賃借人の義務と権利を把握し、リスク回避
毎年4月の新年度を迎える時期は、業界イベントを通じ、アパートオーナーと懇談する機会が増える。
家主にとっては保険料や人件費の上昇による収益確保が難しいことに加え、家賃統制法の導入など法知識も問われる1年となっている。
法知識も 問われる家主
2020年1月からカリフォルニア州全土で始まった家賃統制法に対して、多くの個人オーナーたちは現状を静観している。年率で5.0%プラスCPI(インフレ率)の加算を基準とする家賃統制が施行される前年の19年3月1日付で10%の賃料引き上げを行うなど弁護士のアドバイスを受けた事例もあるが、逆にそれ以後に家賃引き上げをしたことで本年度の家賃が減額となった事例も聞かれ、賃貸市場での混乱ぶりがうかがわれる。
また家主からの〝立ち退き通知〟に関しても、賃貸ユニットの改装では配管や電気などで許認可の取得が前提条件となることから家主の費用負担が増える。
一方で慢性的賃貸物件の不足から、安定した賃貸需要が続くとの見方が家主からは聞かれる。とりわけ賃借人層を形成する若いミレニアル世代に加えヒスパニック系移民層の拡大も予想され、逆に需要の拡大が期待される。市場では新築賃貸物件の供給が減少傾向にある。とりわけ中間所得層向けのアパート不足が顕著で、収益性が高い高額所得層向け物件に受注をシフトするデベロッパーの姿勢がある。
保険業界では自然災害による補償申請の増加から賃貸物件への保険業務の撤退や、コロナ肺炎症関連の訴訟リスクから急激な保険会社の業績悪化も懸念される。こうした中、中小のアパートオーナーでは収益確保を目指し敷地内に賃貸棟(ADU)を建築する動きも出ている。
現状ではこれに対応する所轄の役所のシステム化が整っておらず本格的稼働には今しばらく時間がかかりそうだ。
ロサンゼルス市内の新築アパート物件