最高裁判決、公社の家賃改定に一石

最高裁判所,神奈川県住宅供給公社

事件|2024年07月01日

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6月24日に最高裁で判決が下った

「借地借家法の適用あるべき」

 地方住宅供給公社(以下、公社)の賃貸住宅における家賃改定について、借地借家法に基づくべきだと判断した最高裁判決が6月24日に下った。今後の公社物件の運営に影響を与えていく可能性がある。

入居者が減額請求

 最高裁は、神奈川県住宅供給公社(以下、KJK:神奈川県横浜市)に対し賃料減額請求を行っていた入居者の訴えを認め、東京高裁への差し戻しを命じた。

 同訴訟は、KJKが運営する賃貸住宅に入居する8人を原告とし、KJKに対して、適正賃料を超えた分と主張する約2081万円と遅延損害金の支払いを求めたものだ。

 KJKは、2004年4月から18年4月までの期間に、おおむね3年ごとに原告らに対し、各物件の家賃を改定する旨を通知した。各原告によって増額された金額は異なるが、家賃は当初3万9530~5万6350円だったのが、18年4月の時点では6万1950~8万6910円と、14年間で2万~3万円ほど増額された。

 物件は、神奈川県内に立ち、築年数は現時点では50年を超えている。原告の代理人である馬車道法律事務所(同)の石畑晶彦弁護士と小笠原憲介弁護士によると、原告らが入居する物件を不動産鑑定に出したところ相場家賃と比較し2万~3万円ほど高く、実際の賃料との乖離(かいり)があったという。20年3月に調停を申し立てたが不調に終わり、同年7月、横浜地裁に提訴した。

一審・二審は敗訴

 争点は大きく分けて①KJKの改定賃料が妥当であるかどうか ②KJKが賃料の改定を行うにあたって地方住宅供給公社法および施行規則(以下、公社法・規則)が、借地借家法とは異なる特別規定に該当するか否か、の2点だ。

 一審では、原告の請求を棄却。①については、KJKの家賃額は、公社法・公社法規則などの法令の規定を根拠として行ったものとされている。一方、原告が主張する「適正賃料」は公社法規則などの法令の規定の根拠に基づかない。そのため、原告が主張する適正賃料と比較し、KJKが不当な利得を得たとは言えないとの判断だった。

 ②については、公社法に基づくKJKの物件は、一般の賃貸借契約のように家賃を賃貸人と賃借人間の合意によって定めることができないため、民法および借地借家法の規定が適用されるとは言えないとし原告の主張を退けた。二審でも一審の判決を正当とし、原告の控訴を棄却。それを受け、原告は最高裁に上告した。

 最高裁判決は、一審、二審の判決を覆した。

 判決文では「賃借人との間に設定される公社住宅の使用関係は、私法上の賃貸借関係であり、法令の特別の定めがない限り、借地借家法の適用があるというべきである」とした。一審、二審での公社法は借地借家法に該当しない特別法であるとした判断を覆し、公社の賃貸においても家賃を増額する際には借地借家法32条に基づくべきだとした。

 石畑弁護士は「最高裁の判決は思い切った内容だったと感じている。住宅供給公社は全国的に公社法・規則を根拠に家賃を増減させる運用をしている。今回の案件のみへの言及ではなく、神奈川県に限らず、ほかの公社も含めて運用自体がおかしいということに明確に言及した」と、判決の意義を語る。

 KJKは全国賃貸住宅新聞の取材に対して「最高裁の判決については真摯(しんし)に受け止める。現在、最高裁判決文の内容を読み込んでいるさなかであり、今後の対応については顧問弁護士と相談を行う予定である」とコメントした。

他案件へ波及も

 不動産関連の法律に詳しいことぶき法律事務所(東京都新宿区)の塚本智康弁護士は、今回の最高裁の判決について、「公社法・規則は、借地借家法に基づく賃料増額請求とは別に、賃料の一方的な値上げを公社側に認めたものと解釈することはできないという主旨」と語る。公社法の目的や公社規則16条2項の文言からすると、公社規則16条2項は借地借家法32条1項の適用を排除する規定と解釈できないため、公社による賃料の値上げにおいても借地借家法が適用されるという法的な判断だという。

 実務上の影響としては、公社側が家賃改定時に借主の承諾を得る運用に変える可能性がある。加えて注目したいのが、差し戻された訴訟の行方だ。「神奈川県住宅供給公社の改定家賃に適正家賃と乖離があり返還請求が認められると、ほかの公社物件での賃料返還請求に波及する可能性がある」(塚本弁護士)

(2024年7月8日1面に掲載)

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