賃貸仲介における契約業務の実態を探る本企画。電子契約の全面解禁が目前となる中、オンライン化は推進企業と様子見の企業に分かれているようだ。現状について2社を取材した。
大丸不動産、重説、対面がほぼ100%
契約業務の電子化は準備段階
年間約560件の賃貸仲介を行う大丸不動産(島根県出雲市)では、契約関連業務の電子化にはほぼ対応しておらず、顧客のニーズに合わせて導入していく予定だ。
同社は島根県出雲市エリアで仲介店舗を1店舗構える。全従業員はパートも含め9人。賃貸仲介事業の年間売上高は約3000万円。内訳は仲介手数料が70%、家財保険の代理店手数料が15%、家賃債務保証代理店手数料が8%、広告費(AD)が7%だ。
入居申し込みは店頭にて紙に記入してもらうか、エクセルやPDF形式の申込書をメールで送付、返送してもらうのが半々ほどだという。
家賃債務保証会社は日本セーフティー(東京都港区)の代理店となっており、申し込み同様に店頭対応とメールが約半々。記入してもらった申込書はファクスで送っている。店頭で申し込みをした顧客には電話で、メールで申し込みをした顧客にはメールで審査結果を知らせている。
同社では約8割で賃貸借契約と重要事項説明(重説)を同日に行っている。ほぼ対面での実施だ。また、この際に約半数で鍵の引き渡しを行う。
重説は営業スタッフ6人のうち3人が行っている。賃貸借契約の直前のタイミングで行うのがほとんどだ。
IT重説に関しては2022年の繁忙期から始めたこともあり、実施はまだ3回ほどだ。スマートフォンアプリの「Facetime(フェイスタイム)」を活用した。
家財保険会社はSBI(エスビーアイ)日本少額短期保険(大阪市)を利用している。店頭で記入してもらった申込書を同社に郵送している。
鍵の受け渡しは、ほとんどが手渡しだ。申し込みから契約までは1週間〜1カ月ほど。
同社の勝部達夫社長は「まだ自社ではあまり契約関連業務の電子化は進んでいないが、周辺の不動産事業者とともに電子化を進めなければならない。それまでに情報収集を行い、実現に向けて計画している」とコメントした。
目白商事、電子申し込みは6割超
審査関連もオンライン推進
年間約370件の賃貸仲介を行う目白商事(東京都新宿区)では、現在電子申し込みの実施率は6割ほどにまで高まっている。その一方で内見や重説は対面実施を重視し、契約までに最低一度は顧客と直接会う機会をつくっている。
同社の商圏は東京都新宿区や豊島区周辺。仲介店舗は2店舗を展開している。全従業員16人のうち、賃貸仲介の営業スタッフは10人だ。
賃貸仲介事業の年間売上高は約9000万円。その内訳は仲介手数料が85%、ADが10%、保険・家賃債務保証代理店手数料が5%。