コロナ禍の影響は?エリアルポ~北海道編~

札幌オーナーズ, 野村不動産函館, 生活プロデュースリーシング, 山地不動産企画

その他|2021年10月20日

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 総人口522万8732人(2021年1月時点)、世帯数279万5571世帯(同)の北海道。人口は減少傾向だが、世帯数は維持傾向だ。都市によって大きく地域性は異なるが、新型コロナウイルス下の影響はどうだろうか。全4都市の管理・仲介会社とオーナーに話を聞いた。

札幌駅前は家賃アップでも需要増

≪札幌市ひとくちメモ≫
 過疎化が進む北海道の街も多い中、人口を維持する経済の中心地、札幌市。人口は197万5476人(21年9月時点)で、世帯数は97万4717世帯(同)。関東圏に本社を構える企業の支社・支店が多く立ち、賃貸市場においては定期的な法人契約が見込めるエリアだ。

札幌オーナーズ、駅徒歩5分物件の家賃増 8000円上げても満室

 札幌市内は、歓楽街で知られる「すすきの」に店を構える飲食店や、ホテルはコロナ禍で打撃を受けたようだ。これに伴いホテルの建設計画が滞るなど、札幌市の不動産売買マーケットにおけるホテル用地や商業施設の需要が低迷している。

すすきのの写真

札幌市の歓楽街「すすきの」

 賃貸住宅への影響はどうだろう。管理戸数3953戸(21年3月時点)の札幌オーナーズ(北海道札幌市)では、マンスリー物件の利用者属性に変化が起きている。

 同社の管理エリアは、札幌市の白石区をメーンに市内全域。管理物件の入居者属性は個人が8割、法人が2割。個人のうち社会人が8割を占める。管理物件の平均家賃は単身向け1LDKで約4万5000円。ファミリー向け2LDKで約6万5000円。

 同社は管理物件のうち22戸をマンスリーマンションとして貸し出している。道内に住むテレワーカーが仕事部屋として利用するケースや、コロナ下で帰国が困難になった海外在住の人の一時滞在利用が増えてきている。

 また、駅近物件のニーズの高まりを感じているという。営業部の大西裕司部長は「駅から徒歩5分以内の物件は家賃を上げても決まる傾向にある。相場より7000~8000円高く設定した新築も竣工後3カ月以内で満室になった事例もある」と語る。

 例に挙がった物件は全30戸のファミリー向け物件。間取りは、2LDKや3LDKで家賃は8万~10万円と市内の相場より高めだ。入居者属性は一般の社会人や大手法人、自営業の人。駅近需要の高まりの理由については分析中だという。

 コロナ下における在宅時間の増加で「いい環境に住みたい」という部屋探し顧客の声も上がっている。夏が短く涼しい気候の北海道ではエアコンが備え付けの設備ではなかったが、近年需要が増加。大西部長は「エアコンを導入した部屋は家賃3000~4000円アップで入居が決まった。今後は、エアコンをはじめ、入居者アンケートを実施し設備ニーズの変化に対応し差別化を図っていきたい」と話す。

 

≪函館市ひとくちメモ≫
 観光の街として栄える函館市は、人口24万8856人(21年9月時点)、世帯数14万931世帯(同)。産業の中心となるホテルや旅館業に携わる人は、企業の寮や社宅に入居することが多く、一般賃貸への入居者属性は地元の中小企業に勤める社会人が多いという。

野村不動産函館、感染者少なく影響小 人口流出を問題視

 コロナ感染者が少なく、大きな影響を受けていない地域もある。

 函館市で3543戸(21年3月時点)を管理する野村不動産函館(北海道函館市)の入居者属性は、生活保護受給者が3~4割。そのほかは地元企業に勤める30~40代の単身者が占める。法人は2割ほどだ。管理物件の多くは築20~30年。新築の1LDKが6万円からであるのに対し、同社は3万円台後半~5万円未満と低価格帯の物件が多い。

 賃貸事業部の久保真心執行役員は「函館市は、緊急事態宣言も21年夏以降に初めて発令された程度。管理物件に関わる範囲の人流制限に伴う大きな影響を感じていない」と話す。

 一部法人の仲介時期が、例年3月末くらいだったのが21年4、5月にずれ込んだという。家賃の変動は起きていない。地域性として、1LDKや2LDKを借りられる6万~7万円の金額で戸建て住宅のローンが支払えることから、持ち家文化が根付いている。車社会で2台以上の駐車場確保も土地を持てる戸建てのほうが利便性が高く、賃貸住宅への需要は「安く住む」ことにあるのだという。

 久保執行役員は「人口が流出しており高齢化が進んでいる。ウッドショックの影響もあり新築も建ちにくい。築古物件の間で差別化を図る必要が出てきている。宣伝広告費を抑えたSNS集客を検討していく」と語る。

 

≪旭川市ひとくちメモ≫
 人口32万589人(21年10月時点)の旭川市は、道内では札幌市に次ぐ2番目の人口だが、世帯数は17万8055世帯(同)と人口とともに減少傾向にある。エリアの特性として、富良野市などの観光地にアクセスが良く、観光の際の宿泊拠点としての利用が多いという。そのためホテルや飲食業が集まっているエリアとなる。

生活プロデュースリーシング、学生の1人暮らし3割減コロナ不況で自宅通学か

 年間の賃貸仲介2550件の生活プロデュースリーシング(北海道旭川市)では、21年1~3月の繁忙期において、学生の仲介件数が20年対比で3割減だったという。堀籠康弘社長は「コロナ下の不景気で、独立せず自宅から通う学生が増えたのでは」と推測する。

 旭川市内に5店舗を構える同社の顧客の属性は、社会人9割、学生1割。社会人のうち単身8割、ファミリー2割。法人仲介は2割ほどだ。

JR「旭川」駅の写真

JR「旭川」駅

 この2割にあたる法人について、21年9月は20年並みに回復傾向にあるが、20年12月ごろに旭川市内の病院でクラスターが発生したことが全国的に報道されたことを受けてか、21年繁忙期の1~3月の法人の移動は20年比10%減だったという。

 コロナ下の部屋探しでは非対面仲介の需要の高まりを感じている。メール反響のうち、物件案内まで非対面で行った件数は全体の1割だが、年々顧客側のオンライン化への違和感が減ってきている印象があるという。

 堀籠社長は「来店が減っていることを受け、メール反響を獲得するための対応チームも21年12月に新設稼働を予定している。反響来店率を高めていきたい」と語る。

 家賃変動については、新築に関してはなし。築年数がたつと、入居希望者からの家賃減額交渉の金額の幅が大きくなるため、下げないと決まらない状態になりつつある。現在は1000~3000円の減額交渉が多いという。

生活プロデュースリーシング 堀籠康弘社長の写真

生活プロデュースリーシング
北海道旭川市
堀籠康弘社長(50)

 

 

≪登別市ひとくちメモ≫
 人口4万6287人(21年9月時点)、世帯数2万4490世帯(同)の登別市は、北海道の中でも札幌市に次いで家賃相場が高く、新築の1LDKで6万円ほど。北海道全体で見たときに同間取りの家賃相場は5万円未満だという。

山地不動産企画、新築供給が増加 家賃3000円低下

 新築において登別市内で家賃変動が起きていると話すのは管理戸数2702戸(21年3月時点)の山地不動産企画(北海道登別市)だ。賃貸営業部の安藤亮一マネージャーは「2000~3000円の値下げ傾向にある。多数の物件を安い賃料設定で建てる家主が出てきたことで、値下げした価格で採算が取れるような部屋づくりが主流となってきた」と話す。

 同社の管理エリアは登別市と室蘭市。入居者属性は個人が7割、法人が3割。個人のうち社会人が8割で学生が2割となる。コロナ下においては、この3割にあたる法人の動きが低迷している。

 法人の動きは、例年2~3月、9~10月だが、21年の同月における問い合わせ件数は20年比の5割減だ。室蘭市の法人顧客の属性として、日本製鉄(東京都千代田区)室蘭製鉄所関係者や、山地不動産企画の管理エリア内に立つ大規模病院の関係者となる。10月の緊急事態宣言解除に伴い活発化するかどうか先が読めない状況だという。

 個人や法人にかかわらず、部屋探しの流入経路はインターネットが9割を占める。

 安藤マネージャーは「反響来店率は20~30%。コロナ下でより定着したネット集客に今後も注力していく方針。成約率を高めるために、ポータルサイトからの流入や反響に対し、会社の『LINE』アカウントに誘導し、その後のやり取りを素早く対応できるよう工夫している」と話す。

 

テレワーカーが実家へ引っ越し入居率2.8%減

 札幌市に全5棟108戸を所有する大広祐司オーナー(北海道札幌市)は「コロナ不況で退去理由の内容が変化した。勤務先の倒産や、家賃を浮かせるために実家へ帰る入居者が増えた。加えて家賃滞納を理由にした退去が2カ月に1件程度発生した。コロナ下以前は年に1、2件程度だった」と語る。21年9月時点での入居率は96.3%。20年同月比は99.1%と2.8%減少している。

 所有物件はすべて単身者向けで、入居者属性は個人8割、法人2割。個人のうち社会人が7割で学生が2割だ。

 退去理由の約2割を占めたという実家への引っ越しは、千歳市、小樽市、苫小牧市などの札幌市近郊に実家があり札幌市に通いやすい人だ。テレワークが普及してきたことも背景にあるという。

 18年ごろにJR「新札幌」駅などの再開発が決定してから駅前に商業施設の新設や大学キャンパスの移動などがあったことで賃貸需要が増加した。大広オーナーは「新札幌では駅前の物件においても、これまでは家賃減額の交渉があったが現在は少ない」と語る。

 同駅前に所有する1棟については、19年から満室を維持しており、退去が出ても従来より入居が決まるスピードが速いという。20年の同物件の家賃収入は19年比で1割増加した。

 所有物件のボリュームゾーンが築年数10~15年。今後は、コロナ下で発生が増えている家賃滞納について、差別化できる設備の導入で家賃を上げ、入居者属性の変化を狙うという。特にIoT家電の導入を検討していきたいとする。

大広祐司オーナーの写真

大広祐司オーナー(55)
北海道札幌市

 

 

(10月18日11面に掲載)

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