LPガス販売の柴田産業(福岡市)は、自社ブランドの賃貸マンション「アクシオン」の開発・販売によって、LPガス供給数を伸長している。不動産事業を強化することで、LPガス事業の顧客である不動産会社やオーナーとの取引機会を増やし関係性を深めたい考えだ。柴田靖典社長は「今後は、管理会社と協力し、リノベーション事業の提案を進める」と語る。
LPガスの供給増狙う
24年は4棟が完成
福岡市で約8000世帯にLPガスを供給する柴田産業は、不動産事業に注力している。2023年9月期の売上高32億円のうち、不動産事業は82%を占めた。不動産事業のうち8割が開発した賃貸マンションの販売で、残りは25棟約400戸ある自社所有物件の家賃収入などだ。
開発したマンションには、給湯器を含め、自社で供給するLPガスを設置している。アクシオンの開発は、ガス供給数を増やすために始めた。1棟目の完成は13年4月で、24年7月末までに累計17棟を開発してきた。
これまで年に2、3棟のペースだったが、24年と25年は4棟が完成予定。建築費の高騰が著しいため、仕入れた土地に前倒しで着工を進めている。
同社のLPガスの新規供給数は、年間で約200世帯。その2割程度がマンション開発によるものだ。さらに、定期的にマンション開発をすることで、LPガス事業の取引先でもある建築会社や不動産会社、不動産投資家と取り引きの機会が増え、関係性の深化につながっているという。
柴田社長は、「LPガス事業だけでは、取引先との接点が少ない。不動産開発事業によって、取引先との接点が増え、信頼関係が構築できる。その信頼関係がLPガスの新規契約や、解約防止に寄与している」と語る。
高級仕様の物件
福岡市内で開発しているアクシオンシリーズは、高級仕様で1棟30戸程度のファミリー向け物件が多い。23年9月期の実績は、売却額が1棟あたり8億〜15億円で、表面利回りは4%前後。購入者は、地主、企業経営者や資産家などの資産管理会社、一般企業、REIT(リート)など幅広い。物件完成後の管理やリーシングは、地場不動産会社に任せている。
入居者に快適な環境でガスを使ってもらいたいという思いから、水回り設備にこだわっている。システムキッチンはダッチオーブンでの料理ができるグリル付きコンロを搭載。グリルで炊飯やノンフライ料理をすることが可能で、賃貸物件では珍しい設備だ。天板に天然水晶が主成分の人工大理石フィオレストーンを使用したシステムキッチンを採用している物件もある。
25年3月に完成予定の「アクシオン天神プレミアム」は、これまでにない高額賃料帯の賃貸物件として開発を進めている。最上階住戸の専有面積は160㎡超えで、月額家賃100万円以上での募集を計画。
同物件の隣接地では、初となるホテル建設を控える。運営は委託し、当面は自社保有する予定だ。「建設費の高騰が続いている状況下で、類似物件がなく家賃相場の影響を受けにくい企画のマンション開発に加え、住宅以外の不動産開発の可能性を探っていく必要がある」(柴田社長)
リノベ事業に着手
今後は、賃貸管理会社と協力し、不動産事業の領域を広げていく。22年に設立した不動産事業部は、現在5人体制だ。まずは、リノベ事業において、「リクシオン」の呼称でブランド展開すべく、23年11月に商標登録をした。すでに築年数が10年以上たった自社所有物件で、10戸ほどリノベ施工の実績がある。25年中には、既存顧客が所有する賃貸物件での施工に着手する計画。管理会社と協力しながら、LPガス事業で取引がある家主にリノベを提案していく。さらに相続対策や、売買仲介などにも注力するという。
「管理会社と協力しながら、不動産に関するあらゆるサービスを提供することで、頼りになる、選ばれるガス会社を目指す。オーナーや不動産会社、そして入居者にとって価値がある優れた賃貸マンションの提供を続け、その結果としてLPガス供給数が拡大すると考えている」(柴田社長)
25年9月期には、同社の売上高は50億円に到達する見込み。
(平田)
(2024年9月2日20面に掲載)