コインランドリーの店舗数は現在も増加し続けている。その高い利回りから、不動産オーナーにとっても、有力な土地活用の選択肢だといえるだろう。今回は、コインランドリーの店舗をフランチャイズチェーン(FC)展開する事業者や、実際に経営しているオーナーに話を聞き、コインランドリー事業の現在の状況と今後の可能性を探った。
衛生意識が高まり店舗数は増加中
厚生労働省の「コインオペレーションクリーニング営業施設に関する調査(施設数)」によると、国内でのコインランドリーの店舗数は、1996年に約1万200店、2013年には約1万6000店まで増加した。
コインランドリー店舗をFC展開するスピンドル(東京都千代田区)の荻野真悟営業開発部部長は、「17年からの5年もコインランドリーは増え続けており、22年には2万4000店前後になったといわれる」と話す。
スピンドルが開発した小型ランドリー「ミニマル・ランドリーBOX(ボックス)」。狭いスペースでも設置可能
コインランドリーは営業許可の必要がなく、機器と仕組みを整えれば始められるため、不動産オーナーにとって土地活用や投資を行う際の有力な選択肢となる。荻野部長はコインランドリーの店舗数が増えている理由として、参入のハードルの低さに加え、感染症の拡大などから衛生意識が高まっていることを挙げた。
運営面では、無人経営が可能なところが大きな利点。機器のメンテナンスや無人店舗の管理、クレームへの1次対応は事業者に委託できるため、オーナーの負担が少ない。
一般的なコインランドリーの店舗面積は10~30坪。器機の数については洗濯機と洗濯乾燥機が5~10台、乾燥機は5~10台で、平均で合計15台前後を設置する。また、初期投資額は2000万~3000万円で、建物から造る場合は3000万~5000万円程度が必要だ。
共働き世帯利用増 需要エリアも変化
近年は、コインランドリーの客層も変化している。コインランドリーの運営を行うグッドサービス(東京都立川市)の吉野智彦社長は「かつては1人暮らしの男性が主な利用者だったが、近年は洗濯に時間を取ることができない共働き世帯の利用が急増している」と話す。
グッドサービスが運営する東京都新宿区の店舗。5坪の土地に所狭しと機器が並ぶ
「新たに需要が高まっているエリアとして、都心部が挙げられる。特に高層のタワーマンションは規則で洗濯物をベランダに干すことができない場合が多く、周辺のコインランドリーの利用率が上がる」(吉野社長)
一方で店舗数の増加により、ただ出店するだけでは成果を上げられない状況になっている。
フトン巻きのジロー(栃木県宇都宮市)の森下洋次郎代表取締役は、「これからコインランドリーを出店する際は、幹線道路沿いやショッピングモールの近くなどの好立地の確保に加え、店の存在の周知、マーケティングの徹底や他店との差別化といった工夫が必要だ」と話した。
運営オーナー事例
地域へヒアリング 要望に応え運用開始
山田勇貴オーナー(神奈川県横浜市)は、2019年に横浜市旭区の約33坪の物件でコインランドリーの運営を開始した。「周辺地域の住民に欲しい施設についてヒアリングを重ね、希望が多かった中からコインランドリーを選択した」(山田オーナー)
地域の住民は共働きのファミリー層が多く、近くにコインランドリーがなかったことが決め手になった。
山田オーナーは自身で経営の情報を収集。事業者とも個別に交渉を重ねて全15台の機器の費用を1200万円に抑えた。リフォーム費用を含めた初期投資額は2000万円程度とのこと。
その後も照明をLEDに変えたり、天候によって冷暖房をコントロールしたりするなど工夫してコストを低減し、14%程度の利回りを確保している。
山田勇貴オーナー(36)
神奈川県横浜市
地方の郊外に出店 空室から転用決断
竹下憲治オーナー(鹿児島県霧島市)は、郊外にあるマンションの1階部分の約35坪を使ってコインランドリーを経営している。この物件は1年ほど空室が続いたため、コインランドリーへの転用を決断。初期投資額1800万円で事業者に準備から運営まで委託し、営業を始めた。
コインランドリー経営のメリットとして、竹下オーナーは「まず、空室を気にしなくて済むこと。それに加えて、1階にコインランドリーがあることで利便性が上がり、マンションの2階以上の居宅部分に空室が出ても、入居者が決まりやすくなった」と話す。
現在の利回りは10%ほどで、課題は、土地柄もありコインランドリー自体の周知が進んでいないこと。竹下オーナーは、店舗外にのぼりを増やすなどしてコインランドリーの宣伝に力を入れていくという。
竹下憲治オーナー(52)
鹿児島県霧島市
(2023年5月22日9面に掲載)




