福祉事業を行うアニスピホールディングス(東京都千代田区)は障がい者向けグループホームのフランチャイズチェーン(FC)事業で売り上げを伸長してきた。ペット共生型物件で差別化し、SNS集客に強みを持つ。藤田英明会長に成長の背景と、今後の展開について聞いた。
ペット共生型、FC含め1524拠点
利回りは15〜20%
アニスピホールディングスは、障がい者向けグループホームの運営・FC事業を主軸とする。2023年3月期の売り上げは21億9000万円。そのうち8割は障がい者向けグループホームの賃貸やFC事業が占める。残り2割は障がい者向けのデイサービスや、ペットの訪問介護事業などによるものだ。
16年に創業。当時は動物看護師によるペットの訪問介護事業から始めた。現在の主業となるグループホーム事業を開始したのは、18年からだ。障がい者の人数と空き家が増加していることから、グループホームの運営により、マッチングできるのではないかと考えたためだった。
17年の売り上げは5000万〜6000万円程度だったが、グループホーム事業を始めたことにより、売り上げを飛躍的に伸ばした。
グループホーム自体は戸建ての空き家を購入、もしくは借り上げし、改装を施したうえで入居者を募集する。改装は居室に鍵を付け、自動火災報知器を設置する程度で同社や加盟事業者が改装費を負担する。1物件あたりの入居者数は4〜6人だ。15〜75歳と幅広い年齢層が住む。受け入れるのは軽度から中度の障がい者で、身体障がい、精神障がいは問わない。
利用料金は家賃、光熱費、食費込みで7万〜10万円。そのほか、国からの訓練等給付金が入居者1人あたり月額20万〜25万円支給される。
表面利回りは給付金を含め15〜25%だ。どの施設でもオープン4〜5カ月で入居率は約80%になるという。入居者同士で相性が合わない場合にも備え、最大50日間の体験入居も可能だ。
同社では、19年から同事業をFC展開している。加盟事業者で事業収益を分配するレベニューシェア方式を採用。建設会社や、不動産会社、飲食店やスポーツジムのフランチャイジーなど、23年11月16日時点で約450法人が加盟する。
アニスピホールディングスは加盟事業者に対して、グループホームを開設し、運営コンサルティングや、訓練等給付金の請求の仕方をレクチャーする。また、加盟事業者が希望する場合は入居者を送客している。
11月16日時点で直営と加盟事業者含む約1500拠点を全国で展開する。うち、約110拠点が直営だ。
SNS集客強み
グループホーム事業が大きく成長した要因はSNSを活用した加盟事業者、入居者の獲得だ。
加盟事業者については、実際に加盟する中小企業の経営者が30代後半以上の年齢層に多いことに着目し、同年代の多くが利用している「フェイスブック」に広告を出稿した。同じ内容の広告が何度も出てもSNSの背景と同じで反響はないと推測。「飽きさせない」「見慣れさせない」をテーマにクリエーティブ(広告のコンテンツ)を8万通りランダムで表示させるようにしている。
その結果、クリエーティブを始めた19年に50社、20年以降は年間約200社が同広告経由で加盟した。出稿費用には年間7億円をかけている。それとは別にクリエーティブの制作費用は年間約1億円かけ、1万5000〜2万本を制作。反響率が高いものを継続的に使っている。
SNSで展開しているクリエーティブの一部
現在ではフェイスブックのほかに「インスタグラム」と「LINE」にも広告を出稿する。
入居者の募集も同じくSNSを活用している。多くのグループホームでは相談支援事業所に営業に行き、入居者を紹介してもらうことが多いが、同社では「X(旧ツイッター)」「ユーチューブ」「TikTok(ティックトック)」をメインにフェイスブックとインスタグラムも利用。実際に8割ほどがSNS経由で獲得できているという。かかっている広告費は月20万円程度だ。
入居者を獲得できる要因として同社が展開するグループホームがペット共生型である点も大きい。動物保護団体と提携し、基本的に1施設あたり保護犬1匹、もしくは保護猫を2匹飼育している。入居者がペットを連れて入居することもでき、入居後に飼い始める場合もある。ペットと一緒に住める点が差別化のポイントとなっている。
6000拠点目指す
現在注力するのは、医療的ケアが必要な中重度の障がい者向けのグループホームの展開だ。11月1日に静岡県沼津市に1号物件をオープンし、12月以降も新潟市、さいたま市、千葉県四街道市など関東圏を中心にオープンを控える。
1棟あたり20人程度を受け入れ、看護師7人、福祉の仕事を行う職員15人が勤務する。入居者の利用料は月7万〜8万円程度だが、国からの補助金が1人あたり月110万円入り、補助金を含めた表面利回りは30%弱に上る。
「筋萎縮性側索硬化症(ALS)や筋ジストロフィー、パーキンソン病といった難病患者は全国に約50万人いる。一方で、面倒を見る親は高齢化が進み、子どもの介護ができなくなっている。私のいとこもALSの患者で体を動かすことができない。そうした人たちにグループホームの提供を始めようと考えた」と藤田会長は話す。
中重度の障がい者向けのグループホームは年間15〜20棟のペースで増やしていく計画だが、運営の難しさから直営のみで展開する。
「30年までにFC拠点も含めて、グループホーム6000拠点を目指している。24年からは3年計画で、ペット共生型グループホームの居室を1000室増やそうと考えている」(藤田会長)
アニスピホールディングス
東京都千代田区
藤田英明 会長(48)
(野中)
(2023年12月11日13面に掲載)





