大分・別府市を商圏に3300戸を管理するタカラ不動産(大分市)は、管理受託の強化に取り組んでいる。IT活用で不動産業務の効率化を進めると同時に、企業理念である「クオリティ・オブ・ライフ 〜生活の質の向上〜」の下、創出した、入居者向けサービスの提供に注力している。「自社の取り組みを紹介するDMを家主に発送し、当社の強みや企業理念への共感が管理受託につながっている」と語る矢野宏彰社長に取材した。
DMで受託営業強化
兄弟2人で経営 ITで業務効率化
賃貸管理・仲介事業を行うタカラ不動産は、ITによる業務効率化を図りつつ、入居者向けサービスの向上に努めている。本社から半径20km程度を商圏とし、大分市と別府市で3300戸を管理する。賃貸仲介は1店舗で、2023年の年間成約数は約700件だ。売り上げ構成比は賃貸管理が40%、賃貸・売買を含む仲介事業が20%を占める。残りは、リノベーションの企画や、マンスリーマンションの運営など。
兄弟2人で社長を務め、経営を担う。兄の矢野宏一社長は、家主対応や売買仲介など、不動産実務でかじを取る。弟の矢野宏彰社長はIT企業に勤めた経験を生かし、管理システムの構築や、IT活用による業務効率化などをけん引する。
ITを活用した、効率性と生産性の高さが同社の強みだ。特に仲介事業で成果が現れている。反響数や来店・内見率を増やすため、22年5月から空室物件を掲載するポータルサイトを2社から5社に増やした。同時に、複数のポータルに一括で物件情報を入力、更新できるコンバーターシステムと、反響対策や追客を行う顧客管理ツールを導入。手間を増やさずに、募集物件の露出を増やし、22年の反響数は21年比で110%となった。
オンライン上で内見の予約ができるシステムも導入済みだ。仲介店舗の営業時間にかかわらず、内見希望者は24時間いつでもインターネットで予約が可能。23年の年間成約数は、21年に比べ3割ほど増えている。同社の管理物件の自社付け率は7〜8割のため、仲介件数の伸長は、管理物件の入居率に直結する。「大分市の入居率が平均で82.9%と言われるなか、当社は92%を維持している」と宏彰社長は語る。
賃貸借契約書の電子化にも早期に取り組み、実施率は約8割。オーナーには、管理受託契約の際に、代理契約の委任をもらっているため、同社が貸主の代理となり電子契約を進めることができる。加えて、契約書の作成や経理事務など100項目以上の事務作業にRPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)を導入。削減できた作業時間は年間で、退去精算が150時間、入金取込が26時間、契約書作成が180時間、その他システム間の転記など雑務が300時間以上になるという。