【賃貸仲介会社の経営分析】京都大手と鹿児島中堅、電子化の進みに差
京都ライフ, あんしん保証, 小倉ホーム, イタンジ, 東建コーポレーション, アルファー, ジェイリース, e-Net(イーネット)少額短期保険
管理・仲介業|2022年02月04日
賃貸仲介業務における各社のオンライン実施比率を探る本企画。今回は、システムの導入を進め完全非対面契約を目指す企業や、導入するシステムを吟味している段階にある企業を取材。5月に解禁する賃貸借契約の完全オンライン化に向けた各社の動向が見えた。
京都ライフ、申し込みは自社付けで紙10割
業務効率狙い電子化に意欲
年間賃貸仲介件数約2万件の京都ライフ(京都市)は、現状では契約関連業務は紙ベースでの対応を基本としているが、電子化には意欲的で電子契約が全面解禁され次第、採用するシステムを吟味しながら導入を進めていきたいとしている。
売上高はグループ会社全体で約30億円。事業構成比は賃貸仲介が70%、賃貸管理が30%だ。賃貸仲介事業の売り上げは約21億円。賃貸仲介手数料、広告費、家財保険の代理店手数料が含まれる。仲介手数料は家賃の50%で、広告費は家賃1カ月分だ。賃貸仲介店舗は京都府内に29店舗を出店している。
従業員330人のうち、賃貸仲介に従事するのはパート・アルバイトを含め210人だ。個人客が賃貸仲介のメーン顧客で全体の8割を占め、一般媒介が7割、専任媒介が3割。1人あたりの年間賃貸仲介件数は170件、1人あたりの成約件数は、繁忙期で月20件、閑散期で月15件ほど。来店成約率は6割だ。
同社では入居申込書など書類の取り交わしは、管理物件のリーシング案件に関しては基本的に紙をベースに行っている。例外的に電子化を進めている他社の管理物件にリーシングを行った際は、管理会社に合わせて電子申込書などに対応している。仲介する物件のうち、他社管理物件の客付けが7割を占めるが、そのうち電子化を進めているのは3割程度だ。
現在、導入を精査している。平岡卓司取締役は「電子契約や電子申し込みシステムは、より多くの不動産会社が採用するシステムを使いたい。同じシステム同士で書類の取り交わしを行うほうが、別々のシステム同士よりもスムーズに連携できる」と話す。
契約書類の電子化は業務の効率化を期待している。具体的には契約書の郵送が不要になることによる契約期間の短縮。加えて書類管理の手間軽減だ。紙ベースの現在は取り交わした契約書を現物保存している。書類の電子化を進め、さまざまな書類を一つのシステム内で管理できるようになることで、書類管理を容易にしたい考えだ。
家賃債務保証会社はあんしん保証(東京都品川区)など3社を利用。審査結果はメールなどで当日か翌日には届く。
重要事項説明(以下、重説)は、対面が6~7割、IT重説が3~4割の比率だ。対面の場合は基本的に同日に賃貸借契約も行う。IT重説の場合、顧客の手元に郵送した契約書が届き次第IT重説を実施する。
顧客から契約書が返送されるまでに2~3日程度かかる。家財保険は全管協少額短期保険(同)を利用する。入居申し込みから契約までの所要期間は平均で2~3週間程度。鍵の受け渡しは入居日に店頭で行う。
小倉ホーム、オンライン契約システム導入
完全非対面対応目指す
年間の賃貸仲介件数350件の小倉ホーム(鹿児島県志布志市)は、業務効率化を図るため、イタンジ(東京都港区)が提供するオンライン契約のシステムを導入し、完全非対面で賃貸借契約ができる社内体制構築を進める。
売上高(非開示)のうち事業構成比は、建て売りが50%、賃貸管理が30%、賃貸仲介が20%を占める。東建コーポレーション(愛知県名古屋市)のフランチャイズチェーン「ホームメイト」に加盟し、志布志市と鹿児島県霧島市に1店舗ずつ仲介店舗を構える。従業員全8人のうち3人が賃貸仲介に従事する。
賃貸仲介の売り上げ(非開示)には、家賃1カ月分の仲介手数料と、保険などの代理手数料が含まれる。成約単価は平均6万円。
営業スタッフ1人あたりの年間の賃貸仲介件数は平均116件。契約のうち、専任媒介は60%、一般媒介は40%。
管理物件650戸の平均賃料は4万5000円ほど。築10年以上で、専有面積42~50㎡の物件が目立つ。新築は、5万~5万5000円と既存物件より5000円以上高い賃料で入居者募集をしている。
募集する管理物件の入居申し込みの実施比率は電子が7割、紙が3割となる。2020年に導入したイタンジの電子申し込みシステム「申込受付くん」を活用する。
家賃債務保証会社は、アルファー(鹿児島市)とジェイリース(大分市)を利用。2社と提携し、月々800円(税込み)で連帯保証人を付けずに入居できるオリジナルプランを設け、管理物件の9割で利用される。
重説の実施状況は、非対面が95%、対面が5%で、賃貸借契約と同日にIT重説を行う。22年1月下旬に導入したイタンジの電子契約システム「電子契約くん」で、5月の完全オンライン契約の解禁に向けて社内システムの整備を急ぐ。
家財保険は、e-Net(イーネット)少額短期保険(長野県佐久市)への加入を入居者に勧めている。申込受付くんのスマートフォンの画面で加入の是非を問い、加入となれば保険会社に顧客情報を送り、手続きが進む。スタッフにとっては家財保険の契約に関して、従来の申込時に必要な転記作業が省かれ業務効率につながる。
申し込みから契約までの所要期間は平均20日となる。鍵の受け渡しは店舗にて対面で行う。
霧島店の倉橋直樹店長は「2年ごとの更新もオンラインで手続きしている。契約業務を可能な限りオンライン化できるように整備する」と語る。
(2022年2月7日6面に掲載)