レオパレス21(以下、レオパレス:東京都中野区)の施工不備問題で、一部のオーナーから不安の声が上がる。マスターリース契約が終了する物件に対し、修繕計画を明確にしないまま、他社へ管理を引き継がせるケースが発生している。改修工事の時期について同社からの明確な説明がなく、運営の継続が可能であるか否かの判断に悩むオーナーもいる。
レオパレスは2018年の施工不備問題発覚以降、同社が建築した建築基準法にのっとっていないアパートの改修工事を進めてきた。施工不備が発覚している物件の棟数は、各地域の特定行政庁が確認している件数で、22年12月末時点で1万5779棟。改修済み物件は、レオパレスの申告で23年3月末時点で5万7288戸。なお棟数は非公開としているため、国土交通省が確認している全体の不備棟数における工事完了進捗率は不明。
同社は国土交通省から施工不備を指摘された物件を自社の調査に基づき「明らかな不備」「軽微な不備」に分類。改修工事の優先順位を独自の検査において定め、修繕を進める。明らかな不備のある物件については、24年12月末をめどに改修を完了すると公表している。
問題になっているのは軽微な不備として分類された物件1万6775棟だ。戸数は非公開。オーナーは管理解約前にレオパレスに工事の対応を迫るが、状況は前に進まない。軽微な不備のある物件で、改修工事が完了しているのは23年3月末時点で2万697戸となっている。
「入居者を募集できない」、家主から不満の声
あるオーナーは、「6月にマスターリース契約が終了するが、施工不備の改修工事の日程を確認しても、回答を得られない。レオパレスは居住に問題がないというが、万が一施工不備が理由で入居者が亡くなることがあれば、オーナーの責任問題となる。改修工事が終わらなければ、新たな入居者の募集も怖くてできない」と説明する。
国交省は「マスターリース契約が終了しても、レオパレスの責任で全ての物件の改修工事を実施するように指導してきている」と説明する。
だが、オーナーがレオパレスから受け取ったマスターリース契約終了に関わる合意書面である「承継合意書」の中には、「防耐火性の検証を行い、居住に支障がない」「賃貸事業を継続する場合は大規模修繕またはリフォーム工事をお薦めする」との文言が並ぶ。
国交省からの指摘にもかかわらず、レオパレスが独自に防耐火性の検査を行い、それを基に居住に問題がないとの説明を行っていることについて、4月25日の国会審議の場で、共産党の田村智子議員より国交省への質問がなされた。
それに対し、斉藤鉄夫国土交通大臣は、「国土交通大臣が指定した性能評価機関において、大臣認可を受けた方法により試験を行い、これに合格したうえで大臣認定を取得する必要がある。従って、これによらない調査結果があったとしても、改修工事をしなくていいということにはならない」と答弁した。
レオパレス物件のオーナーらで結成するLPオーナー会(愛知県名古屋市)の前田和彦代表は「マスターリース契約の終了と改修工事の完了はセットであるべき」と話した。
レオパレスは本件について「当社の管理を外れていても、24年末までに当社の責任で明らかな不備の解消を目指す。軽微な不備の改修はそれ以降の検討事項としている。独自の防耐火検査結果を基に、居住に一定の安全性が確保できていると説明したオーナーはいるが、改修工事を行わないとの説明を行った事実はない」とコメントした。
(2023年5月15日号掲載予定)