大きな転換期を迎える不動産業界において、業界のプレーヤーはどう未来を描き、挑戦を続けているのか。本連載は、イタンジ代表の永嶋が業界をリードする皆さんと、不動産の未来について考える対談企画です。第1回目は、ハウスコム(東京都港区)の田村穂社長に話を聞きました。
テクノロジー活用 AIで初期対応も
永嶋 御社は、かなり早い時期から不動産業務のDX(デジタルトランスフォーメーション)に向けて取り組んでいる印象です。 テクノロジーを重視しているのは田村社長の方針ですか。
田村 不動産業界以外が急速に変化していることに気づき、「不動産業界だけが変わらなくていいのだろうか」と危機感を覚えました。それがDXに注力するようになったきっかけです。
ハウスコム 田村穂社長
永嶋 現在の取り組みと成果はいかがでしょうか。
田村 会社として1店舗あたりの人員最適化を進めています。全国に240店舗以上を展開していますが、2~3人で運営している店舗もあり、これは業界トップクラスの少なさです。
加えて、従業員の業務終了時間を原則午後7時30分としており、少ない人員、短い時間でも質の高いサービスを提供できるよう、生産性を高めています。
永嶋 具体的な取り組みを教えていただけますか。
イタンジ 永嶋章弘社長
田村 まずはテクノロジーを活用しながら、店舗の営業人員でなくても代わりにできる業務を集約し、効率化しています。重要事項説明書(重説)などはオンラインでできるようになりましたし、契約書の電子書面化も進んでいます。
また、問い合わせがあったお客さまへの初期対応は自動追客システムで行い、興味の強いお客さまに対して優先的にアプローチする仕組みも導入しています。さらに、作業量の多い契約後のやりとりに対して、契約後のやりとりを担うスタッフを店舗に配置するなどの工夫をした結果、業務効率が格段に上がりました。
今後も不動産の業務においては、テクノロジーを活用して効率化していく流れは続いていくと思っています。永嶋さんはこの流れをどのように見ていらっしゃいますか。
永嶋 私も同意見です。特にAI(人工知能)に置き換わる部分が増えていくのではないでしょうか。
契約書の作成のほか、管理業務においても入居者対応なども、少しずつAIが担うようになるでしょう。賃貸、売買を問わず、初期対応はAIが主流になるかもしれません。
さらに、従業員のトレーニング分野においても、AIの活用が進むと予想しています。最近構想しているのは、賃貸仲介の営業担当者向けに、AIが仮想顧客となり、会話の練習とそのフィードバックを行うシステムが作れないだろうか、というものです。
入居者対応省人化 オーナー対応注力
田村 AIが就職面接時の言葉遣いや視線を評価してくれるツールはすでに存在しますね。不動産業界でそのようなシステムが実用化されるのはいつ頃になるでしょうか。
永嶋 5年以内、あるいはもっと早く実現するかもしれません。
一方で、オーナーへの対応はシステムやAIによる代替が難しい領域です。個々のケースで必要な対応が大きく異なるので、人の手が介在する必要があるでしょう。不動産業務は今後、入居者対応が省人化されていく一方で、オーナーへの対応に時間をかけていく方向にシフトしていくでしょう。御社でも行われているような、自主管理のオーナーを支援するための管理業務の拡充や支援ツールの開発は、時代のニーズに合致していると思います。
今後は、この領域にもAIの活用が進んでいくことが予想されます。
イタンジ
代表取締役社長執行役員CEO
永嶋章弘
筑波大学大学院システム情報工学研究科にて情報工学修士号を取得後、ニフティに入社。2014年、イタンジに入社し複数新規事業を立ち上げ、16年、メルカリにPdMとして転職。18年、イタンジに執行役員として再入社。23年11月、CEOに就任。
(2025年5月26日9面に掲載)






