当記事は賃貸住宅フェア2024in東京で講演したセミナーを書き起こしたものです。
講演者
Knees bee税理士法人
東京都千代田区
渡邊浩滋代表
税理士・司法書士
徐々に減っていく手残りを可視化
私自身が大家をしている。私は傾いていた父の賃貸事業を引き継いで立て直したのだが、キャッシュフローを改善して手元にお金を残さないと賃貸事業は立ちゆかないと痛感した。
まず知っておかなければいけないのは、現時点のキャッシュフローを計算してプラスになったとしても、この先もずっと同じ状態が続くわけではない、ということだ。家賃収入を下げず、経費も増やさずにいたとしても、手残り金は年数の経過とともに減っていく。キャッシュフローが悪化する最大の原因は、手残り金が減っていくことを知らずにお金を貯めていないからだ。将来のキャッシュフローの状況を知るためにも、年数の経過によって手残り金がどうなるか計算した「事業計画表」をつくり、その変動を把握しておいてほしい。
無駄な経費を削減 青色申告で控除
具体的なキャッシュフローの改善策だが、まず収入を上げる。近隣の不動産会社に自ら営業をかけるなどして、空室を埋めていくことが重要になる。次に、無駄な経費を削減する。節税として経費を使う人がいるが、お金が出ていくことには変わりはない。経費を使っても自分の所得税、住民税の税率分しか減らず、せいぜい20~30%程度の減税にしかならない。最後に、お金が出ていかない節税対策。まずは青色申告をすること。白色申告で済ませる大家さんがいるが、青色申告にするだけで最低10万円の控除が得られるし、事業的規模で帳簿をつければ65万円の控除がある。
もう一つの改善策として、借入金の返済期間の見直しがある。金利が上がることを嫌って短い期間で組んでしまっている人が多いと思うが、事業としては先細っていくのだから、将来的にはマイナスになってしまう可能性がある。返済期間が長くてもキャッシュフローが楽になる場合があるので、金利よりも期間を気にしてほしい。返済期間が短い場合はリスケジュールして期間を延長したり、ほかの銀行で借り換えを行う対策があるが、銀行の格付けが落ちたり、余計な費用がかかってしまったりするデメリットがある。
このようなケースでは、賃貸経営を法人組織にする法人化を視野に入れてもらいたい。法人化のメリットは、まず節税。課税所得が800万円以上なら、所得税、住民税などの節税になる可能性があると説明している。さらに自分の自宅を経費化したり、家族への給料を経費扱いにしたりするなど、さまざまな節税が可能だ。さらに法人化すると個人と税率が変わるため、所得額によっては法人化したほうが税率の面で有利な場合がある。ただし、法人には均等割りや税理士報酬といった経費が必要になるほか、個人と法人のどちらが節税になるかは、土地や建物の所有状態によっても異なるため、ケースバイケースで判断しなければならない。これらの判断材料を基に税理士と相談し、リスケジュールや借り換えを組み合わせて法人化を検討してほしい。
(2024年12月23日18面に掲載)