メモリーズ、家財整理 年1800件【注目企業インタビュー】

メモリーズ,くらしの友

インタビュー|2023年03月08日

メモリーズ  大阪府堺市 横尾将臣社長(53)

 メモリーズ(大阪府堺市)は冠婚葬祭事業を手がけるくらしの友(東京都大田区)のグループ会社で、遺品整理事業と特殊清掃を専門とする。年間1800件の家財整理を行い、そのうち賃貸住宅での依頼が6割を占める。創業以来ほぼ毎年事業を伸ばしており、2022年10月期の年商は5億円を突破した。横尾将臣社長に、同社の強みと今後の展望について聞いた。

賃貸住宅で需要増加

遺品整理が主力 売り上げ5億円超

―御社の事業内容と売り上げを教えてください。

 柱となっている事業は家財整理です。家財整理では居室内にある家財や不用品を分別しながら搬出し処分します。依頼者が不要と判断した物品のうち、価値のあるものは買い取り、それ以外は徹底的に分別し可能な限りリサイクルに出します。遺品整理や生前整理、空き家整理は家財整理の一種です。直近の21年11月から22年10月の売り上げは、5億900万円でした。そのうち家財整理は3億9000万円で全体の76%に上り、家財整理で出た不用品の売り上げは1億1600万円です。創業して15期目ですが19年11月~20年10月期を除いて、売り上げは右肩上がりを続けています。

―主力の家財整理事業について詳しく教えてください。

 家財整理事業は売り上げの8割弱を占めています。その内訳は、主に賃貸管理会社やオーナーから依頼を受ける遺品整理が55%と半数を超えています。30%は自力で居室内の片付けが困難な人の住戸を対象に、整理や清掃をし住環境のリセットを行う福祉整理。15%は空き家整理です。空き家の判断基準は1年以上住人がいないことです。家財整理1件あたりの費用は22年度では平均で22万~23万円です。

―家財整理の中でも遺品整理が主力なのですね。

 はい。特に特殊清掃が必要な遺品整理は賃貸住宅が圧倒的に多いです。死後10日~1カ月経過し、臭いで異変に気付いた近隣住民からの通報で発見されるパターンが多く見られます。単身で生活する高齢者が増加しており、遺品整理のニーズは高まる一方だと考えています。

―空き家整理も増えてきていると聞きました。

 空き家整理事業は11年ごろから開始し、受注件数は年1~2%ずつ増えています。人口が減少傾向であることや空き家の利活用が広がっているため、増加傾向は継続すると考えています。依頼は自社ホームページ経由が全体の35%ほどを占めており、依頼数を増やすために「空き家整理」でのインターネット検索に対して、上位に出るように対策を行っています。また、空き家整理事業開始時に近畿圏の居住支援協議会への周知を強化しました。15年からは兵庫県神戸市で家財整理の民間事業者として指定事業者になり、行政への相談者から選ばれる土俵に上がりました。

作業を行う横尾社長

作業を行う横尾社長

依頼者に寄り添う 社員教育を重視

―反響からの受注率が高いと聞いています。

 受注率は平均で8~9割ほどです。受注率を高める取り組みとして、顧客に寄り添う対応を徹底しています。スタッフには「顧客の気持ちまでケアすることがサービス」だと伝えています。まず電話や対面は最初の10秒で顧客の様子に合わせた対応をするよう指導します。具体的には悲しみの底にいる相手には落ち着いたトーンで話しかけるなど、顧客の気持ちに寄り添い、コミュニケーションを取るように心がけています。また、ネットでの口コミも重視しています。口コミ数を増やすため、22年からは作業が完了したときに顧客へ「グーグル」の口コミが書き込めるQRコードを渡しています。

―見積もりのときにも依頼者への声かけを大切にしているとか。

 見積もりは通常、室内を一周し10分ほどで終わりますが、当社では依頼者との距離感を縮めるまでが見積もりだと考えています。それは、遺品整理は住戸内の片付けだけでなく依頼者の気持ちまでくみ取ることが大切だという考えからです。依頼者とのコミュニケーションを密にすることで、結果として高い受注率につながっていると考えています。

―これまでどのように売り上げを伸ばしてきましたか。

 08年に独立してすぐの頃、幸運なことに遺品整理のドラマの監修の機会を得ました。その後もテレビの遺品整理特集で取り上げられるなどメディアに出る機会に恵まれ、初年度から2800万円を売り上げることができました。そこから、現場で感じたニーズをサービスに取り入れながら成長を続けています。

―今後どのような事業を強化していきますか。

 孤独死に伴う特殊清掃の依頼が多いため、消臭の技術を高めた新商材を世に出したいと考えています。不十分な消臭は依頼者が個人だと損害賠償にまで発展することがあります。他社が一度行った清掃が十分ではなく、その後始末を当社が任されることも多いです。当社の持つ経験を財産化し、消臭技術をハウスクリーニングの事業者にも広めていきます。また孤独死を未然に防ぐためにも、入居者の生前から室内の整理整頓ができる枠組みをつくり、生前整理を推進していきたいです。そのために入居者の近くにいる管理会社との連携をつくることも重要です。

―生前整理とはどういった内容ですか。

 孤独死の現場を見ると、大半がごみ屋敷です。高齢者の場合は、認知症の発症が孤独死につながることが多いと感じています。認知症になると、ごみの分別が困難となり居室内がごみであふれるなどの住環境の乱れが現れます。生前整理をし、必要な行政サービスにつなげることで、孤独死予防の一端を担うことができると考えています。また、高齢者の事故は転倒・転落が多いため、セカンドライフに向けて家の中をいったんリセットするのは、必要だと考えています。

―今後どのような会社づくりを目指しますか。

 遺品整理業界は社員の独立が多く社員数が10人以下の企業が半数以上を占める中、当社は30人の社員が在籍しています。当社では独立するスタッが少なく「顧客に寄り添う」という会社の方針に共感するスタッフが多く集まっていることが強みだと思います。今後も社員を応援する気持ちを持ち、トラブルが起きたときも報告しやすい関係を続けていきます。23年10月期は売り上げ6億円を目指します。

(2023年3月6日11面に掲載)

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