。2月には創立50周年を迎えた。
社長メモ
1963年生まれ。神奈川県小田原市出身。85年に大学の経済学部を卒業し、新卒で朝日リビングへ入社。89年から稲毛店(千葉市)の店長を務め、2000年に営業本部長に就き、営業全体の責任者となる。01年に社長に就任し、現在に至る。
(2022年4月18日9面に掲載)





