AI(人工知能)も含めたテクノロジーにより、賃貸住宅ビジネスは変革の時期を迎えている。賃貸業界の経営者はどのように変化の波に向き合うべきなのか。東京大学連携研究機構不動産イノベーション研究センター(以下、CREI)の柳川範之センター長に話を聞いた。
テクノロジーで強みを伸ばせ
技術で人手不足に対処
―柳川教授がCREIのセンター長になられたそもそもの経緯は。
柳川 不動産の分野が学術的な意味でも非常に大事な研究分野なのではないかという機運が高まってきて、東大内で学際的な組織を立ち上げることになりました。私は、不動産の資産・価格面での影響やテクノロジーを使ったまちづくり、地域活性化の中での不動産の役割といった不動産関連の研究を多く行ってきたこともあり、いろいろなご協力をいただいて、CREIの組織ができ、結果としてセンター長になったような形です。
―AIが不動産業界や不動産ビジネスをどう変革し得るとお考えでしょうか。
柳川 AIは、これからいろいろな形やレベルで不動産や不動産業界に入ってくるのではないでしょうか。大きな話で言えば、まちづくりをどうするのかをAIの知見で行う試みもこれから出てくると思います。最近では、デジタル情報を組み合わせてさまざまなサービスを付加する「インテリジェントビル」があります。AIを活用することで、より高度で利便性の高い付加サービスが提供できるようなビルをつくっていく。賃貸住宅であれば、賃貸のマーケットで適切なマッチングをするところでもデジタル情報を基にAIのサービスが入ってくるでしょう。
―非常に幅が広いですね。
柳川 AIが入ってくることで、高度なバックオフィス部門の提供が可能になります。人手不足が深刻化する中で、AIが人の代わりをある程度担っていく可能性もあります。不動産業界でもAIによって人手不足を補うことはあるでしょう。さらに言えば、そこにロボティクスが入ってくると「鉄腕アトム」のようなロボットではないにしても、人が物理的に動かしている作業を、AI搭載のロボットが行うことで、人の労力をだいぶ省いてくれるようなことは出てくるはずです。
まちづくりへの応用、実験段階
―先ほども出てきましたが、AIを活用したまちづくりというのは興味深いです。CREIの成果報告でも、イノベーション機能を高めるためのまちづくりに関する研究の発表がありました。イノベーションを起こして成長する企業が集まるまちができれば、そこに雇用が生まれ、家賃や土地の価値が上がることもあるでしょう。まちづくりや物件開発においてAIを活用するときに必要な要素は何でしょうか。