賃貸経営リスクに備える 見守りサービス・残置物撤去 照明の点灯状況で安否確認

東京ガス,ヤマト運輸,東急セキュリティ,R(アール)65,リーガルスムーズ,リリーフ,SBI(エスビーアイ)日本少額短期保険,SBI常口セーフティ少額短期保険

商品|2022年12月13日

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 国の推定では、日本の総世帯数は2023年をピークに減少に転じる。その一方で、今後も増え続けるのが単身世帯だ。特に高齢者の単身世帯の割合が高まる中、賃貸住宅における受け入れ体制を整備することが急務となる。オーナーや管理会社が安心して貸すことができる住まい環境の構築に寄与するサービスを紹介していく。

見守り・残置物撤去サービスの一覧

ドアにセンサー 導入ペース1.3倍

 都市ガス最大手の東京ガス(東京都港区)が21年4月より提供する見守りサービス「まもROOM(ルーム)」は、ドアにセンサーを設置して開閉の有無を検知する仕組みだ。

 トイレなど日常的に使うドアに両面テープでセンサーを設置。コンセントに差し込む通信機器を通じて開閉の有無を検知する。24時間または48時間ドアの開閉がないことを検知すると、東京ガスのコールセンターから入居者や緊急連絡先に安否確認の電話がかかる。

東京ガス まもROOMの写真

ドアに設置するセンサーが開閉の有無を検知する(東京ガス)

 管理会社経由の受注や既存顧客からのリピート案件も増加傾向にある。21年度と比較し、22年度は月平均1.3倍のペースで契約戸数が増加している。展開エリアは東京都、埼玉県、千葉県、神奈川県の1都3県となる。

 直近に導入が決まった神奈川県の賃貸住宅の事例は、生活保護受給者かつ高齢者の入居が9割を占める物件だった。ドアの開閉を検知するという方法が入居者の生活スタイルと合致し、導入に至った。トイレのドアは開けっ放しの入居者もいることから、センサーの設置場所は玄関ドアとした。今後は日程を調整のうえ、空室以外の部屋40戸以上に導入する予定だ。

 リビング戦略部くらしサービス事業推進グループの脇千佳代氏は「1戸から安価で導入が可能なため、入居者の入れ替えや既存サービスからの切り替えのタイミングで相談を受けるケースが多い」と語る。

電球交換するだけ ヤマト社員が訪問

 運送業を行うヤマト運輸(東京都中央区)は、電球の点灯状況で見守りを行う「クロネコ見守りサービスハローライト訪問プラン」を21年2月から提供している。

 LED電球内にSIMを内蔵しており、既存の電球と交換するだけで利用できる。前日の午前9時から当日の午前8時59分まで点灯・消灯の動きがない場合は、登録した通知先に自動でメールが送られる。通知先である入居者の家族らが設置先を訪問できない際に同社のスタッフが訪問し様子を報告する。通知先からの依頼があれば警察や消防への連絡も行う。

ヤマト運輸のLED電球の写真

LED電球とSIMが一体となっている(ヤマト運輸)

 全国に約3700の事業所があり、宅配事業で培った経営資源を生かしサービスの提供を始めた。

 利用料金は月額1078円(税込み)。初期費用や訪問費用は不要で、電球の設置もヤマト運輸が行う。22年12月1日時点で一般住宅や賃貸住宅の約3000人の契約者がいる。18の自治体で導入されており、自治体の費用負担での利用が拡大している。

警備員が駆け付け24時間365日対応

 東急グループでビルや商業施設の警備を手がける東急セキュリティ(東京都世田谷区)は9月より、入居者見守りセキュリティーサービス「SAFE-1(セーフワン)」を展開している。リビングなどに設置した端末本体内蔵の人感センサーに24時間反応がない場合や、非常ボタンが押された際に同社の警備員が自宅まで駆け付けるサービスだ。

東急セキュリティ SAFE-1の端末画像

SAFE-1の端末画像(東急セキュリティ)

 同サービスは賃貸住宅や一般住宅向けに販売されている。利用者は契約の際、同社に部屋の鍵を預ける。非常時には自動的に警備員が駆け付け、宅内へ入室し安否確認や救急車の手配を行う。24時間365日駆け付けが可能だ。

 端末には通信機能があり、単3形乾電池4本、もしくはコンセントにつなぐことで駆動するため特別な工事は不要。人感センサーが侵入者を感知するため、不在時にはホームセキュリティーとしても使用できる。

 自動駆け付けサービスの提供エリアは、東京都と神奈川県にまたがる東急電鉄沿線21市区に限定している。この地域には半径2.5kmに一つ警備員の待機所があり、有事の際には迅速な駆け付けを行う。

 自動駆け付けサービス込みのプランは、導入費用5500円、月額料金3278円(いずれも税込み)で利用できる。1回の駆け付けごとに別途5500円(税込み)がかかる。緊急連絡先への通知のみのプランも用意している。

電気から異常察知 孤独死の保険付き

 高齢者の入居支援を行うR(アール)65(東京都杉並区)は、見守りサービスと孤独死による損害を補償する保険をセットで展開している。サービス名は「あんしん見守りパック」。月額980円(税別)で提供する。

 見守りは、電気メーターを使用して行う。30分ごとに電気の使用状況を自動で計測し、入居者の生活リズムを分析。分析した生活リズムと違う動きを15時間以上感知した際に、入居者に電話の自動音声で安否確認を行う。電話に出ない場合は、設定されている管理会社やオーナー、入居者の家族にメールで通知する。

 孤独死の発生後は、最大で36カ月分の家賃を補償する。原状回復工事や遺品整理などの費用も最大で100万円まで補償が可能だ。

 高齢者の居住支援を展開する中、高齢者にも安心して物件を貸し出せるように同サービスを販売した。19年5月にサービスを開始し、22年11月末時点で契約者は約350人だ。23年4月までに契約者500人を目指し、管理会社やオーナーへの提案を進めていく。

残置物撤去を代行 7万件の契約実績

 孤独死や無断退去発生時の対応サービス「スムービングサービス」を提供するのがリーガルスムーズ(東京都中央区)だ。入居者の代わりに退去や残置物の撤去などの手続きを代行する。

 家賃債務保証会社や不動産会社などの代理店を通じ入居者と直接契約を結ぶ。国籍や年齢などの属性を問わずに加入できる点が大きな特徴。22年19月末時点で、33社の販売代理店、累計7万3000件の契約実績がある。五つの宅地建物取引業協会とも提携し、サービスの普及に努めている。

 直近2~3年の傾向として、無断退去に関わる対応件数の割合が多い。川上明社長は「以前は孤独死と無断退去の発生割合は半々程度だったが、新型コロナウイルスの影響からか、家賃を払えなくなり無断退去するケースが増えているように感じる」と語る。11月15日時点で、22年に起きた無断退去の割合は約6割、孤独死が約4割となる。

 10月に大阪市の物件で70代の男性が孤独死し、特殊清掃が必要になった事例では、発見から1カ月程度で入居募集を開始することができた。管理会社の担当者は「残置物撤去から原状回復工事までの流れが明確で、オーナーへの説明もしやすかった。オーナーの費用負担がなくて済んだことにも大変驚いた」と実際の効果を語る。

法人500社と提携 21店舗で広域対応

 「おかたづけサービス」として家財の整理事業を手がけるリリーフ(兵庫県西宮市)は、3月時点で年間8000件の家財整理に関する問い合わせを受け、約4500件を受注している。17年と比較して問い合わせ件数は4倍に増えた。介護が必要な人の家族や本人からの生前整理の依頼が大半を占める。賃貸住宅においては、入居者が亡くなった際の相続人からの家財撤去依頼や、孤独死発生時のオーナーや管理会社からの遺品整理の相談に対応している。

リリーフの訪問のイメージ写真

訪問見積もりは無料(リリーフ)

 フランチャイズチェーン(FC)方式で営業店舗を展開しており、現在の加盟店は19店舗。直営2店舗を含めた21拠点で、関東、東海、近畿、南東北などのエリアをカバーしている。家財整理の平均受注金額は東京都内の2LDK・70㎡で20万円前後。地方ではワンルーム10万円、2LDK15万円程度で引き受けることが多い。

 依頼者から直接問い合わせを受けるほか、葬儀や介護関連の事業者などおよそ500社と提携して家財整理の案件紹介を受けている。その中でも提携先として多いのが不動産会社で、全提携社数の6割に上る。住み替えや相続をきっかけとした物件売却時の家財整理を手がける。居室内のクリーニングや特殊清掃の案件も引き受ける。

 グループ会社で一般廃棄物収集運搬業を展開するリリーフは、回収した不用品を不法投棄する同業者がある中でコンプライアンスを徹底し、依頼者からの信頼獲得につなげている。マーケティング課の鈴木太郎課長は「依頼者の気持ちと物を大事にしている」と話す。

万が一の孤独死にも対応

賃貸住宅向け家財保険

 家財保険などを販売するSBI(エスビーアイ)日本少額短期保険(以下、SBI日本少短:大阪市)は、21年2月よりSBI常口セーフティ少額短期保険(北海道札幌市)との共同商品となる賃貸住宅向けの保険「みんなの部屋保険G4(ジーフォー)」を提供している。

 孤独死や自然死に対する補償を付帯している点が大きな特徴となる。孤独死に起因する残置物撤去や原状回復費用を最大100万円まで補償する。入居者に法定相続人がいなかった場合には、貸主による請求も可能だ。加えて、借家人賠償責任保険の補償額を2000万円に設定しており、SBI日本少短が単独で取り扱う「みんなの部屋保険G3(スリー)」の倍額となっている。

 SBI日本少短では、12年から孤独死に対応した家財保険を開発、提供してきた。22年11月時点のみんなの部屋保険G4の契約件数は累計で30万件弱ほどになる。孤独死に関する保険金請求件数は月平均約50件で、21年比で2割ほど増加している。

(2022年12月19日8・9面に掲載)

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