企業研究vol.163弁護士ドットコム 元榮太一郎 社長【トップインタビュー】

弁護士ドットコム

インタビュー|2022年07月04日

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弁護士ドットコム 東京都港区 元榮 太一郎 社長(46)

 累計契約送信件数が1000万件を突破した電子契約サービス「クラウドサイン」を提供する弁護士ドットコム(東京都港区)。同社の創業者の元榮太一郎氏が、6年間にわたる国政での活動を経て6月25日付けで代表取締役社長に復帰した。5月18日に施行された改正宅地建物取引業法による電子契約の全面解禁で、契約の脱ハンコ・ペーパーレス化に貢献してきた同社にも一層の追い風が吹いている。競合他社とのシェア争いがさらに加熱することも予想される中、これまでの歩みと現在の心境を元榮氏に聞いた。

法改正追い風 導入社数130万超

創業前から温めていたクラウドサインの構想

―幅広い事業展開をしていますが、起業のきっかけは。

 大学2年生のときに買ったばかりの中古車で事故を起こしてしまって、そのときに示談交渉でお世話になった弁護士の仕事を見て弁護士を志しました。起業を決意したのは大学卒業後に勤めた弁護士事務所でM&A(合併・買収)案件を扱ったことがきっかけです。弁護士をもっと身近な存在にしたいという考えは、事故を経験をした学生時代の頃からありました。

―創業した頃の状況はいかがでしたか。

 創業当時は司法制度の改革が進み全国にロースクール(法科大学院)が設置された頃でした。それに伴い弁護士の数が増えて、弁護士業界もインターネットの活用を中心としたマーケティングが重要な時代になり、われわれが提供する「みんなの法律相談」をはじめとしたサービスの追い風になりました。創業から15年以上がたち、弁護士業界に少しは変化を起こすことができたという自負はありますが、弁護士が十分に身近な存在になったかといえば、まだまだ道半ばだと思っています。今後はAIの技術などを活用して、さらに便利なサービスを目指していきます。

―2015年にサービスを開始したクラウドサインは主幹事業に成長しましたね。

 実は電子契約サービスの構想自体は創業前から温めてきたものです。弁護士事務所に勤めていた頃に非常に複雑な金融プロジェクトを任されました。そのときの資料のやりとりが本当に大変で、これを電子化できれば世の中全体が変わると思っていました。しかし、当時は弁護士として独立や起業したばかりだったので、一つの事業に経営資源を集中し、まずは上場して社会的信用力を高めることを第一の目標としていました。そこから上場後の成長曲線を描く中で、ようやく新規事業に取りかかるべき時期が訪れ、14年から今のクラウドサインにつながるプロジェクトを立ち上げました。

―御社が電子契約サービスを手がける意義を教えて下さい。

 契約というのは法務の重要な局面にあるものですから、リーガルテックカンパニーの元祖である私たちがこうしたサービスを手がけるのは当然の流れでした。2万1000人を超える登録弁護士の知見を反映できることも強みです。また、経済安全保障の観点からいっても、契約という企業や個人にとって極めてセンシティブな領域を日本国内の企業が担っていくことは非常に重要だと考えており、使命感に近いものを感じています。

宅建業法改正をさらなる追い風に

―5月の改正宅建業法の施行で、不動産取引の電子契約が全面解禁されました。

 利便性や生産性の向上のためにデジタル化がなされたことは非常にエポックメイキングな出来事だと捉えています。同時に、政府がしっかり制度を整備してくれたので、われわれも電子契約の普及のためにますます力を尽くしていかなければならないという心境です。法改正後は不動産業界からの問い合わせが3倍に増えました。賃貸業界においても重要事項説明書等への押印や紙による交付という全面解禁の最後の課題だった部分が電子化されたことで、これを業界全体の成長のきっかけにしようという機運を感じます。

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―既存の競合他社、新規の参入もある中において勝算は。

 現在までに130万社を超える企業に利用いただいており、幸いにも確かなポジションを築くことができています。電子契約サービスはネットワーク効果が比較的強い市場です。トップシェアの事業者がさらに伸びる構図にあります。契約というのは必ず相手方があるものですので、既存のユーザーから相手にもクラウドサインの導入を勧めていただけるような信頼感のあるサービスを届けていきたいです。

―参議院議員としての活躍を経て代表取締役社長に復帰しました。現在の心境は。

 日本には成長戦略が足りないといわれ続けている中、デジタル化がより重要になる時代において日本をけん引する企業をつくることが、今の自分にできることだろうという思いで帰ってきました。6年間の議員活動中には、民間にいた頃にはつながりのなかった業界や地域の人と接点を持ち、いろいろな声を聞くことができました。政界で得たものを今後の活動にも反映していきます。

―今後の目標はいかがですか。

 今後3年の間にクラウドサイン事業を100億円事業に成長させたいと考えています。一方で、作成、レビュー、締結、管理という契約のライフサイクルがある中で、この全般をわれわれの新しい領域と捉え、契約に関わることすべてをサポートするような形でクラウドサインを強化、進化させていきます。

ハーブティー飲んで安眠

 忙しい毎日を元気に過ごす秘訣として睡眠の質を重視している元榮社長。さまざまな心がけがある中で、睡眠前にフレッシュハーブティーを飲む習慣もその一つだ。ハーブティーを飲むことによって副交感神経が高まり、深い眠りが期待できるという。初めはティーバッグで入れていたが、レストランでフレッシュハーブティーを体験し、その味と香りにほれた。常に4種類くらいのハーブティーを自宅に常備しているという。

ハーブティーセット

元榮社長愛用のハーブティーセット

 

会社概要

社名:弁護士ドットコム
住所:東京都港区六本木四丁目1番4号 黒崎ビル
設立:2005年7月4日
資本金:4億3900万円
事業内容:弁護士/法律ポータルサイトの運営、電子契約サービスの運営ほか

会社メモ

2005年の創業後、法律相談ポータルサイト「弁護士ドットコム」や弁護士検索や無料法律相談サービス「みんなの法律相談」などのサービスを提供。15年に日本初のウェブ完結型クラウド契約サービス「クラウドサイン」を開始。税理士・税務ポータルサイト「税理士ドットコム」の運営のほか、「弁護士ドットコムニュース」を通じてメディア運営も行う。

社長メモ

1975年12月14日生まれ。米国イリノイ州出身。慶應義塾大学法学部を卒業後、99年に旧司法試験に合格。弁護士としてアンダーソン・毛利・友常法律事務所で企業法務を担当した後、2005年に独立し、Authense(オーセンス)法律事務所を設立。同年に弁護士ドットコムの前身となるオーセンスグループを設立する。16年の参院選に千葉県選挙区から自由民主党公認候補として出馬し当選。1期を務め、6月に代表取締役社長に復帰。

(2022年7月4日11面に掲載)

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